全日病ニュース

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地域医療構想GL案を了承。3月内に省令・通知。4月から策定作業に

地域医療構想GL案を了承。3月内に省令・通知。4月から策定作業に

療養病床の入院受療率目標設定に特例(達成年度を2030年度とする)を追加

 3月18日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は、この4月に施行される地域医療構想策定ガイドラインに関する報告案を基本的に了承、細部にわたる文言の修正を遠藤座長(学習院大学経済学部長)に委ねた。
 ガイドライン案は検討会報告書として3月31日に公表された。厚労省はすでに地域医療構想に関する省令案の意見募集を3月17日に終えている。
 厚労省は、意見募集の結果も踏まえ、検討会報告書をGLとして策定。そこに盛り込まれた「構想区域の設定に関する基準」「将来の病床数の必要量の算定方法」「構想区域の設定に関する基準」を省令として公布するとともに、GLの通知発出を急ぎたいとしている。( 4・5面に検討会報告書の概要、6面に地域医療構想に関する講演要旨を掲載)

 2025年の医療需要に応じた病床の必要量と医療提供体制の姿を示す地域医療構想は、医療計画の一部として構想区域ごとに策定されるが、①病床の必要量を医療機能区分ごとに示す、②構想達成に向けた取り組みをまずは医療機関等の協議に委ねる、③取り組みを支援する手段として医療介護総合確保基金が使えるという点で、これまでの医療計画と異なる。

 しかも、構想の策定だけでなく、医療機関等の協議にも厚労省等から詳細なデータが提供されるため、それらと毎年の病床機能報告を活用することで、区域における医療機能の過不足を読み取ったり、自院資源を他とを比較した“ベンチマーク”ができるなど、エビデンスにもとづいた地域と自院の中長期戦略を立てることが可能になるという点でも、地域医療構想の実効性と影響力は医療計画と大きく違う。

 そうした、地域単位で機能分化・連携を進める戦略マップとなる地域医療構想が、恣意的あるいは旧来のやり方で策定・運用されることがないよう、標準的な手法を整理したのが今回のGLだ。

 その構成は、大きく、(1)策定のプロセス、(2)策定後の構想実現に向けた取り組み、(3)病床機能報告制度の公表の仕方からなり、(2)の中に、需要と必要病床数の推計方法および調整会議の運営方法、さらには、協議の合意内容等に反した場合の都道府県知事の権限などが、具体的に示されている。

 3月18日の検討会は当初2月26日に予定されていたが、全国知事会からとりまとめ案に対する強い申し入れがあったため、急遽3週間延期された。

 全国知事会が懸念したのは、前回検討会(2月12日)に示されたGL案に記された、2025年の療養病床必要量の推定方法に、入院受療率については、地域差を解消しつつ全国的に逓減させるかたちで2025年の目標を設定するという点で、この目標設定では、地域によっては療養病床の必要量が現在より大幅に減るため、混乱を招きかねないというもの。

 申し入れを受けた事務局(医政局地域医療計画課)は、知事会と3回話し合った結果、当該の推定方法に「入院受療率の目標に関する特例」を設け、要件に該当する区域に関しては「目標の達成年次を2025年から2030年とすることができる」と、一定の緩和に応じた。

 これ以外にも、事務局は、医療機能区分の区分けの指標に用いる出来高点数のうち、回復期と慢性期・在宅医療等の境界となるC3について225点としつつも、「ただし、境界点に達してから退院調整を行なう期間の医療需要を見込み175点で推計する」と柔軟な考え方にした。1日の点数が225点から175点までは退院の調整幅とみて、実際の推定は175点以下の患者数をもって慢性期・在宅医療等の需要と推定するという修正だ。

 また、「第7次医療計画と介護保険事業(支援)計画に向け、地域の医療需要に円滑に対応できる人員配置等を調えることの検討を進める」と書き加え、医療機能区分に沿った人員配置を定める方向性を示唆。

 さらに、「医療審議会は、地域医療構想が医療計画に含まれることを踏まえた委員を選出する」とも明記、医療審議会に病院団体や保険者等調整会議の構成員を加える考えをのぞかせた。

 これら以外にも、前回検討会の案からは、前文を中心に細かな修正が加えられたが、GL(報告書)の基本的部分は、前回検討会の案と変わっていない。

 事務局は、GLに関する都道府県担当者の勉強会を実施するだけでなく、全国医療機関への周知に努めたいとしている。

 一方、当検討会は「病床機能区分の定量的基準の件や将来的にGLを見直す必要もあるので、引き続き存続する」(二川医政局長)ことになった。

専門調査会病床必要量の推計方法を了承。WGは県別の推計に

 「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」が3月17日に開かれ、付設されている「医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ」の松田主査(産業医科大学医学部教授)はWGで検討してきた将来の医療機能別病床数の推計方法を報告、了承された。
 WGは全国と各都道府県の医療機能別病床数の推計作業を進め、その結果(概要)を含む報告をまとめる。松田主査は同日の専門調査会に「第1次報告骨子(素案)」を提示した。
 医療機能別病床数の推計方法は「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」を所管する厚労省医政局地域医療計画課と連携してまとめられおり、GL案に明記されたものととまったく同様の内容となっている。
 全国知事会の要望を反映した「療養病床の入院受療率目標設定の特例」および「地域医療構想策定後の目標修正」の考え方も盛り込まれている。
 推計結果は専門調査会の了承後、5月内にも公表される見込み。
 専門調査会は引き続き、将来需要と病床数推計をもとに医療費目標の議論を進め、その結果を医療費適正化計画の見直しに反映させる方針だ。