全日病ニュース

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機能評価受審病院の拡大を目指して

機能評価受審病院の拡大を目指して

【座談会】受審支援プロジェクトの取組みをふり返る

 病院機能評価委員会(木村厚委員長)では、病院機能評価の受審率向上キャンペーンの一環として、香川県の樫村病院を対象として、受審支援のモデル事業を実施し、その取組みを全日病ニュースに報告していただいた。1年間の受審支援プロジェクトをふり返り、課題や今後の展望を話し合っていただいた。

●機能評価受審プロジェクトの目的

岩渕委員

美原 病院機能評価委員会では、会員病院の機能評価受審を支援するモデル事業を実施し、1年間にわたって香川県の樫村病院を支援してきました。今日は、支援プロジェクトを総括する意味で座談会を行いたいと思います。まず、プロジェクトの目的を確認していただけますか。
中嶋 全日病の会員の多くは中小病院であり、受審準備を担う人手の不足から、受審が進んでいないことが課題です。そこで、病院機能評価運動を提唱した鈴木紀之さんの意志を引き継いで、このプロジェクトを実施することになりました。診療、看護、事務管理のアドバイザーが継続的に支援を行い、支援を受ける病院には経済的負担は求めないことにしました。私たちの支援は、受審の準備を支援するのであって、認定を請け負うものではありません。
岩渕 日本の病院の6割は民間病院であり、 中小病院が多い中で、これらの病院が第三者評価を受け一定のレベルに達すれば、日本全体の医療の質向上につながります。
 支援する病院を選ぶに当たっては、その病院の取組みを知ることで、自分たちも機能評価を受けようという気持ちになる病院を選ぼうと考えました。それが、地域包括ケア病棟を持つ37床の樫村病院だったということです。

●新型コロナの状況下で支援を実施

美原 最初に現地を訪問したのは中嶋さんでしたね。
中嶋 昨年6月4日に病院を訪問しました。機能評価のイロハや1領域と4領域の主要な評価項目を解説し、受審準備で取り組むべき内容を説明しました。残りの時間で院内を回って若干のアドバイスを行いました。
美原 樫村病院は初めて受審する病院です。受審までの準備作業について、私たちの支援はタイムキーパー的な役割を果たしたのでしょうか。
中嶋 そこまで関与できたかというと反省はあります。
美原 コロナウイルスの影響もありましたね。岩渕さんは、コロナの関係で1回目の現地訪問ができなかったのですね。
岩渕 6月に訪問予定でしたが、延期となり、7月29日にリモートで支援を行いました。樫村病院の方々と面識がない状況でしたから、言葉には注意を払いました。1領域の看護に関する合同面接の注意点を説明し、続いて2領域の講義を行い、その後、iPad を使って病棟を拝見しました。事前に医療安全管理マニュアル等を送って頂きましたので、だいたいの状況はわかりました。
美原 実際に訪問するのと、リモートで支援するのは違うでしょうね。
岩渕 全く違います。
中嶋 私もリモートで支援を行いましたが、先に訪問していたのでだいぶ違いました。
岩渕 訪問して面識を得てからリモートで行うという順番だったらよかったと思います。10月6日にもリモートで支援を行いましたが、この時は病院からの質問を受ける形でした。具体的な質問が多く、説明に納得していただいたと思います。3回目の12月9日に初めて病院を訪問しましたが、「百聞は一見に如かず」でした。現場を見ることで明確にアドバイスすることができたと思います。
美原 診療と看護の支援で病棟を回って見て、これは実際に見ないとわからないなと思ったことがありました。感染性廃棄物の扱いなどですね。
岩渕 その部分はみてよかったと思います。また、中材では、オートクレーブのボウィー・デックテストを実施していませんでしたので、なぜ必要かを説明し至急行うように促しました。

●更新の受審と新規受審との違い

美原 私は、8月28日に病院を訪問しました。この時の反省点として、 少しテクニックに走りすぎたかなと感じています。プレゼンテーションの仕方など受審のテクニックを説明しましたが、もっと基本的なことを話した方がよかったかなと思います。
 また、更新の受審と初めての受審の違いを感じました。更新の場合はストラクチャーとしての書類が整っていることを前提で審査が進みますが、初めての受審ではそこが十分とは限りません。まず、基礎的なストラクチャーがしっかりできているかを見ないといけません。
中嶋 全日病ニュースのレポートにも書きましたが、初回受診の病院においては準備作業に当たっての誤謬があると感じました。書類を作ることの目的は何か、自分たちが書類をどう活用するかという意識が大切ですが、サーベイヤーが納得するような書類を作ろうとしていました。サーベイヤーにOKをもらうにはどういうレベルを目指すべきかという意識だったようですが、それは違うと伝えました。A4版1枚であってもいいから、自分たちの病院のものを作るべきと指導しました。この点は最初に受審する病院が陥りやすいところかと思います。
美原 その指摘は重要ですね。認定を得るために、うわべを取り繕うのではなく、評価機構が求めることの本意は何かを考え、それに対応していくということが理解されるといいですね。
美原 ケアプロセスについてはどうでしたか。
岩渕 改善の余地があると思いました。マニュアルは整っていましたが、それをうまく説明できるかどうかです。自分たちのやっていることを明確に話せればいいと思います。
美原 どういう患者をケアプロセスで選ぶかを明確に意識してほしいと思いました。その病院が地域で果たす役割は何がメインなのか。サブアキュートを受け入れるのか、ポストアキュートを受け入れるのか、どのような機能を持っているかを理解し、それを意識して ケアプロセスの患者を選んでほしいと思います。

●今後に向けての反省点

中嶋委員

美原 今回、1年間を通して支援したわけですが、順番としては、診療、看護、事務管理の部門別に院内を回ってアドバイスをした上で、その総仕上げとして実際の受審のシミュレーションをするという流れでしたが、これは今後に続くいいやり方だと思いました。
 反省点としては、訪問と訪問の間の支援の仕方ですね。どんなことでもメールで質問してくださいと言ったのですが、質問はほとんど来ませんでした。
中嶋 私には若干の質問がありました。遠慮があったのかもしれませんね。
美原 もう少し日常的なやりとりがあった方がスムーズに進むと思います。せっかく支援を受けるのですから、うまく利用してほしいなと思いました。
美原 このプロジェクトは、今年度も続けることが決まっていますが、今後の進め方やこれから受審を目指す病院に対してアドバイスはありますか。
中嶋 機能評価は大きな病院だけのものではないということが今回の支援プロジェクトを通して、樫村病院にわかってもらえたのではないかと思います。機能評価を受けることは簡単ではありませんし、いろいろたいへんなこともあるので、それを乗り越えるエネルギーがないと挫折してしまいます。
 私が感じたのは、受審準備を通じて病院の組織力が高まったということです。おそらく樫村病院の職員の一人一人は自分のミッションのうちのコアの部分を忠実に取り組んできたと思います。今回、院内の規定を作ったり、業務マニュアルを作ることを通じて自分たちの足元を見たのではないかと思うのです。そのことによって、自分たちの業務を見直し、質の向上について考え、そういうことも自分たちの仕事だということがわかったのではないでしょうか。
岩渕 病院をよくするためには、客観的な評価が必要であることを広く言わないといけないのだと思います。ですから、第三者評価を受審してほしいということですが、今回の樫村病院の取組みはとても意味があると思います。37床の病院でも標準化した医療を実施できることを知れば、受審する病院が増えると思います。
岩渕 反省点をあげると、最初の自己評価票でCの自己評価が多かったので、もう少しやっているのではないかと助言したところ、次の自己評価票ではSの評価が増えていました。自己評価の視点について、もう少し踏み込んでかかわった方がよかったと思います。
美原 自分たちの病院だけ見ているとそうなるかもしれません。その意味では、全日病のセミナーを利用してもらったらいいと思います。セミナーには、多くの病院が参加し評価項目についてディスカッションします。初めて受診する病院も、そういう場に参加することで自分たちの立ち位置を理解できると思います。ぜひ全日病のセミナーに参加してほしいと思います。
岩渕 医療の質向上を目指して一緒に考えましょうというスタンスで参加してほしいですね。
美原 機能評価機構が機能評価のデータブックを発行しています。同じくらいの規模の病院がどうやっているかを知る意味で、データブックは参考になると思います。他の病院の取組みを知ることによって自分たちの病院の身の丈に合った取組みができます。

美原副会長


●受審準備のプロセスは大きな蓄積

美原 今回、支援に行って自分たちの病院が20年前に初めて受審したときのことを思い出しました。審査が終わったあと、みんなでバンザイをしたことを覚えています。職員全員が団結して取り組み、大きな達成感がありました。はじめて受審したときに得たものはとても大きいし、それが医療の質の向上に向けた継続的な取組みにつながっていると実感します。ですから、最初はたいへんかもしれないが、ぜひ頑張ってほしいと思います。
 それでは、最後に一言ずつお願いします。
中嶋 今回、1年という期間でしたが、樫村病院の職員の努力でここまでたどりついたことは病院として大きな蓄積になったと思います。できたら、全日病のセミナーで樫村病院の経験を話してくれるといいと思います。
岩渕 反省点はありますが、やれることはやったと思っています。あとは樫村病院がPDCAサイクルをどう回すかですね。その辺は、院長のリーダーシップに期待したいと思います。
美原 それではこの辺で。本日はどうもありがとうございました。

 

全日病ニュース2021年5月1日号 HTML版