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「経済・財政一体改革」集中改革期間(16~18年度)の改革項目をリストアップ

「経済・財政一体改革」集中改革期間(16~18年度)の改革項目をリストアップ

【経済・財政一体改革推進委員会】
「16年度予算が成否の鍵」―年末までに工程表とKP(I 評価指標)を設定

 「骨太方針2015」に盛り込まれた経済・財政再生計画(2016~2020年度)を推進するために経済財政諮問会議に専門調査会として付設された「経済・財政一体改革推進委員会」は8月10日に初会合を開き、今後の方針を協議した。
 推進委員会の会長には、安倍総理大臣の指名で、サントリーホールディングス(株)の新浪剛史社長が就任した。
 推進委員会の役割は、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の3本柱で進める経済・財政再生計画のフレームにそって、(1)主要歳出分野ごとにKPI(主要実績評価指標)を設定かつ改革工程を作成する、(2)歳出改革において、国、地方、民間が一体となって「公的サービスの産業化」「インセンティブ改革」「公共サービスのイノベーション」という3つの取り組みを促進するために予算編成過程からPDCAを回す仕組みを構築する、(3)改革工程表にもとづいて、毎年度、進捗管理・点検・評価を行なう、ことにある。
 経済・財政再生計画は18年度までの3年間を集中改革期間に位置づけ、改革を集中的に進めることにしている。
 そして、(3)の作業を行なうために、諮問会議としては初めて、骨太方針を着実に実施するための専門組織(WG)を設置した。
 専門WGは、社会保障、非社会保障、制度・地方行財政からなり、推進委員会の14人の委員がそれぞれ参加する。
 このうち、社会保障WGには最多の7人が所属しているが、医師として松田晋哉産業医科大学医学部教授が名を連ねたものの、福祉の専門家は不在で、他は企業人と経済系の学者で占められた。
 また、(1)~(3)を推し進める上でキーワードとなっているのが、いわゆる見える化である。KPIの設定もその1つであるが、とくに、(2)においては優良事例を全国展開する体制を構築する方針が決まっており、すでに、優良事例の横展開を進めるための国・地方と関係会議等からなるプラットフォームが甘利大臣のもとに設置されている。
 この日は、まず、本年末までに改革指針を具体化した工程表づくりとKPIを設定することを了承。続いて、「経済・財政一体改革」を16年度予算に確実に反映させるために、各府省が推進委員会の下で財政当局と密接な連携を保ちながら、府省ごとに前出の3改革を推し進めていくという方針を確認した。
 このため、各府省は、16年度予算要求における歳出改革への取り組みと改革効果の見込みを予算編成過程の中で明らかにすることが求められる。その最初のステップが16年度予算の概算要求であり、その内容は9月の推進委員会で精査される。
 議論に先立って、財務省は、集中改革期間に取り組まれるべき検討事項を列挙した「『経済・財政一体改革』検討の大枠(イメージ)」を示した(別掲)。
 「検討の大枠」は、医療・介護を主に改革項目を網羅したものだが、推進委員会は、これをベースに各省庁のヒアリングを行ない、必要なデータを確保するとともに追加すべき項目を新たに盛り込み、10月中旬をめどに諮問会議への中間的報告を経てさらに詰めの議論を行ない、16年度予算編成までに「経済・財政一体改革」の大枠を固めることで合意した。
 この日の議論で、経済学者からは「人口10万人当たりの病床数と1人当たりの医療費の相関係数は0.91と非常に高く、病床があるから医療費が高くなるという関係がいえる。入院だけに絞ると0.96という非常に高い相関になる。高齢化など人口構成の影響も指摘されているが、結局は病床数である。それをうまく適正化していく仕組みによって医療費の適正な配分は実現できる」との見解が示された。
 一方、新浪会長は「3年以内に都道府県別の1人当たりの医療費の差を半減する。また病床数、平均在院日数の地域差を是正する。うまくいっている事例が地方自治体に沢山あるので、横展開をいかにして実現していくかだ」と“決意”を表明した。
 こうした意見を受け、財務省主計局の幹部は「今回の経済・財政再生計画の成否は、その初年度となる2016年度予算編成にかかっている。様々な検討課題の項目ごとに、制度改正を含めた具体化を考え、その上で、法改正の予定などを含む実効性の高い改革工程表の作成やKPIの設定などについて議論を深めていただきたい」と檄を飛ばした。

「経済・財政一体改革」検討の大枠(イメージ) 社会保障の検討項目から

(1)医療・介護提供体制の適正化
①地域医療構想策定による、医療の「見える化」を踏まえた病床の機能分化・連携の推進(療養病床に係る地域差の是正)
②慢性期の医療・介護ニーズに対応するサービス提供体制に係る制度上の見直し
③地域医療構想との整合性確保や地域間偏在是正などを踏まえた医師・看護職員等の需給
④外来医療費の地域差を分析し、重複受診・重複投与・重複検査等を適正化しつつ、地域差を是正
⑤都道府県ごとに医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定する医療費適正化計画を策定。国が15年度中に標準的算定方式を示す。(都道府県別の医療費の差の半減を目指す)
⑥都道府県の行う病床再編や地域差是正の努力を支援するための取組
( i )地域医療介護総合確保基金の15年度からのメリハリある配分
( ii )医療費適正化計画の進捗状況等を踏まえた診療報酬特例の活用の検討
(iii)機能に応じた病床の点数・算定要件上の適切な評価、収益状況を踏まえた適切な評価など、16年度改定及び18年同時改定における対応
(2)インセンティブ改革
⑭保険者の医療費適正化に向けた取組に対するインセンティブ強化に係る制度設計
⑮ヘルスケアポイント付与や保険料への支援になる仕組み等個人に対するインセンティブの付与
⑯セルフメディケーションの推進 ⑰要介護認定率や1人当たり介護費の地域差を分析し、給付費適正化に向けた取組を一層促す観点からの、制度的な対応も含めた検討
(3)公的サービスの産業化
⑳民間事業者も活用した保険者によるデータヘルスの取組について、健康経営の取組との連携も図りつつ、好事例を強力に全国展開
㉑医療関係職種の活躍促進、民間事業者による地域包括ケアを支える生活関連サービスの供給促進等
㉓マイナンバー制度のインフラ等を活用した取組
(4)負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化
㉗公的保険給付の範囲や内容の適正化
( ii )費用対効果を16年度改定で試行的に導入した上で速やかに本格的な導入を目指す
(iii)生活習慣病治療薬等について費用面も含めた処方のあり方等の検討
(iv)市販類似薬に係る保険給付について見直しを検討
(5)薬価、調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革
㉙後発医薬品の価格算定ルールの見直しを検討
㉚特許の切れた先発医薬品の保険制度による評価の仕組みやあり方等の検討
㉜市場実勢価格を踏まえた薬価の適正化
㉝薬価改定のあり方について、その頻度を含め検討
㊲16年度改定において、調剤報酬について、服薬管理や在宅医療等への貢献度による評価や適正化
【KPI】
・後発医薬品の数量シェア
・医療・介護分野等における国や自治体、保険者、国民などの各主体の取組状況の定量的な評価に資する指標
・医療、介護に係る地域差の是正に関する指標(1人当たり医療費の差の半減、療養病床の病床数や平均在院日数等)