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ホーム全日病ニュース(2023年)第1027回/2023年3月1日号ゾコーバ錠の薬価算定方法の検討結果をまとめる

ゾコーバ錠の薬価算定方法の検討結果をまとめる

ゾコーバ錠の薬価算定方法の検討結果をまとめる

【中医協総会】複数の比較薬を選定し類似薬効比較方式で算定

 中医協総会(小塩隆士会長)は2月15日、新型コロナの治療薬であるゾコーバ錠(塩野義製薬)の薬価収載に伴う薬価算定方法の検討結果をまとめた。複数の比較薬を選定し類似薬効比較方式で算定するほか、市場規模が予測を超えて拡大した場合の薬価引下げに迅速に対応するため、出荷量などの情報に基づき、年間販売額を推計する。
 ゾコーバ錠は、新型コロナの感染状況などにより、市場規模が大きくなる可能性がある。このため、2022年度薬価制度改革の骨子に基づき、通常の薬価専門組織による薬価算定の手続きに先立って、中医協で薬価算定方法の検討を行った。
 基本的には、開発に大きなリスクを伴う感染症分野の革新的な医薬品であるという「イノベーションの推進」という観点と、医療保険財政への影響をできる限り少なくするという「国民皆保険の持続可能性」という観点の両方を勘案して、ゾコーバ錠に限った特例的な対応を検討することになった。
 薬価算定の既存ルールでは、効能・効果が類似する比較薬がある場合に、1日あたり薬価を合わせる類似薬効比較方式がある。ゾコーバ錠には比較薬があることから、類似薬効比較方式を用いる。比較薬の選定にあたっては、新型コロナという対象疾患の類似性と投与対象者の類似性(重症化リスク因子の有無)のいずれを優先するかによって、算定薬価が大きく変動することから、複数の比較薬を選定し、薬価を算定することになった。
 その際、実際に薬価を算定する薬価算定組織に対しては、ゾコーバ錠の臨床的意義や想定される市場規模などを考慮した上で、算定の考え方を明らかにすることを求めた。保険収載に向けては、通常の手続きと同様に、薬価算定組織において審議した上で、中医協総会の了承を経て、薬価収載を行う。
 ゾコーバ錠には、◇重症化リスク因子のない軽症・中等症患者が投与対象となる点で、既存薬とは異なり、対象患者数が大きく異なる可能性がある◇呼吸器感染症に対して重症化リスクに関わらず投与される抗ウイルス薬として、インフルエンザに用いる薬剤が想定されるが、新型コロナの抗ウイルス薬と比較すると、治療薬価が大きく異なる─などの特徴があり、薬価がどの水準で設定されるかが注目される。
 中医協の議論では、ゾコーバ錠が、禁忌となっている妊婦に投与された事例が生じたことが問題視され、適切な患者に限って投与されることの徹底が求められた。このため、添付文書に基づいて、併用薬剤や妊娠の有無などの禁忌事項を確認するとともに、医薬品医療機器等法の承認条件により、有効性・安全性の情報などについての文書による説明と同意取得が求められていることを留意事項通知で明示する。

市場規模を迅速に把握し対応
 ゾコーバ錠の市場規模が、予測よりも大幅に拡大した場合には、市場拡大再算定等により薬価を適正化する必要が生じる。しかし、現在のルールでは、短期間で急激な変動が生じうる新型コロナという感染症の特性から、適切な時期に適正化することが困難である。
 迅速な対応を可能とするため、新型コロナの患者発生状況や投与割合、出荷量などの情報に基づき、年間販売額を推計し、再算定の適否を判断する。推計データによる再算定は、既存の市場拡大再算定のルールのうち、1,000億円超~ 1,500億円以下または1,500億円超という年間販売額が極めて大きい品目の取扱いの特例に限り適用する。
 推計データに基づき再算定を適用する場合は、既存の市場拡大再算定の算定式を用いる。一方で、再算定を行う場合の引下げ率の上限は、予想販売額により影響が異なることから、引下げへの激変緩和措置も考慮した上で、薬価収載時に中医協総会で検討する。
 中医協での審議から再算定後薬価の適用までの期間は、医療機関などにおける薬価改定への対応に要する期間を勘案し、通常の再算定と同様の期間(2~3か月程度)を設ける。ただし、今回の取扱いは、通常の手続きを迅速に行うための措置であることから、推計データ把握から適用まで4か月程度を目途に対応する。
 なお、現行の市場拡大再算定では、年間販売額が極めて大きい品目に対する特例として、◇年間販売額が1000億円超~1500億円以下、予想販売額比が1.5倍以上の場合に10~ 25%の薬価引下げ◇年間販売額が1,500億円超、予想販売額比が1.3倍以上の場合に10~ 50%の薬価引下げ─を実施する仕組みがある。

 

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