全日病ニュース

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中医協総会 先進医療の規制緩和を容認。国家戦略特区に導入

 

中医協総会
先進医療の規制緩和を容認。国家戦略特区に導入

国内未承認薬への適用を抗がん剤から医薬品全般に拡大。審査をさらに短縮化

 

 3月12日に開かれた中医協総会は、「国家戦略特区における先進医療制度の運用」を議題にとりあげた。
 これは、日本経済再生本部で方針化している国家戦略特区で実施すべき規制改革事項の1つに「保険外併用療養の拡充」があることを踏まえ、事務局(厚労省保険局医療課)が、先進医療の運用を見直して国家戦略特区に導入する考えを提案したもの。中医協総会はこの方針を了承した。
 日本経済再生本部の方針(「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」=2013年10月18日に決定)は、医療に関して、「特区内に『国際医療拠点』をつくり、相当の外人患者受け入れを見込む医療機関に以下の規制改革を認める」とし、3点をあげている。
 (1)国際医療拠点における外国医師の診察、外国看護師業務の解禁(2)病床規制の特例による病床の新設・増床の容認(3)保険外併用療養の拡充そして、このうちの「保険外併用療養の拡充」について、「医療水準の高い国で承認されている薬品等について、臨床研究中核病院等と同水準の国際医療拠点において、国内未承認の医薬品等の保険外併用の希望がある場合に、速やかに評価を開始できる仕組みを構築する」とした。
 すなわち、未承認医薬品等の保険外併用を可能にする評価の仕組みを国家戦略特区に導入するという考えである。
 ただし、国家戦略特区における規制緩和の実施には、法改正と法改正以外の方法とがある。事務局は「先進医療制度の見直しは中医協の審議事項である」として、特例実施の適否を諮ったもの。
 未承認医薬品等の保険外併用を可能にする評価の仕組みは、現在、先進医療制度において実施されている。先進医療制度とは、将来的な保険導入のための評価を行なうために、保険診療の対象に至らない先進的な医薬品等と保険診療との併用(評価療養)を認める仕組みである。
 未承認薬の早期承認を促すために、かつて高度先進医療と先進医療とに分れた評価体制を一本化した上、医療上の必要性が高いとされた抗がん剤は外部機関(国立がん研究センター)に評価を委ねるとともに実施医療機関群(臨床研究中核病院、早期・探索的臨床試験拠点、特定機能病院及び都道府県がん診療連携拠点病院)を特定するなど運用の効率化を図り、先進医療を適用するまでの期間短縮につとめてきた。
 この日事務局が示した、特区に導入する先進医療の規制改革案は、抗がん剤にとどまっている対象を国内未承認の医薬品全般に拡大した上で、審査期間を現状の半年から3ヵ月にまで縮めるというもの。
 未承認薬・適応外薬等検討会議の基準と同様、日本と同程度の医薬品等の承認制度をもつ英米独仏加豪の6ヵ国で承認を得ている医薬品を対象とし、審査のさらなる迅速化を実現した上で、実施医療機関も、現行の臨床研究中核病院または早期・探索的臨床試験拠点に加え、個別審査をパスした他医療機関を起用するという構想だ。
 3月の区域決定を目指して「国家戦略特別区域基本方針」を決め、2月25日に閣議決定を得た国家戦略特区諮問会議は、2月に地方自治体へのヒアリングを実施している。
 日本経済再生会議等諮問会議の方針と地方自治体の具体的なアイデアや意向を踏まえて区域と規制改革項目の決定を行なうとしているが、国家戦略特区諮問会議では、区域は「都道府県ないし都市圏を基本とする指定」と、一定の分野については明示的条件で領域を特定した上で特区化する「バーチャル特区型の指定」という2つのタイプに分ける案が有力視されている。
 厚労省は、先進医療の特例的な規制緩和は、「バーチャル特区型の指定」でなく、都道府県や都市圏による「広域的な指定」に導入したいとしているが、いずれにしても、区域指定に合わせ、13年度内には先進医療の要綱と通知の改正を終える予定だ。
 ただし、昨年11月28日に行なわれた公開討論で、規制改革会議は、「保険適用につなげていく併用」ではなく、併用療養の恒常化まさに混合診療そのものを求め、厚労省の考えとの違いをあらためて明確にしている。
 政府が狙う国家戦略特区は、“岩盤規制”を突破する先行モデルの実現であり、特区から全国展開へのプロセスを切り開くもの。
 地方自治体等のヒアリングでどういう規制緩和項目がリストアップされたかは、区域決定まで公表されない。
 先進医療に関して、厚労省の考えどおりの特例措置で進められるのか、他の規制緩和項目ともども、成り行きが注目される。