全日病ニュース
感染症対応の医療機関への減収補償の仕組みを提案
感染症対応の医療機関への減収補償の仕組みを提案
【社保審・医療保険部会】健保法には保険医療機関の感染症対応への協力を明記
厚生労働省は8月19日の社会保障審議会・医療保険部会(菊池馨実部会長)に、感染症対応のため特別な協定を締結した医療機関への減収補償の仕組みを提案した。財源は、広く国民で支える仕組みとするため、公費と保険料とする。ただ、保険者は反対している。また、感染症対応に保険医療機関が協力することを、健康保険法に明記するとの案も出された。
秋の臨時国会への提出が見込まれる感染症法の改正については、厚労省が感染症に対応する医療機関の抜本的拡充の対応策を示しており、8月17日の社保審・医療部会でも議論された。その中に、感染症対応のため特別な協定を締結した医療機関への減収補償の仕組みがある。厚労省は医療部会での議論を受け、減収補償の仕組みの具体的なイメージを示した。
提案では、「初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関」は、協定に基づく対応により一般医療の提供を制限して、大きな経営上のリスクのある流行初期の感染症医療の提供をすることから、減収補償を行うための方法を設けるとしている。
補償額は、感染症医療の提供を行った月の診療報酬収入が、感染症流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、その差額を支払う。事業実施主体は都道府県で、費用負担者は国、都道府県、保険者(被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合)―とした。
費用負担者に保険者が含まれたことに対し、保険者側は反発。健康保険組合連合会副会長の佐野雅宏委員は、「新興感染症に対応する医療インフラは本来全額公費で賄うべき。コロナ禍に匹敵する事態が起こったとしても、診療行為がないのにもかかわらず保険者が費用負担をすることはおかしい」と訴えた。
日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「方向性には賛同できる。しかし、パンデミックの初期段階に、お金がないから病床が動かなかったわけではない。医師・看護師が不足したことが理由だ。お金を出すことより、いかに医療機関が有事に備え、人員・物資を含めた余裕が持てるかが重要。その視点が入っていない」と指摘した。
全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、感染症対応に保険医療機関が協力することを、健康保険法に明記することについて、「平時においても協定を結ぶことは理解できるが、今後、どのような感染症が発生するかわからない。もちろん新型コロナを参考にして決めることはいいと思うが、実際に新たな感染症が起きたときの対応はそれぞれ異なるはずだ」と述べ、柔軟な対応が行われることが担保できるような規定とすることを求めた。
オンライン資格確認システムを議論
医療保険部会は同日、オンライン資格確認等システムについて議論した。
厚労省は、来年3月末までに概ねすべての医療機関・薬局がオンライン資格確認等システムの運用を開始することを目指している。ただ、運用開始は8月14日現在で全体の26.8%の約6.2万施設。
運用開始を加速化するため、各都道府県単位で地方厚生(支)局、社会保険診療報酬支払基金支部、国民健康保険連合会に担当者を置き、連携して関係者への働きかけを行う「オンライン資格確認の普及に向けた連携会議」を設置する方針を明らかにした。
一方、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の三師会の「オンライン資格確認推進協議会」と厚労省合同での説明会を8月24日にユーチューブで配信することも示された。
電子処方箋のモデル事業については、今年10月から1年間実施するモデル事業の4地域を選定している。
具体的には、①山形県酒田地域(日本海総合病院、アイン薬局、共創未来あきほ薬局他)②福島県須賀川地域(公立岩瀬病院、さくら薬局他)③千葉県旭地域(国保旭中央病院、調剤薬局マツモトキヨシ、とまと薬局、日本調剤、毎日薬局、ヤックスドラッグ他)④広島県安佐地域(安佐市民病院他)―の4地域となっている。
電子処方箋管理サービスの運用開始は2023年1月を予定しており、2025年3月には、概ねすべての医療機関・薬局が電子処方箋システムを導入することを目指している。厚労省は、そのための支援も加速させる考えだ。
猪口委員は、「かなり速いスピードで、電子処方箋システムの導入が進んでいく。通信環境が十分ではない地域への配慮や、セキュリティの面での確実な対応をお願いする」と述べた。
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