全日病ニュース

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地域医療構想 地域の関係者が参画する「協議の場」をベースに実現

地域医療構想
地域の関係者が参画する「協議の場」をベースに実現

基金 病院団体は事業計画策定のプロセスに具体的提案をもって参画してほしい

厚生労働省医政局指導課長 梶尾雅宏

全日病第2回定時総会特別講演 「医療提供体制の制度改革について」6月21日

 医療介護総合確保推進法が6月18日に成立した。施行時期は内容によってさまざまであるが、厚生労働大臣による総合確保方針の策定と基金による財政支援については公布の日に施行される。
 病床機能報告制度ほか医療法関係の主な内容は10月1日の施行である。介護保険に関しては第6期介護保険事業計画に向けた制度改正があるので、主な改正は来年4月の施行となる。
 地域医療構想(ビジョン)も2015年4月1日の施行であるが、地域医療構想のガイドラインが今年度中に作られるので、各都道府県が策定に着手するのは15年4月1日以降であり、地域医療構想ができるのは15年度後半以降、実際には16年度あるいは17年度になるかもしれない。
 そして15年の10月に、医療事故調査の制度と特定行為の研修制度、看護師免許保持者等の届出制度などが施行される。
 医療介護総合確保推進法はプログラム法にもとづいて今年の通常国会に提出されたわけだが、来年の通常国会には医療保険の改正法案が提出される。ところで、消費税の増加分が投入される基金の使い道は国民に非常に注目をされている。地域医療再生基金のときは必ずしも地域の意見が十分には反映されなかったということもあり、公平性・透明性を確保するために、基金の計画は自治体だけで作るのではなく、地域の関係者の意見をきちんと聞いた上で作られる。しかも、目標設定をしてもらい、都道府県だけでなく国も評価・確認を行なって毎年の交付額に反映していくことになっている。
 この基金は、補正予算で毎年積み増ししていった再生基金と異なり、法律に基づいて消費税の増収分を充てる制度として創設された。
 全国一律の診療報酬点数に対して、地域ごとの必要性なりに配慮して基盤整備とか色々な仕組みづくりに充てるために、消費税財源のほかに補助金を投入し、診療報酬と組み合わせて地域の医療課題を解決していくということでつくられた。
 初年度の14年度は904億円が確保されたが、その使い道は医療分野に限定され、病床の機能分化・連携、在宅医療の充実、医療従事者の確保や養成等の事業に使われる。そして、その計画を都道府県が策定するわけである。
 すでに国は4月に都道府県に対して第1回目のヒアリングをした。この段階では、各都道府県がどのようなことを考えているのか、あるいは、地域で医療関係者など色々な関係団体から話を聞いているのかという辺りをうかがった。
 次回は、7月の前半か中旬に、その後の検討状況を聞く予定だが、その際に、何が地域の医療課題であると分析しているのか、そして、どういう事業をどういう経過で選んできたのかというようなことを含めてヒアリングする予定である。
 このように、国による基本方針の策定があって、それにのっとった形で都道府県計画が作られ、それを評価して資金配分を決め、そして、都道府県には計画を作り直してもらい、それに対して秋に交付するというスケジュールとなる。
 このプロセスに、病院団体は各地域でこういう事業が必要だということを提案をしていただきたい。黙っていては都道府県も聞きようがない。ただし、漠然とした話ではなく、つまり要望ではなく、この地域にはこういう課題があるからこういうことをしてはどうかという具体的な提案にして、計画に盛り込まれるというようにしていただきたい。
 交付の条件等々は3月にお示ししている。こういったものを参考に、都道府県にこういう事業が必要だということをしっかり提案していただきたい。
 どれだけの額を基金へ持ってくるかは、毎年度、夏の概算要求から年末の予算編成の間に議論をして詰めていくことなるが、その額が増えるかどうかの重要な背景となるのが、基金を使ってこういう事業を行なった結果、地域地域でこうした動きや成果が出ているという実績である。
 では、基金をどう使うのか。先ほど申し上げた3つの分野のうちの病床の機能分化・連携で言うと、各都道府県で地域医療構想が作られ、その実現に向けてこういう事業が必要ではないか、例えば病棟の転換とか不足している機能のための開設とか、そういうことに使っていく。したがって、まずは、地域医療構想を作ることが大事な作業になる。
 地域医療構想は、2025年をターゲットとして、入院・外来の医療需要はどうなるか、それに対応して、現状のままいくとどういう提供体制になるのか、しかし、変わろうとするとどういう提供体制になるのか。そういった情報を地域ごとで共有し、では、どういう役割分担でいくのがいいのか、その役割分担に変わっていくためにどういう助成措置なりをするといいのかといったことを話し合っていく。これは、基本的には地域における自主的な協議をベースに進められる。
 ただし、それだけでいかない場合に、都道府県がペナルティー的なものも含めた行政措置でうまく動かせるようにしていくことになるわけだが、基本的には、その地域をどうつくっていくのかということを話し合う「協議の場」で調整されるので、地域の関係者はそこに参画していただくことになる。  

 

「非営利ホールディングカンパニー型法人」も検討

 次に、最近の動きを紹介したい。6月13日と16日に、骨太方針と成長戦略(再興戦略)の素案そして規制改革第2次答申が出た。この中に医療の課題もさまざま出ている。
 例えば、骨太方針すなわち「経済財政運営と改革の基本方針2014」では医療費適正化計画が取り上げられ、来年の医療保険制度改正の中で見直すとされている。その言葉自体は出ていないが、医療費支出目標を各都道府県の計画に記載すべきといった議論もあり、地域医療構想でどういう目標設定をするかということを前提に、医療費の目標設定を検討すべきではないかということだ。
 今回の改正によって、医療計画は介護保険の計画とリンクするべく5年から6年に改められる。したがって、医療費適正化計画も5年から6年への見直しが検討される。
 去年の6月に一度つくった成長戦略だが、今回の改訂では、効率的で質の高い医療介護サービスを地域ごとにつくっていく手段として「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」を検討すべきとされたほか、医療法人制度に会社法の分割と同様の規定を設けるべきとか、あるいは附帯業務についても、例えば、医療法人敷地内の有休地に介護関係の事業所の賃貸をできるようにすべきではないかとか、あるいは、社会医療法人の認定要件は地域ごとに設けることを考えるべきではないかなど、色々と提起されている。
 規制改革の答申にも医療計画に関係する論点が出ている。例えば、在宅専門の診療所、特養における医療、あるいは、一定規模以上の医療法人には一般法人と同様に外部監査や理事長等の責任範囲を明確化などを考えるべきではないか、といった具合だ。
 これらの課題は今月中に閣議決定がなされ、いつまでに検討せよというスケジュールが示されよう。医療提供体制の改革は大体今回の法律で大きな方向性が示されているので、それに沿った形で検討を進めていけば対応は可能であり、新たな制度改革が要るという話にはならないだろう。
 医療法人にかかわる論点は、6月27日に再開される「医療法人の事業展開に関する検討会」で詰めていく。その中で、医療法人間の合併と権利の移転に関する制度等の見直しという課題については、別途、必要な制度的措置を行なうことになろう。
 法案審議の中で、一定規模の医療法人はインターネットで財務諸表を公告する必要があるいう提案があった。これも、今後、検討していくことになる。これらとあわせて、「非営利ホールディングカンパニー型法人」についても議論していく。親法人とは何をする法人なのか、また、どういう法的要件とするか。あるいは、法人を社員とする案件をどう考えるか、非営利との関係をどう判断するか、どういう地域や単位で事業をするのか、透明性や適正性をどう担保していくのかなど、論点は多岐にわたる。
 この「非営利ホールディングカンパニー」という仮称だが、我々はそういう名前で制度をつくろうと思っているわけではない。では、実際に制度化したときにどういう呼称にするのか。これは結構大事な問題であり、中身にふさわしい名前をつけたいと思っている。
 基本的には、親法人が大方針を決めてメンバーの法人はそれに従う。その上で、各メンバーがそれぞれの事業を展開していく。そういった形が円滑に営まれる仕組みを考えていくということである。
 この4月で225に増えた社会医療法人についても、認定要件等を検討していくことになる。また、新たな基金だけでなく、地域医療構想や医療事故調査の仕組みなど、ガイドラインを策定するという重要な作業も目白押しである。
 こうした作業に色々とご意見をいただきたいところであるが、同時に、ぜひ、地域地域の現場で都道府県にもしっかり注文をつけていただき、都道府県の職員を指導するぐらいの気持ちで病院団体としての識見を示していただければと思っている。