全日病ニュース

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機能分化へ「診療報酬の特例」活用を検討

▲諮問会議後の会見で「骨太方針」の議論を説 明する甘利内閣府特命担当大臣(6月10日)

機能分化へ「診療報酬の特例」活用を検討

【経済財政諮問会議】
「骨太方針2015」素案を固める。16年度、18年度の改定方針も明記

 6月22日の経済財政諮問会議は「骨太方針2015」の素案について議論を行なった。
 素案は、2020年度の財政健全化目標達成を堅持しつつ、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」の両立を目指すもので、前者においては積極的な産業育成・市場拡大の施策を、後者には地方財政を含む歳出改革・歳入改革の推進をベースにまとめられている。
 その中で、社会保障改革に関しては、(1)諸改革の前倒し実施、(2)社会保障関係費の実質的増加(消費税増収分の投入を除く)を年1.5兆円ほどとする抑制の18年度までの継続方針、(3)医療費適正化計画における都道府県別の1人当たり医療費格差の半減、などが盛り込まれている。
 診療報酬関連では、①高齢者医療確保法の「診療報酬の特例」の活用の検討、②16年度改定と18年度同時改定における機能に応じた病床の点数と算定要件の適切な評価、収益状況を踏まえた評価といった方針が書き込まれている。
 次回の諮問会議で取りまとめ、7月には、骨太方針を踏まえ、16年度予算の全体像と概算要求基準について議論する予定だ。

「経済財政運営と改革の基本方針2015(素案)」における医療に関する記述(骨子)

●社会保障と地方行財政改革・分野横断的な取組等は特に重点分野として取り組む。
●社会保障改革の基本的な考え方
・社会保障関係費の実質的増加が高齢化による増加分(1.5兆円程度)となっている。その基調を2018年度まで継続していく。この点も含め、2020年度に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す。
・主要な改革は2018年度までに集中的な取り組みを進める。2020年度までの改革の工程を具体化していく中で、前倒し実施も含めた検討・取組を進める。
●医療・介護提供体制の適正化
・都道府県ごとの地域医療構想を策定し、都道府県別の医療提供体制の差や将来必要となる医療の「見える化」を行い、それを踏まえた病床の機能分化・連携を進める。
・療養病床は入院受療率の地域差縮小を行い、地域差の是正を着実に行う。このため、慢性期の医療・介護ニーズに対応する提供体制について、医療の内容に応じた制度上の見直しを速やかに検討する。また、地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について検討する。
・外来医療費も重複受診・重複投与・重複検査等を適正化しつつ、地域差の是正を行う。
・地域医療構想と整合的な形で、都道府県ごとに医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定する医療費適正化計画を策定、都道府県別の1人当たり医療費の差を半減させることを目指す。国において2015年度中に目標設定のための標準的な算定方式を示す。
・かかりつけ医普及の診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討する。
・地域医療介護総合確保基金の2015年度からのメリハリある配分や、医療費適正化計画の進捗状況等を踏まえた高齢者医療確保法の「診療報酬の特例」の活用の検討、機能に応じた病床の点数・算定要件上の適切な評価、収益状況を踏まえた評価など、2016年度診療報酬改定及び2018年度同時改定における対応、都道府県の体制・権限の整備の検討等を通じて、都道府県の行う病床再編や地域差是正の努力を支援する。
●負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化
・医薬品や医療機器等の保険適用に際した費用対効果の考慮は、2016年度改定で試行的に導入した上で、速やかに本格的な導入をすることを目指す。生活習慣病治療薬等について費用面も含めた処方のあり方等を検討する。
●薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革
・後発品の数量シェアの目標値を2018年度から20年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする。平成29年央にその目標の達成時期を決定する。
・後発品の価格算定ルールの見直しを検討するとともに、特許の切れた先発品の保険制度による評価のあり方、保険制度における後発品使用の原則化等について検討する。
・薬局全体の改革について検討するとともに、薬剤師による効果的な投薬・残薬管理や医師との連携による地域包括ケアへの参画を目指す。
・2016年度改定で、調剤報酬について、服薬管理や在宅医療等への貢献度による評価や適正化を行い、患者本位の医薬分業の実現に向けた見直しを行う。