全日病ニュース

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省令・通知事項― 運営の骨格案まとまる

省令

▲医療事故調査制度の運営骨子は2月25日の検討会ではまとまらず、その後の調整で合意に達した

省令・通知事項― 運営の骨格案まとまる

【医療事故調査制度】
今後は運用のガイドラインが焦点に

 医療事故調査制度の運営にかかわる省令・通知事項に関する「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の検討結果がまとまり、厚労省は3月20日に公表した。
 これを受け、厚労省は「医療法施行規則の一部を改正する省令案」をまとめ、3月23日に意見の募集を開始した(締切は4月21日)。
 医療事故調査制度の施行はこの10月1日。それに向けて、厚労省は意見募集の結果を踏まえた前出省令改正を公布するとともに、医療法施行令(政令)改正の公布と関係通知の発出を行なう。併せて、医療事故調査・支援センターの指定と支援団体の告示を実施することになる。
 一方、同制度ガイドラインの参考資料となる運用指針案の検討を進めてきた厚労科研の西澤研究班(研究者・西澤寛俊全日病会長)は、その結果を報告にまとめ、近日中に厚労省に提出する予定だ。(8面に検討結果の概要を掲載)

 医療事故調査制度に関して、昨年成立した改正医療法には、(1)提供された医療に起因・起因すると疑われ、かつ、予期しなかった死亡・死産は医療事故調査・支援センターに報告する、(2)当該医療機関は速やかに医療事故調査(院内調査)を行ない、その結果をセンターに報告かつ遺族に説明する、(3)センターに報告された事案について、遺族・当該医療機関から依頼があったときセンターは必要な調査ができ、当該医療機関はこれに協力する、(4)センターによる調査の結果は遺族・当該医療機関に報告するなど、制度の大枠を定めている。
 今回の検討結果は、医療法の規定に肉付けする内容と医療法で別定とされた事項を省令・通知で具体的に表記するためにまとめられた。
 その中で、センターに報告すべき医療事故の定義が示されるとともに、院内調査の実施方法、調査結果の報告内容、調査結果の遺族への説明の方法、センターによる調査の内容と当該医療機関・遺族への報告内容など、制度運用の基本となる事項が明確化された。
 その全体を通して貫かれた考え方は「本制度の目的は医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではない」というもの。したがって、調査と報告における匿名性の確保など、考えられる限りの配慮がほどこされている。
 その一方で、初めての制度ということもあり、議論の過程で医療側にも多くの意見対立が生じ、合意形成にかなり難航した。とくに、①医療機関がセンターに報告する医療事故の定義、②院内調査結果の遺族への説明方法、③調査報告書への再発防止策の記載については最後まで意見が分かれ、最終回(2月25日)以降もその決着に多くの時間を要した。
 その結果、①に関しては、まず、起因する医療の範囲を診察、検査等、治療に限定、療養、転倒・転落、誤嚥、患者の隔離・身体的拘束(抑制)に関連する事案は管理者の判断に委ねた。
 次に、「予期せぬ」の解釈は、死亡・死産が予期されていることを「事前に説明していた」あるいは「事前に診療録等に記録していた」さらには「(医療安全委員会等)関係者の聴取などから事前に予期されていると認められた」以外のケースに限定された。
 ②に関しては、「遺族への説明は、口頭または書面(報告書または説明用資料)もしくはその双方の適切な方法により行なう。調査の目的・結果について、遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」と整理された。
 ③については、センターに報告する院内調査の結果では任意の記載とされたが、センターが行なう調査結果の報告では記載事項となった。
 このほか、院内調査を支援する団体には病院団体も含まれ、四病協各団体の名前が例記された。
 また、センターに報告された事案については、遺族・当該医療機関から依頼があったときセンターは必要な調査ができるが、その調査は「院内調査の検証が中心となる」とされた。
 調査報告の取り扱いに関しては、「センターは、個別の調査報告書及びセンター調査の内部資料は法的義務のない開示請求に応じない」と外部への開示を否定した。ただし、「証拠制限などは省令が法律を超えることはできず、立法論の話である」との注釈つきであり、報告書の訴訟使用制限はできないとの解釈を示している。