全日病ニュース

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改定項目の留意点を説明、通知で確認すべきポイントも確認

改定項目の留意点を説明、通知で確認すべきポイントも確認

全日病経営セミナー「2016年度診療報酬改定」
猪口副会長「病院団体が要望してきた点がある程度反映された」

 全日病が主催する「2025年に生き残るための経営セミナー」第12弾が2月19日に本部会議室で開かれ、216人が参加した。「経営戦略を考えるための平成28年度診療報酬改定における議論のポイント」と題した、2016年度改定答申(2月10日)に関する全国でもっとも早い講演会となった。
 中医協委員の猪口雄二副会長、「入院医療等の調査・評価分科会」委員の神野正博副会長、DPC評価分科会委員の美原盤副会長そして安藤高朗副会長がそれぞれ講師を務め、16年度改定について各領域から留意点を明らかにし、3月4日が見込まれる告示・通知で確認すべき点を参加者に示した。
 セミナーで、猪口副会長は、全日病の医療保険・診療報酬委員会に改定QAに関する窓口を設置することを明らかにし、「告示・通知によっても解釈に迷う箇所があればが直ちに問い合わせてほしい」と呼びかけた。(4・5面に講演要旨を掲載)

 「経営セミナー」で、急性期医療をテーマに語った神野副会長は、通知でよく確認すべき点として、①「重症度、医療・看護必要度」C項目の「救命等にかかる内科的治療」の内容、②病棟群届出にかかわる7対1と10対1間の転棟禁止の具体的な条件、③短期滞在手術等基本料3の包括外項目、④退院後訪問指導料等における訪問時間と業務時間の関係、などをあげた。
 そして、①の内容によっては内科系の病院が「重症度、医療・看護必要度」該当患者割合をクリアするのはきわめて難しいと懸念を表明。②については患者の病態が変わった場合の対応が問われると指摘。③に関しては「包括外の項目が充実すれば短期滞在手術で合併症をもった患者の手術を幅広くできるようになる」と期待感を示した。
 また、手術の外出しと短期滞在手術の充実によって地域包括ケア病棟の急性期対応力が高まる一方、回復期リハ病棟にアウトカムが入ったことも含め、急性期と亜急性期・回復期の間の、医療機能を踏まえた連携の質が問われていくとの認識を表わした。
 他方、急性期に関しては「重症度、医療・看護必要度」がキーワードとした上で、救急の取り組みがますます重要になってくると指摘。地域包括ケア病棟への大病院参入を規制する因子となったユニットを取り上げ、「戦略上必要ならICUやHCUを止めて地域包括ケア病棟を増やす」ことも選択肢になるとの認識を示した。
 その上で、入院医療全体のキーワードとして地域包括ケアをあげ、「急性期の患者を受け入れ、退院させ、そして介護につなげていく。そのために、いかに医療と介護が連携・統合していくかが問われていく」と論じた。
 猪口副会長は、「回復期・リハ・看護」を中心に、中医協の議論経過を織りまぜながら、今改定の全体像を描いてみせた。
 まず、他科受診の減算率が緩和されたことを歓迎。夜勤看護の月平均時間計算方法の手直しについても「これで72時間の達成がだいぶ楽になる」と評価。あるいは出産後の短時間労働正職員を週30時間以上で常勤扱いとすることや「重症度、医療・看護必要度」の項目にせん妄が入った点など、日病協や四病協が要望してきた点が「ある程度反映された」ことを明らかにした。
 また、今改定の特徴の1つである夜勤看護体制の評価内容を具体的に説明しながら、なお詳細が不明であるため通知で詳しく確かめる必要を説いた。
 在宅に関しても、訪問の診療報酬体系が大きく再編成された骨格を説明の上、「単一建物と同一建物の違いを通知でよく確かめてほしい」と注意を喚起した。
 回復期リハ病棟へのアウトカム評価の導入に関しては、その計算方法を紹介しつつ、「その成否や影響の度合いが読めない」として、早い段階のデータ収集と検証が必要との認識を表わした。
 また、E・Fファイルに追加された「重症度、医療・看護必要度」「医療区分・ADL区分」「持参薬」の記載に関して、システム改修に要する時間等を考慮し、経過措置を設けるよう求めていることを明らかにした。
 「慢性期・在宅」について解説した安藤副会長は、医療区分2と3の患者割合を5割以上とした療養病棟入院基本料2に救済措置として30対1が新設された点を「新類型への移行を考慮したものではないか」と評した。
 そして新たな施設類型の考え方をとりあげ、「人によって様々な意見があり、正確には今後の議論をまつべきであるが」としつつも、療養機能強化型A・Bは「案1-1」に、それ以外の介護療養型は「案1-2」への転換が想定されるとした。
 また、医療外付・居住併設の「案2」については、医療療養25対1からの転換が想定されるとして、その施設構成を示しつつ、「比較的自由な組み合わせが可能となる」との認識を披露した。
 安藤副会長は、25対1医療療養病床と介護療養病床における転換を考える手順をフローにした図(4面)を紹介する一方、20対1の医療病床も「急性期から患者をさらに受け入れていくための工夫と努力がますます問われている」と指摘した。
 美原副会長は、今改定におけるDPC見直しのポイントを解説した中で、17年度から評価される「病院情報の公表」に対応するために、早期の準備と公表に取り組むことを求めた。
 また、「第Ⅲ日(包括算定の終了日)を入院日から30の整数倍とし、入院期間Ⅲの点数の調整を行なう」という算定ルールの見直しを取り上げ、「平均在院日数の長い病院はこのルールで大きな減収になる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
 さらに、様式1の見直しによって併存症・続発症の記入可能数が4から10に増えたことを指摘。「コーディングをするときに主病名だけでなく副傷病名もしっかり書くようにすべき」と注意を喚起。
 その上で、「DPCで一番重要なのはデータの病院管理手法や医療計画への応用だ」と述べ、医療計画に対応するために、地域における他病院のデータを含めた分析を行ない、「病院が地域の中で生き残るための戦略を考えなければならない」と提起した。

全日病ニュース2016年3月1日号 HTML版

 

 

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