全日病ニュース

全日病ニュース

健保法等改正案が国会で審議入り

健保法等改正案が国会で審議入り

【衆院・本会議】高齢者の自己負担見直しが焦点

 「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が4月8日、衆院本会議で審議入りした。翌4月9日から厚生労働委員会での議論が始まった。改正案には、「後期高齢者の自己負担への2割負担導入」が盛り込まれ、議論の焦点となる。
 野党は、現役世代の負担上昇を抑えるという改正案の趣旨に理解を示したが、コロナ禍で受診抑制が起きていることを踏まえ、高齢者の自己負担見直しはさらなる受診抑制を招きかねないと懸念を示した。これに対し菅首相は、2割負担の対象者を一定の所得以上の人に限定した上で、3年間の配慮措置を講じることで、受診抑制が生じないよう対応していると説明して理解を求めた。
 立憲民主党は、後期高齢者への2割負担の導入を見送る代わりに、後期高齢者の賦課限度額を引き上げることを可能にする対案を提出。政府提出の改正法案とあわせて審議される。

現役世代の負担上昇を抑える
 後期高齢者の自己負担見直しは、安倍晋三首相(当時)が2019年9月に立ち上げた全世代型社会保障検討会議と社会保障審議会・医療保険部会で議論されてきた。まず、2019年12月に全世代型社会保障検討会議がまとめた中間報告で一定所得以上の人について2割負担を導入する方針が示され、社会保障審議会の医療保険部会で対象範囲や配慮措置が議論された。2割負担の対象範囲は与党が協議して方向を固め、2020年12月15日に閣議決定された全世代型社会保障検討会議の最終報告に盛り込まれ、これを踏まえて改正法案が提出された。
 4月8日の本会議で法案提出の趣旨を説明した田村憲久厚生労働大臣は、「少子高齢化が進展し、2022年度以降、団塊世代が75歳以上の高齢者となり始めるなか、現役世代の負担上昇を抑えながら、すべての世代が安心できる社会保障を構築することが重要だ。このような状況を踏まえ、医療保険制度の負担と給付を見直すとともに、子ども・子育て支援の拡充や、予防・健康づくりの強化等を通じて、すべての世代が公平に支え合う全世代型の社会保障制度を構築することを目的として、この法律案を提出した」と述べた。
 議論の焦点は、後期高齢者の窓口負担への2割負担の導入。現行の1割負担から2割負担に変わる対象者の範囲は、現役並み所得者以外の後期高齢者医療の被保険者のうち、「課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)」。長期にわたり頻繁に受診する患者への配慮措置として、施行後3年間は、外来受診の1か月の負担増額を最大でも3,000円に抑える。施行は、2022年度後半とされている。
 このほか、改正法案では医療保険の給付と負担に関わるものとして、◇傷病手当金の支給期間の通算化◇任意継続被保険者制度の見直し─が盛り込まれた。
 子ども・子育て支援の拡充に関するものとしては、◇育児休業中の保険料の免除要件の見直し◇子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入─がある。予防・健康づくりの強化に関する事項では、保健事業における健診情報等の活用促進が盛り込まれた。
 また、改正法案には国保の取組みの強化や、医療扶助へのオンライン資格確認の導入に関する改正が含まれている。

 

全日病ニュース2021年5月1日号 HTML版