全日病ニュース

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医師の働き方ビジョンを踏まえ医師数を推計

医師の働き方ビジョンを踏まえ医師数を推計

【厚労省・医師需給分科会が中間まとめ】
需給推計は限られたデータによるもの

 当面の医学部定員数のほか、将来の医師需給として養成、偏在について検討している医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(分科会長=片峰茂・長崎大学学長)は、5月19日に中間まとめについて議論し、概ね了承した。
 中間まとめは、当面の医学部定員の基本的方針を示し、強力な医師偏在対策を検討することを前提に、現状の医学部定員は9,262人で維持するとしつつ、2017年度から2019年度の3年間の追加増員については「慎重に精査」する考えを示した。将来的に全国レベルの医師需給が均衡するという推計を踏まえ、医学部定員に対し抑制的な考えを示した。
 その一方で中間まとめは、今回の医師需給推計は、限られた時間とデータで行ったものであり、「実態を十分に把握することができなかった」との認識を示した。このため、より精度の高い推計を行う必要があるとし、医師の働き方・勤務状況等に関する全国調査を行い、調査結果をもとに今年中に「新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)」を策定し、その上で必要な医師数を検討する考えを示している。
 中間報告を踏まえて全日病副会長の神野正博構成員は、医師需給に関して精度の高い推計を行うとした点を評価。
 「中間とりまとめ以降、別の推計もあり得る」との認識を示した。

医師不足は解消していないと明記

 医師需給分科会は、現在の医学部定員数(9,262人)を前提に供給数を推計する一方、地域医療構想で推計された必要病床数に病床当たりの医師数を乗じて将来の医師需要を推計した。需要に関しては、医師の労働時間短縮の度合いに応じて、上位・中位・下位の推計を行い、最も医師の需要が大きくなる上位推計では2033年頃、中位推計では2024年頃に需給が均衡し、それ以降は医師数が過剰になる見込みを示している。しかし、この推計結果は疑問とする声が強い(5面参照)。
 また、この推計結果はあくまで全国レベルの数字である。中間まとめは、これまで1,637名の医学部定員の増員が行われ、併せて医師偏在対策を講じることにより、一定の改善はみられたとしつつも、「地域における医師不足は解消していない」と明記。医師の偏在対策が十分図られなければ地域の医師不足の解消にはつながらないと指摘している。
 これまでの医師偏在対策については、医師が勤務地や診療科を自由に選択するという自主性を尊重した対策であったが、こうした対策にとどまらず、一定の規制を含めた対策を行う必要があるとし、13項目にわたって医師偏在対策を示している。
 その上で中間まとめは、当面の医学部定員の基本的方針を示した。
(1 )2017年度までで終了する医学部定員の暫定増は、当面延長する→5面の図のAの部分
(2 )2017年度〜2019年度までの医学部定員の追加増員の取扱いは、「慎重に精査」する→5面の図のBの部分
(3 )2020年以降の医師養成数については、医師需給推計の結果や医学部定員の暫定増の効果、医師偏在対策の効果等について可能な限り早期に検討し、結論を得る。
(1)の暫定増の措置は、特に医師不足が深刻な地域を対象として設けられた仕組みであり、その効果について十分な検証ができていないことから延長する判断となった。
(2)は、「新成長戦略」に基づく定員増で、2017年度〜2019年度の3年間に追加増員ができることとされている。中位推計ではあと8年で全国レベルの医師需給が均衡するとされる中での増員となることから、都道府県からの要望に対し、本当に必要な増員であるかについて慎重に精査する必要があるとしている。

 

全日病ニュース2016年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年1月1日・15日合併号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160101.pdf

    5面/. 医政局長. VS正副会長座談会. 「. 本番を迎える医療制度改革. 」 6. ・. 7面/. 四.
    病. 協. 4. 会. 長. 座. 談. 会. 「. 医. 療. 改. 革. 、 ... であり、日本医師会・四病院団体協議
    会をはじめ各病院団体と協同し、. 医療界一丸となっ ... ける医療提供体制のビジョン
    示す年です。 .... 医師、. 看護職員、理学療法士・作業療法士の分科会をそれ .... 以降の
    医学部定員問題および需給推計の方法を中心 ...... ころでなかなか働きたがらないし、
    終.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年9月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140901.pdf

    業医科大学医学部の松田晋哉教授とDPC評価分科会の金田道弘委員(社会医療法人
    緑壮 ... こうしたデータの公表と活用によって、行政だけでなく、医療機関の側も地域の
    需給 ..... 働き方、休み方の改善に関すること ... 医道審議会・医師分科会医師臨床研
    ...... 我々のグループは大きなビジョンとし ...... 定員をかなり上回ったため、執行部は、.

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