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ホーム全日病ニュース(2021年)第985回/2021年5月1日号次期診療報酬改定の検討スケジュールを了承

次期診療報酬改定の検討スケジュールを了承

次期診療報酬改定の検討スケジュールを了承

【中医協総会】6月下旬から主要論点を議論し、9月に意見を整理

 中医協総会(小塩隆士会長)は4月14日、次期診療報酬改定に向けた検討スケジュールを了承した。6月下旬の夏から秋にかけて、次期改定の主要な論点をまとめ、9月に意見を整理する。その後、各種調査結果を踏まえ、本格的な議論を開始する。中医協の議論の進め方は毎回の改定ごとに異なるが、今回は新型コロナの影響もあり、議論の開始は比較的遅めになる。支払側の委員からは、通常改定より課題が多いとして、「できるだけ早く議論すべき」との要望が出た。
 検討スケジュールは下記の図表のとおり。厚生労働省は6月下旬までに主要な論点に関わる資料を準備し、次期改定の議論に入るとの方針を示した。ただ、新型コロナの感染状況によっては、日程が変わる可能性も指摘した。秋以降は、2020年度改定の影響を検証した診療報酬改定結果検証部会や入院医療等の調査・評価分科会の報告があり、医療経済実態調査の結果も出る。それらを踏まえた本格的な議論に入る。諮問・答申は通常どおり来年2月頃とする予定だ。
 医師の働き方改革への対応などが重要課題となった2020年度改定では、第1ラウンドを春から夏にかけて、第2ラウンドを秋以降とした。2018年度改定は医療・介護同時改定であったため、年明けすぐに改定の議論が始まっている。それと比べると、今回改定の議論の出足は遅い。背景には、新型コロナの感染拡大があると考えられる。
 日本医師会常任理事の松本吉郎委員は、「新型コロナとの戦いは長期戦に入った。医療機関はそれぞれの機能に応じて役割分担し、連携して対応しているが、疲弊している。今回示された検討スケジュールに異論はないが、今までの改定論議とは、異なる状況にあることに留意すべきだ」と強調した。
 また、「検討スケジュールに『医療機関等における消費税負担に関する分科会』の予定が入っていない。2019年10月の消費税率10%への引上げに伴う診療報酬での対応に関しては、医療機関等への補てん状況を継続的に検証することになっていたと思う」と質問した。
 厚労省は、いわゆる控除対象外消費税の診療報酬による補てんの状況は、医療経済実態調査をあわせて把握する方針であると説明するとともに、補てん状況の一定の把握と分析を行った上で、分科会を開催する方針を示した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員も、「日本病院団体協議会としても、消費税引上げに伴う診療報酬による補てんの状況を注目している」と把握を求めた。医療経済実態調査については、「今回、単月調査は実施するのか」と質問した。単月調査は、新型コロナの影響で、2019年度と2020年度の医療機関の決算データを比べても、2020年度改定の影響を把握することが困難であることから、新型コロナの影響が軽微な、できるだけ直近の単月の調査を別途実施するというもの。しかし、現状で新型コロナの感染拡大が全国で再び生じている状況にある。厚労省は、5月の中医協総会で判断するとの考えを示した。
 一方、支払側の委員は、厚労省が示した検討スケジュールよりも、議論を早く開始することを要望した。健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「新型コロナの感染拡大で、人々の健康意識・受療行動が変わった。それを踏まえた検討が必要になる。40を超える診療報酬特例の検証も重要だ。社会活動のICT活用の広がりやオンライン診療の緩和もある。この1年で学んだ様々な教訓を次期改定で活かしたい。これらを議論するのに、この日程では足りない」と述べた。
 厚労省は、「これまでの延長線上とは違う状況であるのは指摘のとおり。夏以降にそのような観点での議論がしっかりとできるよう準備したい」と回答し、様々な課題に対応するためにも、6月下旬までに、厚労省事務局として、それにふさわしい資料を準備するとして、理解を求めた。

支払側委員と専門委員が交代
 支払側委員2名の交代があった。全国健康保険協会の吉森俊和理事が退任し、4月5日付けで安藤伸樹理事長が就任した。染谷絹代・静岡県島田市長が4月5日付けで退任し、末松則子・三重県鈴鹿市長が就任した。任期は2年間となっている。専門委員では、塩野義製薬株式会社の石牟禮武志・医薬開発本部渉外部長が就任したが、前任者からの引き継ぎであり、任期は今年10月末となっている。

DPC対象病院が合併し病床減少
 中医協総会は同日、DPC対象病院の合併を了承した。社会医療法人善仁会・宮崎善仁会病院と社会医療法人善仁会・市民の森病院が2021年4月1日に合併し、宮崎善仁会病院となり、合併後もDPC/PDPSを継続する。合併前の宮崎善仁会病院の病床数は106床(DPC算定病床数も同数)、市民の森病院は108床(同)で、合併後の宮崎善仁会病院の病床数は199床となり、15床の減少となる。

不妊治療の保険適用めぐり議論
 不妊治療の実態に関する調査研究の結果が報告された。菅義偉内閣は2022年度改定で、不妊治療の保険適用を拡大する方針を示しており、その間の対応として、体外受精・顕微授精の治療に対する助成金を今年1月1日から拡充し、30万円とした。中医協において不妊治療の保険適用をめぐる具体的な議論が今後行われることになる。時期としては、同調査結果を踏まえ、学会がガイドラインを作成する6月以降に開始する予定となっている。
 同調査結果では、自由診療の不妊治療では、医療機関により各治療の実施率や価格に差があることが明らかとなった。委員からは、不妊治療を保険適用とすることの意味づけから、保険適用する場合の安全性・有効性を担保する方法を含めた治療の範囲、働き方との関係まで様々な意見が出された。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、「保険適用の範囲を拡大することに異論はない。しかし、不妊治療の技術は多様で、しかも進展している。すべてを保険適用とすることはできない。その場合に、保険外併用療養費の仕組みを含めた検討が必要になると思うが、それでよいか」と質問し、厚労省は同意した。
 池端委員は、「大枠では賛成だが、不妊治療を保険適用にすると、保険事故として認めることになる。産みたい人の希望を叶えるのはよいが、産まない権利の侵害にならないか心配だ」と指摘。厚労省は、「不妊治療を強要するようなことがあってはならない」と断言した。
 日医の城守国斗委員は、「不妊治療は、通常の医療と異なり、男性と女性の両方が関わる。費用負担の問題もその観点で整理する必要があるし、胚凍結の場合は、夫婦関係が成立しているかをその間、確認しなくてはならない。意思決定や倫理的な面の課題がある」と述べた。お茶の水女子大学教授の永瀬伸子委員は、海外の制度の把握を求めるとともに、働き方など医療以外の問題とあわせた議論が必要と主張した。

 

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