全日病ニュース

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地域包括ケア病棟 要件緩和が必要との認識が大勢。機能明確化とセットの議論か

地域包括ケア病棟
要件緩和が必要との認識が大勢。機能明確化とセットの議論か

【中医協総会】
入院医療で議論。支払側は7対1要件のさらなる厳格化を求める

 6月10日に開催された中医協の診療報酬基本小委は、「入院医療等の調査・評価分科会」がまとめた2014年度入院医療実態調査の報告を受け、議論を行なった。
 この議論で、診療側の万代委員(日病常任理事)は、地域包括ケア病棟について、「3つの機能を担うとされているが、その要件は妥当であったのか。
 見直しが必要ではないか。とくに手術や高額薬剤費は包括から外さないと救急に対応できない」と問題提起した。
 続いて開かれた中医協総会は、「入院医療(その2)」として、急性期病床と地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)に関する議論を行なった。
 事務局(厚労省保険局医療課)は、7対1については「急性期入院医療の体制や急性期病床で診るべき患者に関する評価等について引き続き検討する」ことを論点に上げ、要件の厳格に向けた議論を進める方向性を示唆した。
 地域包括ケア病棟については「病態がより複雑な患者や在宅復帰が困難な患者の診療に関する評価のあり方等についてさらに検討すべき」と提起。ポストアキュートの患者が多い同病棟に在宅の急性増悪や地域の軽症急性期、2次救急など、サブアキュートの患者に間口を広げる方向性での検討を求めた。
 事務局の地域包括ケア病棟に対する問題意識は、6月19日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」における論点提起に反映された。
 総会に提出された資料の中で、今年4月時点の7対1一般病棟入院基本料届出病床は36万3,900床(約1530施設)と、昨年10月から約2,300床(約20施設)の減少にとどまったことが明らかにされた。
 地域包括ケア病棟の届出数は、昨年10月より、入院料1が約2万300床(約490施設)、同2が1,400床(約30施設)、入院医療管理料1が9,300床(約600施設)、同2が約800床(約60施設)と病床数で29%、施設数で27%増えた。その結果、合計で約3万1,700床(約1,170施設)となった。
 この結果について、支払側の白川委員(健保連副会長)は「7対1からの転換は我々の想定を大きく下回った」と失望感を露わにし、「次期改定では、看護必要度、在宅復帰率、平均在院日数など、要件をより厳しくする方向で全般的な見直しの議論をすべきと考える」と述べた。さらに、「重症度、医療・看護必要度の基準を満たさない残り85%の患者の姿が見えない」として、7対1病床の患者の実態を明らかにするよう事務局に求めた。
 地域包括ケア病棟については、「要件が厳し過ぎないか。現状にあっていないものもある。どういう機能を果たすべきか考える中で、要件を考え直していくべきである」と述べるなど、地域包括ケア病棟の機能と施設基準・報酬が合致していないとの認識を示した。
 一方、診療側の鈴木委員(日医常任理事)は、7対1を届け出た500床以上病院の3%に地域包括ケア病棟入院料の届出があること(15年4月現在)を指摘し、「急性期大病院のケアミックス化は機能分化に逆行する。平均在院日数を維持するために地域包括ケア病棟に転換させる動きは制限し、高度急性期と急性期に特化できるようにすべき」と主張。
 とくに自治体病院を取り上げ、「過剰な病床は削減すべきではないか」との見解を披露した。
 7対1自体に関しては、「7対1は中小病院もとっており、多様性が認められるべきだ。7対1の判断はもう少し時間をかけるべきではないか」と述べた。
 地域包括ケア病棟に比較的軽症な患者が集中しているとの指摘に対しては、「経口摂取ができないなど重症な患者については在宅復帰率の計算から外すという方法もある」と提案した。
 7対1に関する鈴木発言に、診療側万代委員は、「機能を病院単位でとらえて発言しているが、機能分化は病院単位がいいのか、それ以外(病棟単位)もあるのではないかということも含めて考えていくべきだろう」と注釈を加えた。

□「入院医療(その2)」の論点

●急性期入院医療の論点
 急性期病床の機能分化及び医療機関間の連携の推進を図るため、急性期入院医療の体制や急性期の病床で診るべき患者に関する評価等について引き続き検討していくべきではないか。
●地域包括ケア病棟及び在宅復帰の促進に係る論点
・地域包括ケア病棟について、受入がなされている患者は特定の状態に集中する傾向がみられるが、地域包括ケアシステムの中で期待される役割を踏まえ、病態がより複雑な患者や在宅復帰が困難な患者の診療に関する評価のあり方等について、さらに検討すべきではないか。
・医療機関において、在宅復帰を支援するための院内の体制や他の施設との連携の推進等についてどのように考えるか。