全日病ニュース

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厚労省 親法人に持分なき社団、子法人に非営利法人を想定

厚労省 親法人に持分なき社団、子法人に非営利法人を想定

【医療法人の事業展開等に関する検討会】
親法人子法人の過半数を確保。「1社員1個」の議決権も柔軟運用―厚労省が提案

 6月27日に約3ヵ月ぶりに開かれた「医療法人の事業展開等に関する検討会」は、日本再興戦略改訂版(6月24日閣議決定)で「年内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年中に講じることを目指す」とされた非営利ホールディングカンパニー型法人制度(非営利HD法人)の具体的な議論を開始した。
 事務局(厚労省医政局指導課)は、「最低月1回、必要ならば数回開催し、年内に結論を出す」と、早期のとりまとめを要請した。
 事務局は、非営利HD法人(親法人)に持分のない社団法人を、社員法人(子法人)に持分ある医療法人を含む非営利団体を想定した上で、親法人が円滑に運営されるために必要な制度的措置をどう図るかと提起。
 ①親法人と子法人における経営方針共有の仕組み、②子法人における経営自主性の確保、③グループ内の資金融通のあり方、④親法人の地域要件、⑤親法人の非営利性担保と透明性・適正性の確保、などを論点にあげた。
 一方、今村委員(日医常任理事)は、医療法人の一類型として「統括医療法人(仮称)」を創設。医療法人、医療施設等を開設する社会福祉法人、個人立病院または個人立診療所の開設者が社員となって地域医療機関の有機的連携を図る、という構想を提案した。
 この日は初回とあって議論は総花的なものとなったが、親法人における議決権について、事務局は「1社員1票では出資へのインセンティブは減るだろう。1社員1票でやる場合も、例えば、例外を設けるとか、一定の案件のみに限るとか、柔軟に考えることもできるのではないか」と、1社員1個の議決権にこだわらない考え方を示した。
 持分なしを堅持するものの、議決権の面で多数支配の可能性は残してインセンティブとするとも受けとれる論法に、委員からは、「非営利非配当と出資は矛盾しないか。色々みえない話だ」という声もあがった。
 検討会は併行して医療法人の分割や社会医療法人の要件見直し等も検討するため、非営利HD法人をめぐる議論はタイトなものとなることが予想される。  

非営利HD法人制度に係る主な論点(要旨)

□非営利HD法人の検討の方向性(4月2日の資料から)
 ①社会にどう貢献をしていくのかを明確化した「理念」を策定し、共有する。
 ②社員法人はHD法人が行う意思決定に従って法人運営を行うよう、必要なガバナンスの仕組みを設ける。(社員法人の社員総会または評議員会の過半数をHD法人やその理事または社員が占める)③社員法人のヒト・カネ・モノを有効に活用する。(非営利法人の間で資金の融通ができるようにする。HD法人が介護事業等の株式会社に出資できるようにする)
□法人の在り方に関する論点(6月27日の資料から)
(1)社員法人の独自性を保証しつつ、HD法人の意思決定等を制度的に共有する仕組みをどのように作っていくか。
①社員法人がHD法人の理念を共有する旨の意思決定を行うことをHD法人の要件とするとともに、職員に理念の浸透を図る旨の努力義務を整備してはどうか。
②HD法人の意思決定は、社員法人の運営の一つ一つに口を出すものではなく、地域の医療・介護提供体制の構築に必要な大方針を決め、その範囲で社員法人が自主的に運営できるようなものとすべきではないか。
③HD法人の意思決定として、法人の規模に応じて債務を負担することや中核病院等の機能・病床を制限するなどが考えられる。HD法人の意思決定が柔軟に行えるようにするためにどのような仕組みを設けるべきか。
④HD法人の意思決定のうち社員法人が共有すべきものは通知する手続などを整備してはどうか。
⑤社員法人がHD法人の意思決定に従って運営することを担保する仕組みとして、どのようなものが考えられるか。
⑥社員法人の独自性を保証するために、HD法人から脱退できるようにしてはどうか。
(2)HD法人と社員法人の間で資金の融通を行う仕組みをどのように作っていくか。
①HD法人と社員法人の間及び社員法人同士の間の資金融通手段は出資、融資、寄附及び債務保証としてはどうか。(HD法人は社員法人に対する資金融通のみならず、介護事業を行う会社や医薬品等の共同購入、シーツクリーニングを一括で行う会社設立の出資も可能とする。他に追加すべきものがあれば、個別に検討した上で追加してはどうか)②HD法人や社員法人は、融通した資金が個人に帰属してしまうことのないよう、法人の剰余金となり得る寄附や債務免除により法人の剰余金となり得る融資及び債務保証は、社員法人である持分あり医療法人に行うことはできないとすべきではないか。
③医療法人等の剰余金が他法人の収益事業に使われるなどのないよう、資金融通の目的は「地域の医療又は介護の充実」に限定することが必要ではないか。
(3)HD法人は非営利法人(非営利性が確保された社団法人)となるよう、以下の点について必要な整備を行うべきではないか。
①HD法人が社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しないものとすべきではないか。
②HD法人の社員は剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を有しないとともに出資義務を負わないこと及び法人財産に対する持分を有しないこととすべきではないか。法人もHD法人の社員になることができるが営利法人はなることはできないとすべきではないか。
③HD法人の社員法人は非営利法人のみとすべきではないか(配当禁止が法定されている持分あり医療法人も含む)。
□事業の在り方等に関する論点
(4)HD法人に地域要件を設けることをどう考えるか。地域要件を設ける場合、地域の範囲をどう考えるか。
(5)HD法人が制度の目的等に従って設立・運営されることを確認する仕組はどのようなものが考えられるか。
(6)比較的規模が大きくなるHD法人の透明性と適正性の確保を図るべきではないか。
【HD法人の運営の透明性と適正性を図る主な仕組み】
○運営の透明性
 貸借対照表等の官報、インターネット等による公告、公認会計士又は監査法人による外部監査の実施
○運営の適正性
 監事の権限の明確化及び独立性の担保、一定割合以上の社員の請求による業務執行に関する検査役の選任、社員による理事の行為の差し止め、理事等のHD法人に対する損害賠償責任等の明確化及び当該責任の免責に関する手続の明確化、HD法人の組織に関する訴えなど訴訟や和解及び非訟事件に関する手続の明確化
(7)仮称であるHD法人制度の正式名称はどのようなものがよいか。
□非営利ホールディングカンパニー型法人の活用モデル
●自治体中心型/都道府県や市町村が呼びかけてHD法人を創設。必要に応じて、自治体が出資したり、自治体幹部を理事とするなど、適宜、関与することも可能。
●中核病院中心型/社会医療法人や大学病院など急性期医療等を担う中核的な法人が、回復期や在宅医療を担う医療法人や介護を担う社会福祉法人に呼びかけてHD法人を創設する。
●地域共同設立型/都道府県医師会や地区医師会が中心となって区域内の医療法人や社会福祉法人等に呼びかけてHD法人を創設する。