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ホーム全日病ニュース(2022年)第1023回/2022年12月15日号在宅医療の体制構築の指針見直しを大筋了承

在宅医療の体制構築の指針見直しを大筋了承

在宅医療の体制構築の指針見直しを大筋了承

【厚労省・第8次医療計画検討会】第8次医療計画策定に向け意見のまとめ案も提示

 厚生労働省の「第8次医療計画等に関する検討会」(遠藤久夫座長)は11月24日、「在宅医療の体制構築に係る指針の見直しに向けた意見のとりまとめ」を了承した。第8次医療計画策定に向けた5疾病6事業および在宅医療にわたる全体のまとめ案のたたき台も示された。また、地域医療支援病院については、紹介受診重点医療機関の基準を満たす病院である場合は、原則、紹介受診重点医療機関を標榜することを求めることを了承した。

在宅医療の体制構築の指針見直し
 「在宅医療の体制構築に係る指針の見直しに向けた意見のとりまとめ」では、在宅医療提供体制について、「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」と「在宅医療に必要な連携を担う拠点」を医療計画に位置づけることを求めた。
 積極的役割を担う医療機関としては、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院等をあげた。このため、在支診・在支病の数を指標例に追加した。ただ、医療資源の整備状況は地域により異なるため、それ以外の診療所・病院にも、地域における在宅医療に必要な役割を担ってもらうことを明記している。
 全日病副会長の織田正道委員は、在宅医療に積極的な役割を担う医療機関として、在支診・在支病の数を指標に追加することを評価した上で、「連携を担う拠点」の具体的なイメージを質問した。厚労省担当官は、「『連携を担う拠点』は、人材が集約されている、あるいは普及啓発を行っている実態があり、関係者が集う場所としており、保健所や市が直接その役割を担うことも考えられる。『在宅医療において積極的な役割を担う拠点』は医療機関だが、『連携を担う拠点』は医療機関を含め地域の実情に応じ、さまざまな主体が考えられる」と説明した。
 圏域の設定については、在宅医療の場合、医療資源の整備状況や介護との連携のあり方が、地域で大きく異なることから、従来の二次医療圏にこだわらず、弾力的に設定するとしている。
 織田委員は、「小児の在宅医療は専門性が問われるが、地域でニーズが増えている」と指摘し、圏域設定の考え方を質問した。厚労省担当官は、「小児の在宅医療を提供する医療機関は少なく、高齢者の圏域とは一緒にできない。都道府県には、まずは実態把握を求め、その実態に即した圏域を考えてもらう」と述べた。
 在宅医療・介護連携については、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」が「在宅医療・介護連携推進事業」と同一主体となることを含め、両者の関係を整理することが求められた。このため、在宅医療・介護連携の強化に向けて、介護保険事業(支援)計画の整合性や行政の医療・介護の担当部局間の協議も行うとしている。
 ただ、在宅医療・介護連携が不十分との意見は根強い。全日病会長の猪口雄二委員(日本医師会副会長)は、「医療はどうしても都道府県、二次医療圏、介護は市区町村が中心であり、連携がうまくいっていない。『連携』に向けた強い記載を求める」と要望した。また、連携体制の強化には、地域医療介護総合確保基金の活用が求められるとしつつ、「医療関係は都道府県から申請し、介護関係は市区町村から申請している。一つのことを実施するのに、両方に申請を行わなければならないのは不合理だ。その改善も指針に反映してほしい」と要望した。
 猪口委員はさらに、在宅医療における各職種のかかわりのうち、訪問リハビリテーションの記述について注意を促した。訪問リハビリの対応の方向性では、「医療保険、介護保険における『訪問リハビリテーションを実施している診療所・病院・介護老人保健施設・介護医療院数』および『訪問リハビリテーションを受けた患者数』を指標例に追加する」としている。しかし、訪問リハビリの多くは、訪問看護ステーションの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問リハビリが多くを占めている現状がある。
 このため、この指標を地域で実施されている訪問リハビリの量とすると、「現実とかけ離れた数字」となってしまう。猪口委員は、誤解を生じさせないような工夫を求めた。他の委員からも、訪看の訪問リハビリと別の指標を設けている理由が理解されるような対応が必要との指摘があった。

地域医療支援病院のあり方
 地域医療支援病院については、紹介受診重点医療機関の基準を満たす病院である場合は、地域における協議の場の議論を踏まえ、原則、紹介受診重点医療機関であると標榜することを「外来機能報告等に関するガイドライン」に記載することを了承した。紹介受診を基本とする病院であることが、住民に伝わるようにする対応だ。
 都道府県により紹介受診を基本とする病院の新たな名称である紹介受診重点医療機関が、来年秋以降に公表されることになる見通しだ。紹介受診重点医療機関は、地域医療支援病院のデータを踏まえて、制度設計された経緯があり、紹介受診重点医療機関の基準を満たす地域医療支援病院は8割程度となっている。
 地域医療支援病院や特定機能病院は、紹介受診重点医療機関の基準を満たせば標榜できる。その場合、外来機能の明確化を図る制度趣旨に鑑みて、原則、紹介受診重点医療機関を標榜することを求める。一方、診療報酬の地域医療支援病院入院診療加算と紹介受診重点医療機関入院診療加算は同時に算定できないことになっている。
 また、地域医療支援病院であって、紹介受診重点医療機関の基準を満たさない病院は、地域医療支援病院として地域で担っている機能を、地域の協議の場などで確認する。地域医療支援病院の約2割が、紹介受診重点医療機関の基準を満たさないことは「問題」との意見も出たが、地域の実情により、必要な病院の機能は異なるため、基準を満たすよう働きかけることまでは求めていない。
 ただ、そうすると、地域医療支援病院と紹介受診重点医療機関の違いが不明確となる。紹介受診重点医療機関の基準を決める議論においても、地域医療支援病院のあり方をもう一度議論する必要があるとの意見が相次いでいた。
 現状で、地域医療支援病院の主な機能は、◇紹介患者に対する医療(かかりつけ医等への患者の逆紹介を含む)◇医療機器の共同利用◇救急医療◇地域の医療従事者に対する研修ーとされている。2021年省令改正では、都道府県知事の判断により、感染症対応や災害時対応、情報通信技術を用いた病診連携などの責務が追加できるようになった(下表を参照)。
 今般の改正感染症法等でも「感染症・まん延時に担うべき医療提供」が義務付けられる。これらを踏まえ、地域医療支援病院のあり方を再考することになる。猪口委員は、「早期の議論が必要」と主張。厚労省は来年に検討会を再開するとの考えを示した。

第8次医療計画指針見直し案
 5疾病6事業および在宅医療からなる第8次医療計画策定に向けた意見のまとめ案のたたき台が示された。
 6事業については、検討会の下にある「外来機能報告等に関するワーキンググループ」、「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」、「救急・災害医療提供体制等に関するワーキンググループ」などで議論してきた。5疾病は、健康局での検討結果を踏まえ、議論した結果をまとめている。まとめ案は、「医療計画作成指針」および「疾病・事業及び在宅医療に係る医療提供体制構築に係る指針」等の見直しとしている。
 一方、がん対策推進協議会で議論しているがんの指標や、法律改正が行われる新興感染症発生・まん延時における医療などはそれぞれの進捗を踏まえ、追記する。かかりつけ医機能の制度整備の議論の進捗によっては、外来医療にかかる医療提供態勢の確保に関するガイドラインに関する事項に影響する可能性がある。

 

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