全日病ニュース

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美原委員に同調、「Ⅲ群のあり方を見直すべし」の声相次ぐ

美原委員に同調、「Ⅲ群のあり方を見直すべし」の声相次ぐ

【DPC評価分科会】
基礎係数の配分比重にも疑問が。Ⅰ群を含め医療機関群見直しの可能性強まる

 6月23日に開かれた診療報酬調査専門組織DPC評価分科会は、(1)診断群分類点数表の見直しに係る検討課題等と(2)医療機関群のあり方等についてをテーマに、次期改定に向けたDPC制度検討の最初の議論に着手した。
 (1)の「診断群分類点数表の見直しにかかわる基本方針等についてあらかじめ整理を行なう必要がある」として、事務局(厚労省保険局医療課)は、①国際疾病分類改正への対応、②重症度を考慮した評価手法(CCPマトリックス)への対応、③点数設定方式Dと短期滞在手術等基本料3のあり方に関する議論、の3点に関する検討を求めた。
 ①は、WHO勧告にもとづいてICD-10が現在の2003年度版から2013年版に改訂されることへの対応をどうするかという問題である。コードの削除50、コードの新設185、コード名の変更121(以上がWHO勧告による)、そして、日本医学会が定める用語に基づく用語適正化等545ヵ所と大幅な変更となる。ICDにかかわる改訂は社会保障審議会統計分科会の疾病・傷害及び死因分類部会での審議がすでに終わり、7月に厚生労働大臣宛に答申される予定。
 ただし、法的には統計法(総務省)の管轄であるため、総務大臣から統計委員会への再度の諮問・答申を経て、来年1月1日付のICD告示一部改正で2013年版の法的根拠が定まり、1年以上の周知期間を経て国内適用という流れになる。
 2013年版の採用によって、例えば、インスリン依存性糖尿病は1型糖尿病、インスリン非依存性糖尿病は2型糖尿病などの名称変更だけでなく、腎不全は急性腎不全と慢性腎臓病とに分けられて後者に病期別分類が導入されるなど細部にわたる変更が生じる。
 したがって、コーディングのためにICD10対応標準病名マスターを改訂すだけにとどまらず、統計処理上の対応から、例えば、がん登録にも様式や表記上の変更が生じるなど、様々な影響が生じる。
 伏見委員(東京医科歯科大学院教授)は「場合によってはコード自体が変わる可能性もある。そのための調査も必要ではないか」と懸念したが、事務局も、16年度あるいは18年度いずれの改定で対応することになるか、まだ何とも言えない」と、判断を控えている。
 ②のCCPマトリックス(CCPM)については、研究班を率いる伏見委員が重症度を考慮した評価の設計手法の概要を説明するとともに検討すべき点を提示した。
 病態・重症度の違いを適切に評価し、分類を精緻化する必要があるが、分類数をこれ以上増やすことはできないという制約がある。
 伏見委員は、手術処置と副傷病等の組み合わせにもとづく医療資源必要度分類(CCPM支払分類)を別途作成し、その分類対応表を現行の樹形図分類と対応させることで、樹形図の分岐にしたがって分類を増やすことなく、医療資源必要度に大きな影響を与える手術・処置をより重点的に評価することが可能となると、評価手法の概要を説明。
 その有用性を確認するために、比較的症例数が多く、現行の分類では課題のある部分を先行的に検討してはどうかとして、肺炎、糖尿病、心不全、脳血管障害、慢性関節リウマチ、先天性心疾患などを部分的試行の対象にあげた。
 委員からは、アップコーディングに使われないか、あるいは看護必要度を反映してはどうかといった質問が出た。これに対して伏見委員は「看護必要度は現在検討対象としていない」と答えた。
 これに対して、美原委員(美原記念病院院長・全日病常任理事)は、認知症を例に、「マンパワーを要する疾患の評価はどうするのか」と質したところ、伏見委員は「認知症を伴うと在院日数が伸びるというデータがある」と答え、“手間のかかり具合”は重症度とは別の指標で評価されるという認識を示した。
 これに関連して河野委員(千葉労災病院長)は「認知症や合併症をどうするかというのがDRGに向けた課題だ。そうしたときにCCPの評価手法は重要な価値をもつのではないか」と指摘。
 これを受け、伏見委員は「CCPMを行なう中でDRGとDPCの比較が可能となる。その結果、例えばD方式を選択制で導入するといったDRGの拡大も考えられる」と、DPCをDRGに近づける上でCCPMが重要なツールとなることを示唆した。
 ③の点数設定方式Dと短期滞在手術等基本料3のあり方に関して、事務局はDPC包括との整合性を探りながらも両者の対象の拡大を志向している。
 12年度改定で試行的に導入された点数設定方式Dは在院日数の短縮に寄与することが実証され、今改定でも適用拡大された。一方、今改定で導入された短期滞在手術等基本料3 はほとんどの病院が対象であり、DPC病院ではDPC算定より優先される。
 いずれも「1入院あたりの包括支払に近い」制度だが、事務局は論点として「短期滞在手術等基本料3・点数設定方式Dの対象とすべき手術・検査等(について検討)」を提示する一方、短期滞在手術等基本料3に関しては、「DPC制度における短期滞在手術等基本料3を算定する患者データの取り扱い」を検討するとともに短期滞在手術等基本料3とDPCとの整合性を高めるため、「MDC毎作業班で短期滞在手術等基本料3とDPC14桁コードを1対1で対応させる観点等も含めた診断群分類の見直しを行う」ことを提案した。
 この問題に対して、委員からは「DPCのデータ分析から短期滞在手術等基本料3の患者のデータがなくなる」と指摘、対応策を求めた。事務局は「EFファイルで捕捉できるようにしている」と答えたが、データ提出に該当しない病院もあることから「事務局の考えを次回示す」とした。

 

「Ⅲ群独自の機能評価係数があってもいい」

 もう1つのテーマである「医療機関群のあり方等について」で、事務局は検討課題を5点に整理した(別掲)。
 議論の冒頭、美原委員(写真)は「医療機関別係数の中で基礎係数の割合がきわめて大きく、その比重が適正であるかを考えざるを得ない。しかも、Ⅲ群には種々の機能を持つ病院からなっているにもかかわらず、それを平均化するというのはアンフェアではないか。ⅡとⅢを分ける必要があるのかという意見もある。Ⅱのあり方を含め、群分けのあり方そして基礎係数のあり方を見直してはどうか」という問題意識を披露した。
 この提起に、藤森委員(東北大学大学院教授)は「基礎係数の割合を下げ、その分を機能評価係数に回してはどうかという考え方なのか」と確認を求めたところ、美原委員は、「私はその考え方がいいと思う。それが(がんばっている病院の)インセンティブになる」という見解を表明した。
 こうしたやりとりに、相川委員(慶應大学名誉教授)は「それに私も賛成だ。少なくとも次の改定ではⅢ群の体制は維持すべきと考えるが、Ⅲ群の枠内で機能評価係数をもって調整していく必要がある。とくに、専門病院には専門性に重点をおいた評価を考えるべきではないか」と述べ、美原委員に同調した。
 美原委員の提起に、樫村委員(手稲渓仁会病院副長)も同調。金田委員(社会医療法人緑壮理事長)は「がんばっているところを評価してほしいというのはその通りだ」と賛同した。
 瀬戸委員(東大大学院教授)は「Ⅲ群なりの機能評価係数があってもいいかもしれない」と踏み込んだ意見を表明した。
 一方、Ⅰ群に関しても、「大学病院本院という括りは無理がある」「Ⅰ群を解体しろとまでは言わないが、大学病院をレビューしてその再編に取り組むという考え方もある」といった意見が示され、分院に機能を移している本院が少なくないために機能実績のばらつきが大きくなっているⅠ群に対する分科会の評価が変わりつつあることをうかがわせた。

【医療機関群のあり方に関する論点の整理】

(1)医療機関群および基礎係数・機能評価係数Ⅱの基本的な考え方の整理
 これまでの診療報酬改定の経緯や、医療提供体制全体の見直しの方針等を踏まえ、医療機関群と、基礎係数・機能評価係数Ⅱによる医療機関の機能評価のあり方についてどのように考えるか。
[考え方]
 「基礎係数」および「機能評価係数Ⅱ」は、医療機関群別の評価となっており、医療機関群の考え方は、それぞれの医療機関別係数のあり方と共に検討する必要がある。
(2)Ⅰ群のあり方について
 大学病院本院を一律にⅠ群として評価することについてどのように考えるか。
[考え方]
 大学病院本院の中には、病院によって地域において担う機能が様々であること、また分院に機能を移している病院等があることから、診療実態のバラツキが大きいのではないかという指摘がある。
(3)Ⅱ群のあり方について
 Ⅱ群の基本的な考え方「Ⅰ群に準じる病院」についてどのように考えるか。
[考え方]
 Ⅱ群の基本的な考え方については、医療提供体制全体の見直しの方針等を踏まえ検討する必要がある。
(4)Ⅲ群のあり方について
 Ⅲ群を細分化すべきか。あるいは、細分化せず機能評価係数Ⅱで評価する場合、どのような視点があるか。
[考え方]
 Ⅲ群の中にも規模が小さくても、専門性の高い高度な医療レベル、医療の質を持った医療機関があり、必ずしも診療の科目数が多ければレベルが高いというわけではないことを踏まえ、見直しをしていくべきではないかという指摘がある。
(5)激変緩和措置のあり方について
 激変緩和措置は現行のまま継続すべきか。継続すべきでない場合、どのような対応が必要か。
[考え方]
 当該病院の地域医療における位置づけや診療内容等を踏まえ対応を検討する必要がある。