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ホーム全日病ニュース(2023年)第1031回/2023年5月1日号高齢者施設内で対応できる医療のあり方など議論

高齢者施設内で対応できる医療のあり方など議論

高齢者施設内で対応できる医療のあり方など議論

【厚労省・同時報酬改定に向けた意見交換会】高齢者施設・障害者施設等における医療と認知症をテーマに設定

 厚生労働省の「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」の第2回が4月19日に開催された。今回のテーマは、「高齢者施設・障害者施設等における医療」と「認知症」。高齢者施設などにおいて、利用者を医療機関に退所させずに、施設内で対応できる医療のあり方などが議論になった。認知症については、医療機関での認知症への対応向上策やできるだけ拘束を行わないようにする取組みが議論になった。
 「高齢者施設・障害者施設等における医療」では、介護医療院や介護老人保健施設の利用者に、必要な医療が適切に提供される対応が課題となった。常勤医師の配置が義務ではない特別養護老人ホーム、医師の配置が義務ではない特定施設や認知症対応型グループホームでは、外部からの医療提供のあり方がより課題とされた(下図参照)。
 例えば、介護医療院の場合、医療提供が内包されている施設であり、提供可能な医療として、酸素療法を行うことのできる施設が約91%、静脈内注射が約82%、喀痰吸引が84%と高い割合になっている。一方で、退所者の約20%が医療機関への退所であり、そのうち一定の割合が、肺炎や尿路感染症の一般的な疾患であることから、施設ごとで対応可能な医療ニーズに差がある可能性が考えられた。
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、「高齢者施設などへの医療提供は、基本的には、外部に頼るよりも自施設での対応をまず考えるべき。外部から医療提供を行う場合は、在宅療養支援診療所・病院や地域包括ケア病棟を含め、高齢者施設などを地域が面として支える体制が重要」と述べた。健康保険組合連合会理事の松本真人委員も、「人材も医療保険財政も厳しい状況なので、まずは自施設で最大限の医療機能を発揮してほしい」とした。
 高額薬剤が増えていることを踏まえ、基本的な医療提供が介護保険からの給付となっている介護老人保健施設において、抗悪性腫瘍剤など医療保険で出来高算定できる薬剤の拡大を求める意見や、高齢者施設などへの特定行為研修を修了した看護師による訪問看護の積極的な活用を促す意見も出た。
 高齢者施設などの運営基準では、入所者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、協力病院を定めておかなければならない。この協力病院について、特定機能病院などを選んでいる施設が一定数ある。厚労省は、「医療機関の持つ医療機能と、緊急時の相談対応や往診等の医療提供など施設や入所者が求める医療内容が、必ずしも一致しない場合がある」と指摘。多くの委員が、厚労省と問題意識を共有した。
 厚労省からは、医療機関へ退所した場合の退所先の病床種別について、「地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟等を除いた一般病床が大半を占めているが、要介護者に適した入院医療を提供する観点からは、患者の状態に応じた医療機関との連携を進める必要がある」との考えが示された。

老健施設での減薬の取組みを推進
 高齢者施設などにおける薬剤管理については、高齢者施設などに、ポリファーマシーが懸念される利用者が多くいることから、常勤の医師や薬剤師の配置がある施設においては、減薬を含めた取組みをさらに推進し、その他の施設では、薬局などの薬剤師が、医師や施設職員と協働しながら、薬剤管理指導を行うことが課題となった。
 全国老人保健施設協会会長の東憲太郎委員は、施設において、かかりつけ医と連携した減薬などの取組みを評価する介護報酬のかかりつけ医連携薬剤調整加算をあげて、「まだ、算定率は少ないが、薬剤を調整する大事な機会となるので、算定が増える取組みを行っていきたい」と強調した。なお、診療報酬では、かかりつけ医の側で、介護老人保健施設と連携して、情報共有し、減薬が行われた場合を評価する薬剤適正使用連携加算がある。
 感染症対策については、コロナ禍で、高齢者施設などでクラスターが多く発生し、施設内で外部からの医療支援を受けつつ、コロナ患者が療養するという状況が生じた。診療報酬においては、高齢者施設などへの往診やオンライン診療を評価する特例が実施されている。将来的な新興感染症等に備えた感染対策では、平時から高齢者施設などの感染予防の能力向上を図りつつ、施設内で感染が発生した場合の対応として、医療機関との連携を強化する必要がある。その際に、医療機関側が◇感染対策に関する助言◇職員の派遣を行うことが課題とされた。
 委員からは、2022年度診療報酬改定で新設した感染対策向上加算などの施設基準で求められる医療機関間、行政医などとの連携で、高齢者施設などを含めることの提案などがあった。

医療でも身体拘束減らす取組みを
 認知症への対応については、◇医療機関・介護保険施設等における認知症の人への理解や認知症対応力を向上させるための取組み◇多職種で連携しながらのBPSDへの対応や未然に防ぐケアを推進するための方策◇認知機能や生活機能などを適切に評価するための方策◇医療現場等における身体拘束の問題を含め、適切な認知症ケア提供を進めるための方策などが課題となった。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「介護では身体拘束ゼロを目指しているのに対し、医療ではやむを得ないということになっている。療養病床ではさまざまな工夫で対応できるようになってきた。急性期でも対応が必要だ」と指摘した。日慢協常任理事の田中志子委員は、「身体拘束ゼロは根性論ではできない」と述べ、マニュアルを整備し、評価の定まった方法論に基づき実施する必要性を強調した。

 

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  • [1] 2021.7.1 No.989

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210701.pdf

    2021/07/01 ... 「新型コロナウイルス感染症に係る. 予防接種の実施に関する手引き(3.1. 版)」(2021年6月4日改訂)では、「接. 種実施医療機関の医師が接種後も継続.

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