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ホーム全日病ニュース(2022年)第1023回/2022年12月15日号厚労省がかかりつけ医機能の制度化の骨格案を提示

厚労省がかかりつけ医機能の制度化の骨格案を提示

厚労省がかかりつけ医機能の制度化の骨格案を提示

【社保審・医療部会】「かかりつけ医機能報告制度」を創設し、「医療機能情報提供制度」を拡充

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は11月28日と12月5日、厚生労働省が提示したかかりつけ医機能の制度化の骨格案をめぐり、議論を深めた。厚労省案の大枠に対し大きな反対は出ていないが、署名交付を介する医療機関と患者の関係など不明瞭な論点が少なくなく、検討の余地を多く残している。現段階では、「了承」という手続きは取らず、引続き議論を続ける。
 厚労省が提示した「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」の骨格案は2本立ての制度設計となっている。1つは、「かかりつけ医機能報告制度」の創設、もう1つは、「医療機能情報提供制度」の拡充。この2つの制度により、国民・患者がニーズに応じて、かかりつけ医機能を有する医療機関を選択し、利用できる環境を整備するとしている。
 岸田文雄首相が、かかりつけ医機能の制度整備を求め、現在、全世代型社会保障構築会議においても、議論が行われている。同会議の医療提供体制の検討チームの増田寛也主査(東京大学大学院客員教授)は11月11日に案を出した。全日病副会長の神野正博委員は、「増田案のすべてに同意した上での案なのか」と質問。厚労省担当官は「基本的にはその通り」と回答した。

かかりつけ医機能報告制度を創設
 新たに創設する「かかりつけ医機能報告制度」では、医療機関が、これから明確化するかかりつけ医機能を都道府県に報告する。この報告に基づき、都道府県は、地域におけるかかりつけ医機能の充足状況や、これらの機能をあわせ持つ医療機関を確認・公表した上で、地域の協議の場で不足する機能を強化する具体的方策を検討・公表する。
 神野委員は、「都道府県の地域の協議の場が、地域医療構想の調整会議と同じになると、入院機能の議論と、紹介受診重点医療機関と関連する外来医療の議論と、かかりつけ医機能の議論を行わなければならない。その余力があるか心配になる」と発言した。
 なお、すでにスタートしている紹介受診重点医療機関を明確化するための外来機能報告制度では、医療機関から外来のデータを収集し、医療資源を重点的に活用する外来の割合を踏まえ、地域の協議の場で、紹介受診重点医療機関を決定し、公表することになっている。
 「かかりつけ医機能報告制度」は外来機能報告制度と似ている。ただ、機能の対象が「外来」だけではなく「入院」も含むことや、複数の医療機関で満たす機能が設けられるなどの違いがある。
 報告するかかりつけ医機能としては、高齢者の場合が例示された。
 具体的には、①幅広いプライマリケア等の外来医療の提供②休日・夜間の対応③入退院時の支援④在宅医療の提供⑤介護サービス等と連携─となっている。これらの機能を担う医療機関であることの意向を、地域の協議の場で確認し、かかりつけ医機能を備える医療機関として位置づける。これらの機能は、医療機関単独で提供する場合と、複数の医療機関が連携して提供する場合がある。
 かかりつけ医機能が高齢者対応に限定されているようにみえることには、反対意見が出た。しかし、厚労省は「あくまで例示であり、高齢者に限定したものではない」と回答している。
 神野委員は、かかりつけ医機能が、相談機能など保険診療の枠を超えるのであれば、「その費用負担のあり方について、早急にコンセンサスを得る必要がある」と述べた。一方、厚労省担当官は、「今回の案の医師と患者の関係は、インフォームド・コンセントの範疇と考えており、新たな契約関係を結ぶことは想定していない」と応えている。
 かかりつけ医機能を有する医療機関について、都道府県は、かかりつけ医機能の充足状況を確認した上で、地域の協議の場で、不足する機能を強化する方策を検討し、公表する。例えば、地域で不足する機能を担うことを、既存または新設の医療機関に要請することや、研修や支援の企画の実施、医療機関同士の連携を促す試みなどが例示されている。
 かかりつけ医を担う医療機関になることへの国による支援としては、◇標準的な基準の設定等を通じた研修等の受講の促進◇医療DXの推進など医療情報の共有基盤等の整備◇診療報酬による適切な評価─などが示された。

医療機能情報提供制度を拡充
 現在、かかりつけ医機能については、都道府県が国民・患者に地域の医療機関に関する情報などを提供するための医療機能情報提供制度により、機能を定めている。8項目からなり、それぞれ①日常的な医学管理および重症化予防②地域の医療機関等との連携③在宅医療支援、介護等との連携④適切かつわかりやすい情報の提供⑤地域包括診療加算の届出⑥地域包括診療料の届出⑦小児かかりつけ診療料の届出⑧機能強化加算の届出─となっている。
 しかし、これらの機能に対しては、具体性が乏しい、あるいは具体的だが診療報酬点数であり理解しづらいとの問題が指摘されてきた。また、これらの機能は厚生労働省令で定められている。
 これに対し、厚労省案は、医療機能情報提供制度を拡充し、かかりつけ医機能の定義を法定化するとともに、国民・患者への情報提供・強化を図るものとなっている。かかりつけ医の定義としては、「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」とした。
 その上で、今後の情報提供項目のイメージを示している。例えば、◇対象の別(高齢者、子どもなど)◇医療機関の医師がかかりつけ医機能に関して受講した研修◇入退院時の支援など医療機関との連携の具体的内容─など、国民・患者目線でわかりやすいものに見直す。
 これらを踏まえ、厚労省は、今後のスケジュールを示した。
 かかりつけ医機能報告制度については、2023年度頃に医療法に基づく告示により、方針を明示し、2024~ 2025年度頃に、個々の医療機関からのかかりつけ医機能の報告を受け、地域の協議の場での議論を行うとしている。2026年度以降に医療計画に適宜反映させる。
 医療機能情報提供制度については、2023年夏までに具体的な情報提供項目などを検討し、2024年度以降に医療機能情報の公表の全国統一化を実現し、報告の見直し内容を反映させる。

患者が希望する場合に書面交付
 患者とかかりつけ医機能を有する医療機関の関係は、基本的には、「医師により継続的な医学管理が必要と判断される患者に対して、患者が希望する場合に、書面交付と説明を通じて、かかりつけの関係を確認する」というもの。ただ、これに対しては、委員から位置づけが不明確との意見が相次いだ。
 厚労省は制度の大枠を定めた上で、「医師により継続的な医学管理が必要と判断される患者に対して、患者が希望する場合に、書面交付と説明」を行うことなどに関する具体的な事項を今後の議論で詰めるとの考えを示した。
 神野委員は、書面交付について、診療報酬の地域包括診療料・認知症地域包括診療料の同意書が例示されたことに対し、「患者目線の観点で、これでは不十分。例えば、入退院時の支援であれば、どの医療機関と連携しているかなど具体的な名称も必要になる」と指摘した。

 

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