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ホーム全日病ニュース(2022年)第1016回/2022年9月1日号医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設

医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設

医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設

【中医協総会】来年度からオンライン資格確認を原則義務化

 中医協(小塩隆士会長)は8月10日、厚生労働大臣から諮問された「医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付け及びこれに伴う診療報酬上の加算の取扱い」を答申した。来年度から医療機関などにオンライン資格確認等システムの導入を原則義務付けるとともに、診療報酬の評価としては、10月から、現行の電子的保健医療情報活用加算を廃止し、医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設する。
 また、同日、10月から実施する看護の処遇改善も答申した(「看護処遇改善評価料を答申」参照)。
 これらは、骨太方針2022に、「オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付けるとともに、…関連する支援等の措置を見直す。2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」と明記されたことを踏まえた対応だ。
 2023年度から、「患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合」に、医療機関などでオンライン資格確認ができることが原則義務となる。療養担当規則にそのような規定を明記する。ただし、現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関などは例外となった。また、オンライン資格確認に係る体制に関する事項を院内に掲示することも義務となる。
 オンライン資格確認の導入の原則義務付けとあわせ、医療機関などに対して、オンライン資格確認ができる体制を整えるための財政支援を拡充するとともに、診療報酬における加算の評価も見直すことになった。
 2022年度診療報酬改定で導入した電子的保健医療情報活用加算を廃止し、医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設する。
 電子的保健医療情報活用加算に対しては、患者がマイナンバーカードを使って、オンライン資格確認を行うと、健康保険証を使うよりも患者負担が上がることなどに対し、オンライン資格確認の普及にむしろ逆行するとの指摘などが出ていた。今回、オンライン資格確認が原則義務化されることに伴い、評価体系を変更した。
 医療情報・システム基盤整備体制充実加算は初診時のみの評価で、施設基準を満たす医療機関において、オンライン資格確認により患者の情報を取得した場合などは2点、そうでない場合は4点となる。
 施設基準では、①オンライン資格確認の体制を有していること(厚生労働省ポータルサイトに運用開始日の登録を行う)②患者に薬剤情報、特定健診情報その他必要な情報を取得・活用して診療等を行うことをホームページや院内に掲示することを求めている。
 また、初診時の問診票の標準的な項目を新たに定め、薬剤や特定健診の情報は、オンライン資格確認により取得されることを明示する。問診票の標準的項目は近く公表するとしている。
 厚労省は、診療情報を取得・活用する効果として、「薬剤情報により、重複投薬を適切に避けられるほか、投薬内容から患者の状態を把握できる」、「特定健診結果を診療上の判断や薬の選択等に生かすことができる」ことをあげた。今後、オンライン資格確認のシステムを通じて閲覧できる診療情報が増えれば、さらなる医療の質向上を期待できることになるとしている。
 医療情報化支援基金による医療機関などへの補助も見直される。
 病院に対しては、過半数以上の病院で、実際の費用が、補助金の事業額の上限を超過していることを踏まえ、現行の補助上限額を見直す。顔認証付きカードリーダーは3台まで無償提供されており、ネットワーク環境の整備やレセプトコンピュータ、電子カルテの改修などの経費の補助が拡充される。
 例えば、顔認証付きカードリーダーを1台導入する場合、2021年4月~2022年6月6日までは、105万円を上限に2分の1補助(事業額210.1万円)であったが、2022年6月7日~ 2022年12月31日までは、210.1万円を上限に2分の1補助となり、420.2万円の事業額に対応できるようになる。

支払側が「容認できない」と主張
 中医協の議論では、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の新設に対し、支払側の委員が反対した。
 健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「オンライン資格確認により、患者が医療の質向上を感じることのできる環境が整っていない。実質的には初診料の引上げになる」と指摘し、「容認できない」との姿勢を示した。
 これに対し、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「現状でメリットを感じにくいのは、患者も医療機関、薬局も同じ。普及率が5割を超えればこの状況は変わる。普及するまでは、行政、保険者、医療機関・薬局が痛み分けして、頑張るべき」と訴えた。
 意見が分かれたため、厚労省は、①関係者それぞれが取組みを加速させる②国民・患者の声をよくきき、調査・検証を行う③関係者が連携して周知する─ことなどを盛り込んだ附帯意見を作成。支払側はこれを確認した上で、加算の新設を受け入れた。

 

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