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ホーム全日病ニュース(2022年)第1007回/2022年4月15日号遠隔医療のさらなる活用を医療部会で議論

遠隔医療のさらなる活用を医療部会で議論

遠隔医療のさらなる活用を医療部会で議論

【社保審・医療部会】基本方針を2022年度中に策定

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は3月28日、遠隔医療をさらに活用するための基本方針の策定に向けた議論に着手した。今後、地域医療において遠隔医療が果たす役割や情報セキュリティなどを議論し、2022年度中に基本方針を策定する予定だ。委員からは、医師間での遠隔医療の活用に期待を寄せる声があがった。
 昨年6月に政府が閣議決定した規制改革実施計画には、2022年度に「オンライン診療のさらなる活用に向けた基本方針を策定し、地域の医療関係者や関係学会の協力を得て、オンライン診療活用の好事例の展開を進める」ことが盛り込まれていた。
 今年1月には、厚生労働省が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の一部を改訂。初診からのオンライン診療を可能とし、そのための条件を定めた。
 これらを踏まえて厚労省は、オンライン診療のみではなく、専門医と地域の医師との間で行われる症例に関する「遠隔相談」なども含めた「遠隔医療」を推進するための基本方針を策定することとし、医療部会に協議を求めた。今後、遠隔医療を活用した好事例も集める方針。
 厚労省医政局の熊木正人総務課長は、「指針ではオンライン診療のルールやガイドラインを定めた。今回は、前向きに、オンライン診療を活用するための基本方針をつくる。議論のなかで、規制の見直しが必要ということになれば、指針改訂の議論にもなりうる」と述べた。
 基本方針策定に向けた検討の視点として、◇地域の医療提供体制の確保のために遠隔医療が果たすべき役割◇国・都道府県・医療関係者のそれぞれが取り組むべき内容◇患者・住民の理解を進めるための取組み◇個人情報の取扱いや情報セキュリティのあり方―が例示された。
 厚労省は遠隔医療に含むものとして、地域の病院がX線画像やMRI画像などを遠隔地の大学病院等の専門医に電子的に送付し、専門医が画像診断を行う「遠隔画像診断」の事例や、手術中に手術執刀医と遠隔地にいる病理医がリアルタイムでコミュニケーションを取り、病理診断を行う「遠隔病理診断」の事例も示している。

遠隔医療を医師偏在の解決策に
 全日病副会長の神野正博委員は、「遠隔診断や遠隔診療は、医師の地域偏在・診療科偏在の解決策となりうる。有効に使えるところで私たちが工夫することが重要だ」と述べた。
 厚労省の資料に遠隔相談や遠隔診断、遠隔診療という用語が使用されていることに言及し、「診断を含まない『相談』と、診察して病状を判断するが治療なしの『診断』、診断に治療も加わる『診療』の用語を今後は明確に分けて、使用してほしい」と厚労省に要望した。
 日本医師会副会長の今村聡委員は、「医師と医師の間の、いわゆるDtoDの遠隔医療は、医師の偏在や働き方改革に対応するために、どんどん進めるべきだ。AIの活用も避けては通れない」と述べた。
 このほか、委員からは「遠隔医療に医療費抑制効果があるとの実証研究は世界的にない。必要以上に遠隔医療が使われすぎていないか、検証が必要」との意見も出された。
 永井部会長は、遠隔医療の質の担保が非常に重要との考えを示した。

 

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