全日病ニュース

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「前年より診療情報開示請求件数が増加」とする施設割合が増加

【報告平成27年度個人情報保護に関するアンケート調査の結果】

「前年より診療情報開示請求件数が増加」とする施設割合が増加

自院の個人情報保護管理体制を今一度見直す機会としてほしい

 平成18年より毎年個人情報保護法認定保護団体としての活動の一環として実施している、会員施設における取組みについてのアンケート調査も今年で10年を迎えた。平成27年度は特に番号法、いわゆるマイナンバー法施行前年となる為、マイナンバー法に関する設問を設定した。
 今年も全会員施設を対象に8月配布、9月中旬まで実施し、11月に単純集計の報告がなされたので、例年通り傾向等について考察し、報告する。

【結果】

 平成27年度は会員病院2,445 病院に対して、回答施設数524病院(前年度716)、回収率は21.4%(前年29.7%)と残念ながら過去10年最低となった。10年連続して提出頂いた施設は39施設であった。
 昨年度同様配布方法は、①データ送信によるPDFファイル送信、②メール利用、③郵送、④FAXを併用した。

【全体、歴年傾向と今年の傾向の差についての考察】

 毎年基本事項として組織的対応内容を問う設問1~3であるが、例年とは全く違う傾向が出ている。例えば、2-(3)「整備した(ている)規定等の状況」では、歴年80%から90%程度の回答率であった保護規定や保護方針の整備率、利用者向け方針の抜粋掲示率等が50%から60%台の回答率となっている。
 他にも2-(4)「掲示物提示場所、2-(5)情報システム対策についての各設問でも軒並み前年比で7~20%程度の整備率の低下という同様の傾向が見られた。
 母数が違うとはいえ10年連続提出施設の回答はほぼ例年通りであることから、低い回収率となったことが基本対策事項回答率へ大きく影響したということなのか、解釈が難しいほどの変化が見られた。

 一方、設問4「院内研修」、5「外部研修」6「保険への加入状況」に関しては前年比で5%以上の傾向変化は見られなかった。保険加入の有無を聞いている6.(1)でも昨年に続き入施設数が25%を超え、増加傾向が続いている。

 他に気になる変化が見られたのは8-(4)「診療情報の開示請求件数の昨年との比較について」である。
 ①「増加している」は全体で初めて30%を超え(29.2%→33.8%)、10年連続提出施設でも昨年の23.1%が43.6%へ大幅に増加した。特に連続施設における変化は昨年と分母数が同じであることから、同じ病院群で大幅な増加が起きたという推測が成り立つ。
 同時に6-(3)「苦情の有無」、7-(1)「相談件数の有無」では8-(1)の開示請求の有無に変化が見られないことから、連続提出施設の診療機能や特性が影響した可能性もある。現時点では理由は全く不明であり、来年の結果を見て判断したいと思う。開示請求者があった場合に「誰が」請求者だったかについての設問8-(2)では大きな変化はなかった。

 今回新しく設定した9「. マイナンバー制とそれに伴う個人情報保護法の改正に関する設問」では、両法の改正認知度を聞いた9-(1)で①知っているは77.3%となり、施行直前としてまだ認知度は低めと思えた。(2)では改正の賛否を聞き、①賛成45.7%、②反対41,5%と評価が割れた。それぞれの理由を聞いた自由記載の③では賛成では利便性向上を、反対では年金情報漏えい事件の影響が大きく、漏えいリスクへの不安と実務上病院にはメリットがないからという意見が多かった。
 10.「当協会の認定個人情報保護団体としての研修活動、Q&A出版等の認知度」を聞く設問では、(1)研修会開催の認知について、①知っているは前年71.2%が51.4%に、実際に研修会に参加経験を聞いた(2)では前年33.4%が37.0%と微増、当会が認定個人情報保護団体であることの認知を聞いた(4)では①よく知っていると②だいたい知っているを合わせて39.7%、③聞いたことがあるが39.9%と前年より微減となった。一層の告知、活用していただく為の努力が必要と思われる結果となった。

【まとめ】

 毎年このアンケートを通じて個人情報保護法に関わる認識変化や各施設での管理体制整備経過を全体傾向として掴んできたが、今年は一部の設問では例年とは趣が違う変化が見られた。
 昨年も書いたが、個人情報保護団体として事務局が受ける相談件数も増加傾向にある。また個人情報保護管理者養成研修会も情報管理担当者や相談担当の社会福祉士やMSWの方の参加が増える傾向にある。
 この傾向からアンケート結果を眺めてみると、実務担当者が管理者から現場担当者に移行されつつあり、法施行後10年経ち、アンケートの回答者も現場に近い方々に変わってきているのではないかと推測している。
 個人情報保護法施行より10年を超え、スマートフォン利用者が40%を超え、SNS(ソーシャルネットワクサービス)利用者も増加し、更にはマイナンバー法案が施行される平成28年度にはまた個人情報保護をめぐる環境変化が顕在化するかもしれない。
 あらためて現場レベルで全日病のHP・Q&A本の活用、管理者養成研修会参加や本アンケート結果等を参考にしながら、自院の個人情報保護管理体制を今一度根本から見直す機会として欲しい。

全日病ニュース2016年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年5月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140501.pdf

    2014年6月7日 ... 「2014年度診療報酬改定の全体像」 大倉山記念病院事務長 西本 育夫. 質疑応答 ....
    医療機関は自院の経営方針を益々模索・検証していく必要がある. 田村厚労大臣「 ......
    診療情報開示請求のあった施設が70%を越える。26.4%で開示請求増加傾向. 個人
    情報保護 ... と歴年連続提出群の比較を主とせず、. 全体傾向と新 ...

  • [2] 第733回/2010年6月1日号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2010/100601.pdf

    降会員数は一貫して増加をたどり、盤石かつ過去最高の結集をもって、明年. 1月の50
    周年記念 ... DPCデータの分析にもとづく自院経営分. 析とベンチマーク .... 別の調査票
    は同省に開示しないとして. いる。 .... 5 手術情報. 6 診療情報. 2010年度の入力条件.
    内容を追加(老健施設への入所、独居であるか否か). 初回入院以外は必須. 初回入院
    .... 調査」「診療報酬請求に関する調査」「新. たな機能 ..... できたという歴史でした。
    そういう ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年6月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140601.pdf

    2014年4月4日 ... 社会保険診療報酬等の非課税を見. 直し、課税制度に改める」方針につい. て、四病協
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