全日病ニュース

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松田教授「病院はどこも生き残るが、医療提供の姿は変わるだろう」

松田教授「病院はどこも生き残るが、医療提供の姿は変わるだろう」

データから病床機能の過不足を読み取り、自院と地域の医療機能を再構築する必要

松田教授

松田晋哉産業医科大学教授講演(「地域医療構想策定に病院はいかに対応するか」)の要旨「2025年に生き残るための経営セミナー」(3月1日)から

 「2025年に生き残る」というセミナーであるが、私は、基本的に病院はどこも生き残るだろうと思う。ただし、今と同じ医療提供体制でいくことにはならないだろう。地域のニーズに応えるためにどう変わっていくかということが問われていくのではないか。
 地域医療構想は、協議の場(地域医療構想調整会議)で具体的な議論がどうできるかがポイントになる。協議は次のステップで進められることだろう。
 ステップ1では、病床機能の報告と既存のデータから、まずは、地域の提供体制の現状と目指すべき姿の認識を共有していただく。その上で、どういう課題があり、2025年にはどういう問題が起こるかを考えていただくのがステップ2である。これを各構想区域で考えることが大切である。というのも同じ県であっても区域によってニーズが違うからだ。
 ステップ2で出てきた課題にどう対応したらいいかを話し合うのがステップ3である。回復期の病床が不足している場合に、それをどのように充足していくか、役割分担や新たな機能分化・連携を行なう可能性などを検討する。その結果を具体的な計画に落とし込み、医療介護総合確保基金を使って実行していく。これがステップ4になる。
 調整会議に出てくる基本的なデータはDPCとナショナルデータベース(NDB)である。これに地理情報分析とか人口の分析を組み合わせる。東京都以外は消防庁のデータから救急の実態も加味される。
 DPCデータから、当該圏域の急性期医療に欠けている機能がないかどうかが分かる。さらに、NDBを分析した救急医療自己完結率から救急体制の課題がみえてくる。これは年齢階級別にも出るので、小児の救急はどうなのかを見ることもできる。救急の場合は、脳血管障害や心筋梗塞などの個別疾患についても詳しくみていただく必要がある。
 がんについても、DPCのデータから、手術、放射線治療、化学療法の別に欠けている機能がないか、患者がどの医療圏の医療機関で診てもらっているかも含めて分かる。各圏域の住民が疾患別に何分で当該診療を担っている医療機関にかかれるかを表わすデータ、あるいは自己完結率を療養病床についてみたデータもある。
 このように、調整会議では各種のデータを用いて、入院医療全般、救急、5疾病6事業、さらには、医療と介護の連携などについて現状と課題を考えていただくわけだが、同時に、将来の議論もしなければならない。そこで、私ども研究班は、仮に今の受療率が続くと将来どうなるのかを推計するツールもつくって都道府県に配った。
 現在の在院日数と入院率を前提にした場合にどのくらいの病床が必要になるか試算するソフトも提供される。今回の報告制度は機能別の病床数にとどまったが、今後は、例えば、高度急性期の対象医療行為が1日当たり、あるいは100床当たり何件あるかといった形の整理をするだろう。そうすると、全国平均と医療圏の平均、さらには自院データとの比較ができる。その結果、病棟機能の実態やベッドの過不足がみえてくる。
 例えば、ある病院が、高度急性期10件、急性期150件、回復期500件、慢性期300件とすると、この病院が診ている患者の医療需要は明らかにポストアキュートとなる。そこで、その病院はどうするべきなのかを考えなければならなくなる。
 これはそんなに簡単なことではないだろう。というのも、財務的裏付けがなければ、病院は病床機能を転換する決断がつかないからだ。しかし、10年先を考えたとき、それぞれの区域で地域包括ケア病棟を増やすということは必至だろうと思う。地域包括ケア病棟というのは、一般でも、回復でも、療養でも、その機能が果たせれば行ける。そういう意味では、地域包括ケア病棟をどう活かすかということがとても大事になると考える。
 さて、どのくらいの医療需要が発生するのかを病床機能別、年度別に推計した全国単位、都道府県単位のデータが、3月後半から4月半ばぐらいに出る。  病床配分の適正化をめぐる関係者による協議は、まずは、これと病床機能報告のデータを比較して進められる。併せて、各区域の現在の医療状況と将来予測を示すデータも提供される。さらには、自院のデータを分析するツールも提供される。
 こういうものを使って、当該区域における医療需要に合った病床機能の配分はどうあるべきかを総合的に検討する。調整会議はこういうタフな議論をしていただくことになる。
 重要なことは病床数削減が第一の目的ではないということである。これを最初に目的にすると、まとまるものもまとまらなくなってしまう。大事なことは、地域に必要な医療を適切に提供する体制をどう構築するかということである。したがって、区域によっては、当然、増床もあり得ることだろう。
 最後に、これからはデータ等情報の活用能力が問われていくので、地域にはシンクタンクが必要になる。大学関係者に協力を求め、医療需要と提供体制に関する分析をそれぞれの地域が行なう仕組みを、病院団体と医師会の力でつくっていただきたい。

3,000点等はマクロな病床数推定の指標。患者個々の実態とはぶれが

□質疑応答から
Q 医療機能区分の境界(C1、C2、C3)を表わす点数が示されたが、これを使って自院患者の区分を調べ、それを地域や全国と比較した方がよいか。
松田教授 そうする必要はないと思う。3,000点、600点、225点というのは、マクロでどのくらいの病床になるかを推定する指標として中央値を採用しているので、それを個々の病院に当てはめても大きくぶれるのではないか。個々の医療機関が、高度急性期にもっていくために3,000点以上の患者を増やそうとしても、そうはならない。むしろ、今後1年ぐらいで、それぞれの機能に応じた医療行為の例が出てくるので、そちらを比較参照した方がよい。ただ、提供している医療行為の分析を行なうのは、経営分析の上で有効かと思う。
北波課長 C1、C2、C3というのは地域全体の医療需要をはかるためのツールに過ぎない。3,000点以上の患者は高度急性期になるというのではなく、高度急性期の患者の需要をみるために3000点のところで一回切ってみようと、急性期と回復期は600点で切ってみようかということである。したがって、600点を超えている人でも安定期にあれば回復期であるし、安定期でなければ例え500点であっても急性期となる。つまり、600点というのは平均という意味である。したがって、急性期の患者にするために600点にするという話ではないので、誤解のないようお願いしたい。
Q 都道府県の強制力が心配。うまくいかなかったらもっと強い強制力を考えているのか。
北波課長 都道府県の知事が講じることができる措置として、医療法以上の権限はない。厚労省としても、これができなかったら次の手を打っていこうという考えは持っていない。
Q 機能区分と診療報酬の関係はどうなるのか。
北波課長 診療報酬の体系と4機能の病床の体系は現在のところ整合していない。これから先は、医療ニーズにスムーズに対応できるようにしていく必要があると考える。要するにどの病床機能を担ったとしても経営上は有利不利にならないことが重要である。保険局とも協議していきたい。
Q 地域包括病棟(病床)の将来をどう考えるか。
北波課長 地域包括ケア病棟は広い機能を包含しており、私自身は、地域包括ケア病棟は、回復期を中心に、急性期と慢性期を一定程度カバーしていると考えているが、現場や患者の現状と必ずしも合致していないかもしれない。病院の類型と機能をどうやって合わせていくのかという点を、今後議論したいと思っている。

公益社団法人全日本病院協会 2015年度事業計画

Ⅰ. 社会保障制度、医療制度その他病院に関係する諸制度に関する調査研究及び提言並びに政府その他の関係機関関係団体との連絡協議

1. 調査・研究事業
1)病院経営調査の実施
2)平成28年度診療報酬改定に関する調査の実施
・内閣府及び厚生労働省等への要望活動に関わる基礎データ作成
3)平成27年度老人保健健康増進等事業の実施
4)介護報酬改定の影響度調査の実施
5)平成25年度老人保健健康増進等事業「諸外国における認知症治療の場としての病院と在宅認知症施策に関する国際比較研究」の書籍化の検討
6)医療従事者賃金実態調査の実施
7)人間ドック実施状況調査の実施
8)看護必要度の基準の作成の実施
9)全日病総研事業の実施
・地域包括ケア病棟に関する研究の実施
・病院経営調査の集計・分析・報告書の作成の実施
10)「手術業務及び薬剤業務における多職種間の連携を担保する業務プロセスの再構築によるリスク軽減と評価方法の確立と質保証に基づく安全確保に関する研究」の実施
11)厚生労働科学研究事業の実施及び研究支援
12)その他、本会として必要な調査・研究活動

2. 国民のための医療・介護にかかわる制度の構築と提言
1)医療制度等に関する検討及び要望
2)医療関連税制に関する検討及び要望
3)平成28年度税制改正要望書に関する検討
4)平成28年度政府予算等への要望に関する検討
5)介護保険制度についての提言
・介護療養型医療施設のあり方の検討、転換状況等の調査及び要望
・平成26年度老人保健健康増進等事業で実施した調査研究結果に基づく介護報酬改定対応や各方面への提言
6)病院における総合診療医の育成と総合診療医のあり方への提言
7)医療介護総合確保推進法に関連する諸事項の再検討
8)医療基本法に関する再検討
9)終末期医療に関するガイドラインの再検討
10)各種提言の実現に向けての国民への広報、国会・行政への要望と対応

3.医療関連団体との協力と連携
1)四病院団体協議会の事業等の推進
2)日本医師会との連携
3)日本病院団体協議会における活動
4)日本医療機能評価機構の医療事故防止センターへの協力・連携
5)プライマリ・ケアに関連する学会及び団体等との連携

4. 広報活動推進事業
1)「全日病ニュース」の充実と配布の拡充
・WEBを利用したリアルタイム情報配信の検討
2)インターネットを利用した情報提供の推進
・ITを利用した行政関連情報(政省令・通知等)の紹介
3)協会ホームページの拡充
・ホームページのコンテンツの追加(研修会等動画配信の検討)
・WEBによる研修等申込システムの導入の検討
4)他団体と連携した広報活動の推進(HOSPEXJapan等への参加)
5)新しいメディアの活用(SNS等)
6)WEB会議の実施

Ⅱ. 病院の管理運営及び病院施設の改善向上に関する調査研究及び提言

5. 病院機能評価事業
1)日本医療機能評価機構による病院機能評価の受審促進
・病院機能評価受審相談事業
・「機能評価受審支援セミナー」
・病院機能評価取得に関する施策案の検討
・認定病院及び未受審病院に対するアンケート調査の実施
2)病院機能評価体系ならびにその運用方法についての検討
・評価体系等への提言
・日本医療機能評価機構に関する情報提供

6. 医療安全対策事業
1)医療安全管理者の養成
・「医療安全管理者養成課程講習会(及び継続講習・演習会)」
・医療安全に関する講演会・セミナー
・医療安全対策セミナー
2)病院における医療安全推進に関する啓発
・医療の質、医療事故調査等に関する出版
3)院内事故調査制度への対応
・院内事故調に関する研修会等の実施

7. 医療の質向上に関する事業
1)医療の質評価公表事業の実施
・DPC分析事業の実施(MEDI-TARGET)
2)TQM(Total Quality Management)の医療への展開
・TQM講演会・シンポジウム
・TQM啓発研修会
・業務フロー図作成研修会
3)IT技術を利用した医療の質向上推進事業の実施
・病院情報システムを基盤とした安全確保と質保証

8. 個人情報保護に関する事業
1)認定個人情報保護団体としての活動の実施
・苦情等処理業務
・対象事業者等への情報提供・相談・研修
・個人情報保護法Q&A改訂版の作成
・個人情報保護の動向に関する調査・研究
2)個人情報保護に係る普及・啓発の推進
・当協会指針の公表
・認定団体業務の取り組み等についての周知
・個人情報保護に関するセミナー
・「個人情報管理・担当責任者養成研修(ベーシックコース及びアドバンスト研修)」

9. 救急医療・災害時医療・感染症対策に関する事業
1)救急医療
・高齢者救急(在宅医療・増加する認知症患者と2次救急)のあり方に関する検討
・救急ネットワークのあり方の検討
・精神科救急と一般救急の問題点の検討
2)災害医療
・AMAT隊員養成研修の実施及び災害発生時における被害状況の把握
・医療救護班の編成・派遣
・災害時医療支援活動指定病院の管理者向け研修会(仮称)の検討・実施
・DMAT・JMAT・自衛隊・日赤等との連携
・国際災害支援・国際NGOとの連携
・指定病院のネットワーク化を含めた災害時医療システムの構築
・学会活動(日本集団災害医学会・日本航空医療学会・日本救急医学会)
・地域防災緊急医療ネットワーク・フォーラムの開催
・防災訓練
3)感染症対策
・新型インフルエンザ等の感染症対策の検討

10. 国際活動推進事業
1)諸外国の医療施設、医療制度等の調査・研修
・医療の情報・質・安全に関する調査
・海外研修旅行の実施
・EPA等に関する海外視察
2)諸外国の病院団体との交流
3)発展途上国及び被災国への医療支援
・ピープルズ・ホープ・ジャパン(PHJ)等

Ⅲ. 病院資質の向上に資する医師その他病院関係職員の実務的、理論的及び倫理的なレベルの向上に関する教育研修及び検定並びに普及啓発

11. 学術研修事業
1)第57回全日本病院学会(北海道支部担当)の実施
・全日本病院学会運営規約の策定
・全日本病院学会運営マニュアルの整備
2)夏期研修会(和歌山県支部)の実施
・夏期研修会の運営規約の策定
3)ブロック研修会(1回)の実施
4)全日本病院協会雑誌の発行(年2回)

12. 教育・研修事業(以下の研修会等は既出を含む)
1)開設者・管理者・幹部職員研修の実施
業務フロー図作成研修会、病院事務長研修コース(及びフォローアップ研修)、看護部門長研修コース(及びフォローアップ研修)、災害時医療支援活動指定病院の管理者向け研修会(仮称)、総合診療医に関する管理者向け研修(仮称)、医療機関トップマネジメント研修コース、医療機関トップマネジメント研修インテンシブコース、2025年に生き残るための経営セミナー
2)勤務医師、看護師、薬剤師、その他医療従事者の研修の実施
医師臨床研修指導医講習会、診療報酬改定説明会、医師事務作業補助者研修、総合評価加算に係る研修、ADL維持向上等体制加算研修、体制強化加算研修、特定保健指導実施者育成研修コース(基礎編・技術編)、特定保健指導専門研修コース」(食生活改善指導担当者研修)、病院医療ソーシャルワーカー研修会、病院職員のための認知症研修会、個人情報管理・担当責任者養成研修(ベーシックコース及びアドバンスト研修)、看護師特定行為研修の実施に向けた検討、看護師特定行為研修に係る実習等の指導者研修の実施に向けた検討
3)DPCデータを活用した経営分析・質向上に関する研修会の実施
4)医療安全管理者の養成
医療安全管理者養成課程講習会(及び継続講習・演習会)、医療安全対策セミナー、院内事故調に関する研修会等の実施、医療安全に関する講演会・セミナーの実施
5)機能評価受審支援セミナーの実施
6)AMAT隊員養成研修の実施
7)地域防災緊急医療ネットワーク・フォーラムの開催
8)海外研修旅行の実施
9)次世代の若手経営者育成事業の実施

13. 資格認定事業
1)病院管理士の認定並びに更新制度の実施
2)病院看護管理士の認定並びに更新制度の実施
3)保健指導士の認定
4)医療事務技能審査事業(メディカルクラーク)の実施
5)医事業務管理技能認定事業(医事業務管理士)の実施
6)医師事務作業補助技能認定事業(ドクターズクラーク)の実施

14. 無料職業紹介事業の体制整備

Ⅳ. その他この法人の目的を達成するために必要な事業

15. その他、本会の運営に必要な事業
1)支部活動及び組織の強化
会員(正会員・準会員・賛助会員)の増強、各種政策の提言・要望活動、救急医療・災害時医療・感染症への対応、広報活動の推進、各都道府県医師会及び病院協会等関係団体との連携、保健・医 療・福祉活動の支援、各種の研修会・セミナー・講習会・講演会、各種会議・支部総会、勉強会・意見交換会・懇談会等、支部会員相互の情報交換及び親睦活動、各種の調査・研究活動、学術研修 の推進(全日本病院学会への支援等)、各都道府県病院学会への協力及び支援、若手指導者育成事業、医療保険制度の検討、介護保険制度の検討、病院経営に関する検討、地域医療活動の実施、医療従事者対策、福祉事業の拡充・推進、病院機能評価の普及・促進、看護師確保・養成対策の推進、支部機関誌及び会報等の発行
2)支部研修会及び講演会等開催のための支援
3)支部通信員活動の推進
4)会員の増強(正会員・準会員・賛助会員)
・会員数の少ない都道府県における加入促進事業の実施
・ブロック研修会等の開催時における積極的な入会勧誘
5)厚生労働科学研究に係る利益相反の管理
6)日帰り人間ドック実施指定施設の指定事業の実施
7)一泊人間ドック実施指定施設の指定事業の実施
8)「健康の記録」・「問診表」の販売
9)日帰り人間ドック更新料減免調査の実施
10)一泊人間ドック更新料減免調査の実施
11)健康保険組合連合会との協議の実施
12)特定健診・特定保健指導の集合契約の締結
13)会員病院データベースの構築と更新