全日病ニュース

全日病ニュース

急性期病院 ICU等を止めて包括ケア病棟を増やす病院もありか

急性期病院 ICU等を止めて包括ケア病棟を増やす病院もありか

 「重症度、医療・看護必要度」に関しては、C項目として、全身麻酔・脊椎麻酔の手術と「救命等にかかる内科的治療」が加えられた。内科的治療の全容は明らかではないが、t-PA、PCI、緊急内視鏡止血ぐらいであれば重症患者はそれほど増えない。
 いずれにしても7対1は25%、200床未満は23%と決まった。これをクリアするためには、急性期の病院は色々なことを考えなければならない。一方、在宅復帰率は80%に落ち着いた。
 次に10対1病棟であるが、「重症度、医療・看護必要度」の基準は6%、看護必要度加算は新設の3が12%、2が18%、1が24%というように、6刻みとなった。
 病棟群制度であるが、かつてあった特1・特2という病棟別の看護基準に近い仕組みとして、我々は強く推した。しかし、出てきたものは、10対1への移行を大前提にした上で、激変緩和として、次期改定までの2年間7対1との併存を認めるというものであった。両者の間で転棟はできないとあるが、病態が変わった場合もあるので、通知次第ということになる。
 ICUについては、「重症度、医療必要度」の基準を満たす患者が9割以上から8割以上(特定集中治療室管理料1・2)へと、あたかも緩和されたかのように見えるが、A項目・B項目の内容が変わっており、厳しいとみたほうがいい。また、病棟薬剤師の配置が評価されることになった。
 短期滞在手術等基本料3であるが、水晶体再建術や鼠径ヘルニアの手術が細かくなったほか、新たにシャントやESWLの手術とガンマナイフが追加された。要チェックは今回初めて出てきた包括外の項目である。人工透析のほかにも、がんの疼痛コントロール、インターフェロン、抗ウイルス剤など結構増えたので、合併症をもった患者の短期滞在手術でも包括外のところでかなりやれることになった。
 地域包括ケア病棟は、手術料と麻酔料をめぐって色々あったが現行の包括点数を維持した上で除外することになった。500床以上または救急救命、ICU、ハイケアユニット等をもつ病院は1病棟に限られる。言い換えれば、これらを止めれば地域包括ケアがとれるので、戦略としてそういう対応をする病院が出てくる可能性は十分ある。
 救急医療に関しては、夜間・休日救急搬送医学管理料の見直しが大きい。今までは算定が限定されていたが、午後6時から朝8時まではどの曜日であっても算定でき、かつ、点数が3倍になった。
 救急医療加算は1の点数が若干増えたが、2は引き下げられた。しかし、夜間・休日救急搬送医学管理料を含めると、救急医療に対する評価は改善された。救急医療への対応は「重症度、医療・看護必要度」にも影響する。救急患者を多く引き受けていくかということが急性期病院にとっていかに重要であるかということではないか。
 地域包括ケアシステムの構築を進める上で、退院支援の取り組みを強めることがますます重要になっている。今までの退院調整加算が退院支援加算2と変わり、新たに退院支援加算1と3が設けられた。入院期間に応じた評価を止め、退院時に1回算定する。施設基準は専従で退院調整をする看護師または社会福祉士が1人2病棟に専任するとなっている。
 また、退院直後に入院医療機関の看護師等が患家を訪問した場合に1回580点を算定できる退院後訪問指導料が新設された。退院日は除き、1月以内に5回を限度として算定できる。この「等」に社会福祉士が入るかどうかも通知待ちである。
 やはり新設の訪問看護同行加算20点というのは、訪問看護ステーションまたは他保険医療機関の看護師等と同行し、指導を行なった場合の加算で、退院後1回に限られれる。
 問題は、訪問の時間が看護師等の業務時間から外されることになると意味が変わってしまわけで、その辺がまだはっきりしていない。地域包括ケアを考えると、病棟や病院の看護師等が出て行くことがきわめて重要になっていく。今後は、午前に外来を手伝った看護師が、外来が減る午後に訪問看護をするということもあり得るのではないか。
 今改定を参考に今後の傾向と対策を考えてみよう。
 外科系に関しては、急性期病院で手術し、その後にしっかりリハビリをしてアウトカムを得るという流れが基本になる。それから内視鏡と血管内手術。これは「重症度、医療・看護必要度」のいろんなところに関係してくる。もちろん、化学療法室や無菌治療室等は加算があるので、化学療法を大いにやる必要がある。
 ところが、内科系については、例えば、高齢者に多い肺炎とかが果たして評価されるかという問題がある。
 一方、救急はひとまず安心ということになるのではないか。7対1は救急を死守していく必要があるのではないか。ただし、万一、7対1だけで25%に達しないとしたら、HCUをやめるという選択肢もあり得るのではないか。
 ICUにしても、例えば手術直後の患者中心の場合はICUをやめて、その患者の「重症度、医療・看護必要度」を7対1の病床に同化させるということも考えられる。これは病床機能の分化とはまったく逆の方向になるのだが、しかし、生き残るためには考える必要があるのかもしれない。
 その上で、いずれかの時点で10対1への移行を考える、さらには、地域包括ケア病棟をどう使うかということになる。
 回復期リハ病棟におけるアウトカム評価対策は、患者を送りだす急性期病院(病棟)の機能と大いに関係していくことだろう。地域包括ケア病棟は、あるいは、1つの病棟は急性期とし、例えば短期滞在手術や軽症患者の手術を包括外で実施しながら病床を埋めていくということも必要になってくるかもしれない。
 一方、医療区分1の患者を受け入れることができなくなる慢性期の病院は、在宅から高医療依存度の患者さんを受け入れていくことが生き残る上で基本条件になるではないか。
 いずれにしても、キーワードは地域包括ケアである。今回も、病院からの訪問あるいは在宅との連携を評価する項目が並んでいるが、いかに医療と介護が連携・統合していくか、そして、その中で急性期の患者を受け入れ、退院させ、そして介護につなげていくかが求められていくことだろう。

全日病ニュース2016年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 項目を見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき|第858 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151101/news09.html

    2015年11月1日 ... 【2016年度診療報酬改定入院医療の検討課題と見直しの方向性について】. 項目を
    見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき. 地域包括ケア病棟は手術等
    の包括と包括外で入院料を分化させるのが適当. 副会長(入院医療等の ...

  • [2] 7対1の在宅復帰率は75%。地域包括ケア病棟入院料は70%|第818回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140215/news06.html

    2014年2月15日 ... 7対1の在宅復帰率は75%。地域包括ケア病棟入院料は70%. 地域包括ケア病棟重症
    、医療・看護必要度」A項目1点以上が1割。回リハ1と同じ. □2014年改定「個別改定
    項目について」から 2月12日. *1面記事を参照。特定入院料の ...

  • [3] 7対1「看護必要度」の患者割合は25%、200床未満は23%|第864回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160215/news01.html

    2016年2月15日 ... 最優先事項となった一般病棟7対1入院基本料算定病棟の削減に向けて、一般病棟用「
    重症度、医療・看護必要度」該当 ... また、大病院には病棟数の制限がついたものの、
    地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)は手術と麻酔が包括 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。