全日病ニュース

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病院におけるプライマリ・ケア医の役割をテーマに講演

病院におけるプライマリ・ケア医の役割をテーマに講演

【全日病の「経営セミナー」第9弾】
中小病院 専門医制度で一時的医師不足の可能性。「プライマリ・ケアの実践が勝機」

 全日本病院協会が開催する「2025年に生き残るための経営セミナー」の第9弾が、「病院の生き残りのためのプライマリ・ケア医の活用と育成」というテーマで、9月2日に本部会議室で開催された。
 冒頭挨拶で、西澤会長は「プライマリ・ケアは高齢化の下できわめて大切な領域となる。制度的にも総合診療の専門医が創設された。そうした中、なぜ病院にプライマリ・ケア医が必要なのか、病院で何を担うのか、プライマリ・ケア医は何を望んでいるのかということが本日の主題である」と、テーマについて解題した。
 「プライマリ・ケアが病院になぜ必要か」と題して基調講演を行なった丸山泉常任理事は、まず、新たな専門医制度について「多くが地域医療を想定した研修プログラムになっていない」と指摘、「とくに中小病院は一時的に医師の確保が難しくなる恐れがある」と懸念を示した。
 日本プライマリ・ケア連合学会の理事長を務める丸山常任理事(写真)は、今後増える患者像の特徴として多疾患、認知症、虚弱の3つがあると述べ、「こうした患者に対応するには、待つのではなく、外に出ていく医療への転換が必要になる」と言明。「これが総合診療医に求められていく」と強調した。
 さらに、「総合診療医がいるといないとで、患者からみて、シームレスな医療は大きな違いが生じる」とも述べ、病床の機能分化と在宅医療化が進行していく中、総合診療医の有無こそが患者本位の医療の質を支えていくとの認識を示した。
 その上で、「中小病院の勝機はプライマリ・ケアをどう病院のコアに取り込んで、そこにどうサブ・スペシャリティを配することができるかにある。それだけに、より多くの中小病院に総合診療医の研修施設になってほしい」と結んだ。
 続いて、赤穂市民病院内科部長の一瀬直日氏が登壇。同院でプライマリ・ケア医が担う日常診療の実態を紹介しつつ、その役割を論じた。
 一瀬氏は、同病院における家庭医療研修に後期研修医が定着かつ増加している実績を踏まえ、総合診療外来から、救急外来、附属診療所の外来、さらには禁煙、物忘れなど専門外来にいたるまで幅広く不在科をカバーしている現状を紹介。
 それぞれの科ですぐれて多疾患に対応しているプライマリ・ケア医を、①小児から高齢者・妊産婦まで診る包括性で内科専門医とは異なる、②入院管理にとどまらず地域の医療問題や健康増進にまで関わる点で病院総合医とは異なる、③家庭医療研修カリキュラムを修めて総合診療専門医資格を取得する点でへき地総合医や在宅ケア専門医とも異なると、その総合能力を対比的に説明した。
 最後に、亀田ファミリークリニック館山院長の岡田唯男氏が「プライマリ・ケア医は病院に何を望むか」と題して講演した。岡田氏は「プライマリ・ケアは家庭医療そして総合診療科とニア・イコールであるが、内科医とは異なる」とした上で、「プライマリ・ケアの提供に特化した専門分野であり、内科や小児科等と並列の関係にある」と説明。
 さらに、「プライマリ・ケアはジェネラリストとして、地域のニーズの大半に対応することが役割である」と説いた。