全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第985回/2021年5月1日号2022年度薬価改定に向け議論の進め方を了承

2022年度薬価改定に向け議論の進め方を了承

2022年度薬価改定に向け議論の進め方を了承

【中医協・薬価専門部会等】調整幅2%の引下げの是非で賛否

 中医協の薬価専門部会(中村洋部会長)は4月21日、2022年度薬価改定に向けた課題と今後の議論の進め方を了承した。2020年度改定と2021年度改定の骨子に記載されている事項とこれまでに問題提起された課題などについて、関係業界や薬価算定組織からの意見聴取を踏まえつつ、議論を深めていく。
 2021年度の中間年改定では、今後の薬価改定に向け、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立させ、「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、既収載品目に係る算定ルールの適用の可否などを含め検討を行うとしている。
 政府の他の政策主体との関連をみると、行政事業レビュー「秋の年次公開検証」(2020年11月15日)の指摘事項では、薬価算定プロセスで、「原価の情報が製薬会社から国に対し十分に開示されているとは、必ずしもいえないことから、少なくとも薬価算定の権限を持つ部局等は、原価に対する情報を製薬会社から開示を受ける」など見直しを進めるべきとの提案がある。
 一方、健康・医療戦略(2020年3月27日)では、「健康寿命の形成に資する新産業創出及び国際展開の促進等」の観点から、「薬価制度等におけるイノベーションの適切な評価を図る」ことが求められている。
 新経済・財政再生計画(改革工程表2000)では、◇新薬創出等加算対象品目を比較する場合の薬価算定の見直しや長期収載品の段階的価格引下げの期間のあり方◇新薬創出等加算の対象外である品目に関し、同加算の対象品目を比較薬とした薬価算定における比較薬の新薬創出等加算の累積額を控除する取扱いの検討などを明記している。
 これらの課題を踏まえ、議論を進めていくことに異論はなく、了承された。
 日本医師会常任理事の松本吉郎委員は、「今日は個別具体的な課題に言及しないが、医療保険制度の持続可能性とイノベーションの評価、国民負担の軽減と医療の質向上の観点で、中医協で議論が進められなければならない」と、他の会議での議論が先行することがないようけん制した。日本薬剤師会常務理事の有澤賢二委員は、「2021年の中間年改定の結果、医療機関・薬局・卸・製薬会社にそれぞれどのような影響があったのかをきちんと把握すべき」と要請した。
 協会けんぽ会長の安藤伸樹委員は、「中間年改定については、2021年度は新型コロナの影響の下での例外的な対応であったので、これを前提とせず、改めて通常の改定ルールを中長期的な課題として議論すべき。また、薬価改定における調整幅2%が妥当であるのかは議論になる」と述べた。
 健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、個別的な課題に踏み込んだ。◇中間年改定での薬価改定の範囲の拡大◇原価計算方式での営業利益率の引下げ◇長期収載品の価格引下げの期間の短縮◇調整幅2%の引下げ◇薬価改定で市場実勢価格との乖離率だけでなく乖離額も考慮─などを主張した。
 支払側委員が調整幅2%の引下げに言及したのに対し、松本委員は、「我々は引上げが必要だと考える」と述べた。

費用対効果評価の議論の進め方了承
 費用対効果評価専門部会においても、2022年度改定に向けた今後の議論の進め方を了承した。また、部会長に荒井耕・一橋大学教授、部会長代理に中村洋・慶應義塾大学教授が選出された。
 費用対効果評価専門部会は2012年5月に設置され、4年間の議論を経て仕組みができ、2016年4月に試行的運用が開始。2019年4月に本格運用が始まり、4月14日の前回の部会で初の価格調整案が了承されている。
 薬価専門部会と同じく、2019年2月20日の費用対効果評価の今後の検討についての骨子などを踏まえ、関係業界や費用対効果評価専門組織からの意見聴取を行いつつ、議論を深める。支払側委員がテリルジーやキムリアの価格調整幅が小さかったことを問題視したのに対し、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「引下げ幅が小さいから見直すべきというのはおかしい。医薬品の価値をみるもので、査定のようになってはいけない」と述べた。

 

全日病ニュース2021年5月1日号 HTML版