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ホーム全日病ニュース(2018年)第929回/2018年11月15日号「院内暴力対応」テーマに元警視庁管理官が講演...

「院内暴力対応」テーマに元警視庁管理官が講演

「院内暴力対応」テーマに元警視庁管理官が講演

【全日病千葉県支部病院向けセミナー】病院としての対応が必須

 全日病千葉県支部は10月31日、千葉市内で「院内暴力対応」をテーマに病院向けセミナーを開催した。元警視庁捜査一課管理官の横内昭光氏(東京海上日動メディカルサービス株式会社)が、東京慈恵会医科大学付属病院の渉外室での経験などを踏まえて講演した。
 平山登志夫・千葉県支部長は冒頭の挨拶で、自身が理事長の病院での出来事を振り返りつつ、院内暴力が深刻になっていることを指摘。病院の対応が急務であることを強調した。同セミナーは、全日病の会員増強の一環として実施された。
 横内氏は、病院内で発生した最近の事件報道などを示し、「他人事ではなく、明日はわが身の可能性も。いつあなたの病院で起こってもおかしくない」と警鐘を鳴らした。警察OB が病院に常駐することになった背景として、モンスターペイシェントから受ける暴力や悪質クレーマーへの対応の必要性が高まったことをあげた。院内暴力とは、「暴言」「暴力」「セクシャルハラスメント」「悪質なクレーム・脅迫」などにより、診療が停滞する状況をいう。

対応が遅れると問題が深刻に
 院内暴力は、対応が遅れると、当該患者の言動がエスカレートして他の患者も真似をするようになり、医療者が萎縮し士気が低下して退職者が増加。善良な患者も受診しなくなるという悪循環に陥る。横内氏は、病院を守るために、対応策が必須であると強調した。
 ある調査によると、院内暴力経験者の5割弱が、「要因は医療者側にあった」と答えている。患者が怒るのには理由があり、それを未然に防ぐことが、対応策となる。結論としては、「目で見て対応するコミュニケーション」をあげた。そして、「患者の話を聴く」ことの大切さを説いた。
 高齢患者が増えている現状に対しては、例えば名札の「名前」を大きくすることや、専門用語をなるべく使わない工夫などを提案した。説明したはずであっても相手が理解していなければ、予後の悪化などで関係がこじれる要因になる。また、待ち時間が相手を苛立たせることへの配慮も指摘した。
 対策を講じても、モンスターペイシェントや悪質クレーマーによる院内暴力は生じる可能性があり、対策が必要になる。横内氏は、誠実に対応した上で、「病院に不手際も過失もない場合、責任がないことを毅然と説明する」ことが重要だと強調した。それでも暴力や金銭的な要求をちらつかせるなどの問題が発生した場合は、「安全性を最優先に、危険を感じれば、110番に電話する」ことを勧めた。相手は逆上して、「警察を呼んでみろ」と言うことが多いが、素直に電話したほうがよいと助言した。
 悪質クレーマーの特徴は、「粗暴な行動」「理不尽な要求」「根拠はあるが要求内容が過大」「要求の根拠が不当」である。狙いは「お金」であることもあり、「謝罪」であることもあるが、「できないことははっきり言うべき」と述べた。横内氏は、「病院職員は性善説で患者に対応する。しかし私のような『渉外室』の担当は、性悪説に立ち、事件を予防するのが仕事」と述べた。

 

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