全日病ニュース

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一般病棟の調査 患者像把握めぐり医療課と委員の認識に齟齬

一般病棟の調査
患者像把握めぐり医療課と委員の認識に齟齬

【入院医療等の調査・評価分科会】
一般病棟長期患者を安易な状態像で療養病棟に括ることに複数の反対意見

 6月18日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」は次期診療報酬改定に向けた2014年度改定項目に関する調査の実施方針について検討、つごう8テーマ(別掲)にわたる調査の実施概要を決めた。
 8テーマのうち、経過措置期間を伴うために実施がずれ込む特定除外制度の廃止や一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」ほかの一般病棟入院基本料等に関する見直し項目は15年度の実施となるが、それ以外の6テーマは14年度に実施される。
 入院分科会の調査方針は6月25日の診療報酬基本問題小委員会と中医協総会に諮られ、いずれも承認され、実施が正式に決まった。
 6月18日の会合で、厚労省保険局医療課の一戸課長補佐は、一般病棟の調査については13対1や15対1も対象にするなど、項目の内容に応じて、できるだけ横断的調査としていく考えを明らかにした。
 また、必要な項目については追加調査を実施するとともにデータ提出加算から得られるデータも活用して実態捕捉につとめる意向を表明した。
 今改定で創設された地域包括ケア病棟には急性期後と在宅急変の患者が混在する。神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)は、「サブアキュートとポストアキュートの別を明らかにしなければ地域包括ケア病棟の実態は把握できない」と工夫を求めた。
 これに対して、一戸補佐は「調査票の中で患者の入院経路について検討する」考えを表明した。
 神野委員は、また、7対1を追われた特定除外患者の所在を把握する必要に触れるとともに、障害者病棟や特殊疾患病棟等一般病床の長期入院を取り上げ、状態像だけでは患者の医療必要度が正確に捕捉できないと指摘、障害者自立支援の指標等を加味するなどの工夫が必要と主張した。
 これについて、他の委員からは「看護必要度の調査を障害者病棟、特殊疾患病棟、療養病棟にも行なえば病院の包括的な実態が分かる」とする声もあがったが、一戸補佐は、「ADLや医療区分、場合によっては介護必要度までを病棟横断的に調査したいと考えている」と、すでに過去にも実施されている調査手法で対応可能とする認識を示した。
 こうしたやりとりに、池端委員(医療法人池慶会理事長)は、療養病棟の立場から、「神野委員の意見に賛成だ。障害者や特殊疾患の患者の状態像は医療区分や看護必要度だけで判断するべきではない」と主張。
 長期患者が一般病床から追われる結果、療養病棟に在宅復帰の見込みが立たない特殊な病態の患者が増えてきたことを明らかにした上で、「状態像が同じだから療養病棟に括ろうとする単純な発想はやめてほしい。長期間にわたって医療を提供する病棟は絶対に必要である」と、障害者病棟や特殊疾患病棟の縮減に反対した。
 一方、宇都宮医長課長は患者像の指標に言及し、「看護必要度、医療区分、ADL、障害者総合支援法による障害支援区分など様々なものがあるが、それらの指標を転用すれば調査しなくても必要なデータを集めることができるのか」と疑問を呈した。
 その上で、「回収率との兼ね合いもあり、医療機関側がとりまとめやすく、かつ、今後の検討に資する調査としたい」と述べ、患者像把握に精緻な指標を用いることに反対した。
 池端委員は、また、次期改定で医療区分と看護配置基準の見直しが議論される可能性をたずねた。
 これに対して、一戸補佐は、介護療養型の廃止や医療法上の療養病棟看護配置経過措置の終了(2018年度末)を控えて、「どういう対応が必要かということに資する調査とする必要はあるが、その対応が次期改定なのか次々期となるのかという問題があり、それに併せて医療区分の見直しも検討するのかということになるわけだが、いずれも調査結果をみて考えることになろう。ただし、今現在の事務局は、何も考えていない」と述べるにとどまった。

■「入院医療等の調査・評価分科会」の調査方針

□2014年度の調査テーマ
◎入院医療の機能分化・連携の推進について
(1)一般病棟入院基本料等の見直し(その1)
調査対象/一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、救命救急入院料等を届出している医療機関等
調査内容/①90日超患者の患者像、患者の割合や退院支援の実施状況等動向、②重症度、医療・看護必要度の分布や基準を満たす患者割合の状況、③平均在院日数、受入先・退院先の状況や医療機関の動向、④短期滞在手術等基本料3の算定状況、診療状況 等
(2)総合入院体制加算の見直し
調査対象/DPC病院、総合入院体制加算等を届出している医療機関等
調査内容/総合入院体制加算の算定状況、診療状況 等
(3)有床診療所入院基本料の見直し
調査対象/有床診療所入院基本料等を届出している医療機関等
調査内容/有床診療所入院基本料の算定状況及び有床診療所の担っている機能等
(4)地域包括ケア病棟入院料の創設
調査対象/回復期リハ病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料等を届出している医療機関等
調査内容/①地域包括ケア病棟入院料、回復期リハ病棟入院料を算定している患者像の比較、②地域包括ケア病棟入院料等を届出している医療機関の機能、患者像、受入先・退院先等の状況及び医療機関の動向 等
◎医療資源の少ない地域に配慮した評価の影響とその在り方について
調査対象/地域に配慮した評価の対象となった医療圏にある医療機関等
調査内容/①12・14年度改定により評価した項目の算定状況、改定後の医療機関の動向、②対象となる2次医療圏における外来・入院・在宅医療等の状況 等
◎療養病棟、障害者病棟、特殊疾患病棟等における長期入院も含めた慢性期入院医療のあり方について
調査対象/一般病棟入院基本料、療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料、特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院基本料等を届出している医療機関等
調査内容/①療養病棟入院基本料等を算定している医療機関における患者像、在宅復帰機能強化加算の算定状況及び受入先・退院先の状況、②障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院基本料等を届出している医療機関における患者像、③一般病棟、療養病棟における超重症児(者)等の算定状況、患者像 等
□2015年度の調査テーマ
◎入院医療の機能分化・連携の推進について
(5)一般病棟入院基本料等の見直し(その2)
調査対象/一般病棟入院基本料を届出している医療機関等
調査内容/入院期間が90日を超える患者の患者像、患者の割合や退院支援の実施状況等の動向 等
(6)特定集中治療室管理料の見直し
調査対象/特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料等を届出している医療機関等
調査内容/特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料等を届出している医療機関における患者像 等