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「経済・財政再生アクション・プログラム」改革課題の議論に着手

「経済・財政再生アクション・プログラム」改革課題の議論に着手出

【介護保険部会】
来年通常国会に介護保険法改正案。年末までに改正事項をまとめる

▲2年2ヵ月ぶりに開かれた介護保険部会は三浦老健局長の挨拶で始まった

 社会保障審議会の介護保険部会が2月17日に2年2ヵ月ぶりに開かれた。
 介護保険部会は、前回(2013年12月20日)、社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえて成立した社会保障制度改革推進法や閣議決定の「社会保障・税一体改革の大綱」を推進するために制定された地域医療介護度総合確保法案に盛り込む介護保険法改正の骨子(医療と介護の計画上の整合性確保、地域支援事業の再編成、特養の機能重点化、一定以上所得者の自己負担引上げ、補足給付の見直し等)を意見としてまとめた。
 それらの改正事項は、一部を除き、14年6月以降順次施行されている。
 事務局(厚労省老健局総務課)は、改正介護保険法の施行や地域医療介護総合確保基金の実施さらには介護報酬改定など、介護保険部会が休会中の情勢の推移について説明。
 その中で、骨太方針2015とそれを踏まえた「経済・財政再生アクション・プログラム」(15年12月24日)に書き込まれた介護保険分野の改革課題を、工程表を含めて紹介した。
 さらに、アベノミクスの新・第三の矢に掲げられた「安心につながる社会保障」で打ち出された「介護離職者数をゼロに」「多様な介護基盤の整備」という課題にかかわる施策と予算(15年度補正・16年度予算)について説明。
 その上で、地域包括ケアシステムの推進と介護保険制度の持続可能性の確保を2大テーマとする引き続く検討課題があるとして、介護保険部会として議論すべき課題(「主な検討事項」=別掲)を示し、「今後月1~2回ほど部会を開催していくので、年末をめどに結論を得たい」(日原総務課長)として、来年通常国会への改正法提出に向けた議論を求めた。
 「主な検討事項」の1つに「慢性期の医療・介護ニーズに対応したサービスのあり方」があげられた。「療養病床の在り方等に関する検討会」が骨子案をまとめた「新たな施設類型」の具体的な検討を指しているが、事務局は、この日の部会には「新たな施設類型」の報告を控えた。医療部会を含む社会保障審議会として議論する方法を固めた上で、方向するものと思われる。
 「主な検討事項」には、また、「軽度者への支援のあり方」「利用者負担」「被保険者範囲」といった給付制限につながるテーマが取り上げられている。
 日原総務課長は、「このままいくと介護保険料は全国平均で2020年に6,771円、2025年には8,165円に上昇すると見込まれる」と述べ、「介護保険制度の持続可能性を確保するためには給付の重点化・効率化を検討することが必要となっている」との認識を示した。
 給付の重点化・効率化については、先の法改正で、要支援者に対する介護予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業へ移行させることや特養の入所者を原則要介護3以上に限る、あるいは一定以上の所得がある利用者の自己負担を2割へ引き上げるなどの“負担の公平化”を実現している。
 しかし、「骨太方針2015」は「軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討を行う」方針を掲げ、引き続く重点化・効率化を求めている。
 こうした給付範囲縮小の考え方に、委員からは、「介護予防給付の地域支援事業への移行が始まったばかりで、その検証もできていない中で、要支援ではなく、要介護1・2の給付の一部を外すというのはいかがなものか」「介護の社会化という旗を降ろすべきではない」など、不満の声があがった。
 これに対して、主に経団連の委員からは、「軽度者を対象とする生活援助サービスの地域支援事業への移行と福祉用具・住宅改修の民間移行、さらに、2割負担の対象の拡大」に前向きな意見が示された。ただし、各医療保険者が被保険者数に応じて負担している介護納付金を被保険者の所得水準に応じて計算する総報酬割の導入には「強く反対する」とした。
 一方、生産性向上・業務効率化等を論点にかかげた「介護人材の確保」に関しては、自治体の委員から、「生産性向上・業務効率化等によって人材がまかなえるというのはあり得ない」「2025年に必要な介護人材を確保できるという見通しはまったくない。このままでは本当に解決できない」などの疑問が示された。

「主な検討事項」

Ⅰ.地域包括ケアシステムの推進
1.地域の実情に応じたサービスの推進(保険者機能の強化等)
●保険者等による地域分析と対応
●ケアマネジメントのあり方
●サービス供給への関与のあり方
2.医療と介護の連携
●慢性期の医療・介護ニーズに対応したサービスのあり方
●在宅医療・介護の連携等の推進
3.地域支援事業・介護予防の推進
●地域支援事業の推進
●介護予防の推進
●認知症施策の推進
4.サービス内容の見直しや人材の確保
●ニーズに応じたサービス内容の見直し
●介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
Ⅱ.介護保険制度の持続可能性の確保
1.給付のあり方
●軽度者への支援のあり方
●福祉用具・住宅改修
2.負担のあり方
●利用者負担
●費用負担(総報酬割・調整交付金等)

全日病ニュース2016年3月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 第709回/2009年5月15日号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2009/090515.pdf

    2009年2月16日 ... が変わり出すと、「意識改革にはよいの ... 官に、自治体と医療機関に対する財政支援を
    含む対策強化を申し入れたが、各医療機関 ..... 受け入れを希望していた施設は看護. 師
    が55カ所で計145人。介護士は120カ. 所で301人と、看護師候補者に関して .... よって
    は卒後研修制度の問題が俎上に ... 2008年度報告書 レセプトと特定健診・保健指導各
    データの2次医療圏単位活用を求める .... 社会保障カード(仮称)及び電子私書 ..... 診療
    報酬改定結果検証部会「病院勤務医の負担軽減の実態調査結果」.

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