全日病ニュース

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10対1病院の進路選択/地域包括ケア入院医療管理料1を届出

2014年度改定への対応― 会員病院の報告
10対1病院の進路選択/地域包括ケア入院医療管理料1を届出

特医総管減算で大幅減収。急性期だけでは運営が困難

2単位平均というリハ要件に疑問。在宅からの患者に対するリハ提供に支障も

医療法人財団興和会右田病院 院長 右田隆之

 右田病院が立地する八王子市は人口約56万人で、市内には35前後の病院があり、その内、東京医科大学八王子医療センターと東海大学付属八王子病院の2つの大学病院が中核機能を担っています。
 東京都休日全夜間診療事業に参画する指定二次救急医療機関は9つあり、すべて200床未満の中小病院です。同事業において、これら中小病院が救急車受入れ件数の約75%以上を占めています。
 右田病院は今年で創立95周年を迎え、昭和30~40年代に竣工した旧病院建物が老朽化著しく、未耐震でもあったことから、医療施設耐震化緊急整備事業補助金を受けて、一昨年の平成24年に新築移転を果たしました。新築に際しては、患者療養環境や今後の医療政策を勘案して、病床面積を療養病床並みの8m2を確保しました。
 当院は戦前から八王子の救急医療に携わり、現在は二次救急指定を受け、年間約3,500件の救急車搬送を受け入れています。
 診療の柱は大きく3つあり、救急からの外傷や消化器疾患に対する外科診療と、乳癌や肺癌の検診から治療までの専門医療、そして後述のごとく高齢者医療です。
 許可病床数82床の病床は一般病床10:1のDPC準備病院で、昨年9月のDPC届出期限の時点で、法改正と診療報酬改定の動向が不明瞭なことから、対象病院への移行を控えることにしました。7:1の届出は積極的に考えていながら、看護師の人員不足で72時間の要件算定に不安があり、控えておりました。
 平成25年度の病院稼働状況は、年間病床稼働率90.3%、平均在院日数18日、年間外来患者数1日平均171名です。
 近年の高齢者の増加に伴い、高齢者救急の受入れが全国的に課題となっています。
 すなわち、複数疾患を有し病態が複雑化かつ重症化しやすいこと、ADLの維持が困難なことなどの理由から、在院日数が長期化することが問題となりがちで、更に家族の精神的体力的理由(いわゆる介護疲れ)や介護・在宅療養環境の未整備などによるところも大きく、診療とは異なる次元でも入院期間の長期化が余儀なくされている一面もあります。
 当院においても、急性期後(post -acute)の退院調整が捗らず、平均在院日数はここ数年で2-3日長期化しています。
 この点を解消すべく、近隣の介護施設などからの診察依頼は積極的に受け入れる一方、往診にいくことで速やかな退院調整を行えるように連携をとってきましたが、今回の改定における特医総管の大幅減算は当院にとって大きな減収要因となりました。在宅療養支援病院の届出までして体制を整えたにも関わらず、非常に残念です。
 減収対策として、病床稼働を上げる方針を打ち出すにあたり、急性期一般病床だけでは退院調整が困難なため、その対策として、今回改定で創設された地域包括ケア入院医療管理料1を届出しました。
 平成25年度実績を今回改定の基準に合わせて算定すると、在宅復帰率78%、重症度・医療看護必要度16%であり、当該施設基準の取得は十分可能と判断しました。
 そして救急車搬送を損なわないような10:1病床と地域包括ケア病床数を割り出すために、疾病分析を実施して、当院が持つべき地域包括ケア病床数の算定を行いました。
 地域包括ケア病床の日当点を約30,000円に設定して退院患者疾病データを集計したところ、入院日当点が30,000円を下回る在院日数は16日以降で、在院日数16日を超える症例の上位に大腿骨近位端骨折(手術有)、脊椎圧迫骨折、肺炎が該当し、在院日数や日当点、在宅復帰の可能性などから、地域包括ケア病床の病床数を4床部屋4室の計16床で届出することにしました。
 届出直後の現状では、地域包括ケア病床への転床対象疾患は上記の整形外科疾患に偏ってしまい、重症度・医療看護必要度の10%要件をクリアすることが難しくなっています。
 また、高齢者の肺炎患者に対してはADL維持を図るための廃用症候防止のリハビリテーションが必要と考えますが、急性期病床からの転換でリハビリテーション2単位平均を求めることは、在宅復帰を求めすぎるあまり、過剰な要件に思えます。
 国の意図するところは理解できますが、地域包括ケア病床の機能として、在宅からの急性増悪患者の受け入れを想定すると、この要件のためにリハビリテーションを受けにくい患者が出てくる可能性があり、質の低下を招くものと考えます。ご一考願いたいところです。
 今回の診療報酬点数改定の目的は、一括法案の制定と合わせて病床機能分化を強く推し進めることにあります。
 しかし、先述にある通り、患者さんの経済的理由や家庭環境による要望などで退院や転院が捗らない事例が多い実状をご理解いただき、医療の現場に本質から外れた負担が掛からないような政策誘導をお願いしたものです。
 今後、今まで以上のきめ細かい計画的な病院運営を心掛け、他施設との連携を密にとり、地域包括ケアシステムの一翼を担っていきたいと思います。