全日病ニュース

全日病ニュース

改定後の1年で収支が大幅に悪化。東京は半数が収支赤字

改定後の1年で収支が大幅に悪化。東京は半数が収支赤字

【全日病2015年度病院経営調査】
実調と異なる結果。前改定の影響が一般200床以上に顕著。DPC病院も赤字に転落

 全日病が実施した2015年度病院経営調査(15年5月対象)の結果、会員病院の医業収支率は14年5月の104.6%から99.8%へと4.8ポイントも落ち込み、赤字に転落していることが分かった。総収支率も前年の104.6%から100.2%へ4.4ポイントも減少した。
 収支率の低迷はとくに東京地区に顕著で、医業収支率が101.3%から98.5%へ、総収支率も101.0%から99.0%へと低下、いずれも100%を下回る収支赤となっている。
 収支率が100%を割り込んだ病院の割合は、医業収支では前年の25%から37%へ、総収支でも24%から36%へと、ともに急増している。
 とくに、東京地区は医業収支率100%未満の病院が52%と過半数を占めた。
 総収支率でも100%未満が47%と半数近くにのぼり、東京の病院はぎりぎり黒字を確保していた14年5月から前改定の影響が浸透した15年5月にかけて、収支が大きく暗転している。
 これを総収入額に対するキャッシュフロー額の比率(推計キャッシュフロー率)でみると、マイナス(0%未満)したがって自己資金では足らずに借入金に頼らざるを得ない病院の割合は、収支の暗転を反映して、全体で22.8%から31.5%へと急増した。
 もともと収益が低迷していた東京地区は32.6%から35.3%へと微増にとどまったが、指定都市は17.7%から34.0%へ、その他地区の病院も22.8%から30.3%へとマイナスの病院の割合が一挙に高まり、資金繰りに苦しむ病院が全国的に急増している。
 例えば、指定都市でいうと、医業収支率100%未満の割合は20%から34%に、総収支率の同割合も21%から33%へと、東京地区以上に赤字病院の割合が増加したことが背景にある。
 収支率の変化を病院種別でみると、とくに「一般病床のみ」の病院に収支悪化が目立ち、医業収支率は14年の103.1%が15年には97.8%へと5.3ポイント、総収支率も同じく102.8%が98.2%へと4.6ポイントと激減している。他の病床種別も軒並み収支率が悪化しているが、「一般・精神病床併設」を除くと100%以上を確保しており、収支悪化は一般病床により顕著となっている。
 その中でも200床以上の病院はより収支悪化が大きく、医業収支率は103.3%から98.7%へ、総収支率も103.0%から99.0%へと低下。200床未満も含むDPC対象病院も、医業収支率が102.2%から97.5%へ、総収支率が102.0%から98.0%へ、それぞれ激減した。
 実質マイナス改定となった前改定が病院全体の収支率を押し下げたことは明らかであるが、加えて、前改定が企図した急性期病床の再編・効率化が、一般病床の200床以上とDPC対象病院の経営悪化を招いていることがよく分かる結果となった。
 1病院当たりの支出の構成割合(病院全体)をみると、給与費は55.6%から56.8%に増えたが、医薬品費、給食材料費、診療材料費、経費などの費用はどれも割合を下げていることから、診療報酬の人的要件やチーム医療への対応等で従事者の増員に対応した結果、費用の増加に収入が追いつかないという構造がうかがわれる。
 15年の医療経済実態調査によると、一般病院(全体)は損益差額を前々年(度)の-1.7%から前年(度)の-3. 1%へと悪化させる中、医療法人は+2.1%から+2.0%へと黒字で推移している。
 これを踏まえ、支払側は実調結果に対する見解(11月20日の中医協総会)で、「医療法人と個人病院は黒字を維持している」あるいは「DPC病院の損益差額率をみると医療法人・国立・社保法人は黒字である」との認識を表明している。
 通年調査の実調と単月調査の全日病調査との違いがあることに留意が必要ではあるが、医療法人が回答病院の82.0%を占める全日病調査と実調との間には、医療法人とDPC対象病院の収益率など、無視できない乖離がみられる。
 病院経営調査報告は、その末尾(結果の総括)で、「地域医療提供体制の崩壊につながらないよう、診療報酬改定では十分なプラス改定が必要である」と警告している。

●猪口副会長のコメント

 今回の調査結果は、過去のものとは比較できないほどの経営悪化を示した。このままでは、民間病院の経営は立ちいかなくなる。この結果を早急に公表し、2016年度診療報酬改定に反映しなければならないと考えている。

全日病「2015年度病院経営調査報告」の「結果の総括」から

 会員を対象に15年5月の収支状況について調査。回答は987病院(40.6%)。また、DPC対象病院は298病院(30.2%)。病床別では「一般病床のみ」が392病院(39.7%)、「一般・療養併設」が361病院(36.6%)と多かった。
●収支率はいずれの地域も14年より悪化した。総数で37%が赤字、東京は52%が赤字である。推計キャッシュフロー率も同様に悪化した。病床種別でも、一般病床、療養病床、一般・療養併設のいずれも悪化。病床規模別でもすべての規模で収支悪化を認めた。DPCの有無別にみても、対象病院、準備病院、非対象病院いずれも悪化を認めた。
●14年5月に7対1であったのは291病院。15年5月時点で、そのうちの269病院が7対1、20病院が10対1であった。同期間に、7対1から2病院、10対1から6病院が地域包括ケア病棟へ転換している。
● 14年調査と15年調査の同一回答(691病院)の比較では、病床利用率の増加、外来患者数の減少、従業員数の増加、入院単価の減少、外来単価の増加を認めた。
●15年調査では、14年調査から連続して、ほとんどすべての種別の医療機関で、さらなる収支率の悪化を認めた。14年4月は全体で+0.1%の改定率であったが、消費税増税分を含まない実質の改定率は-1.26%であった影響が15年5月のデータに反映されたことも一因と考える。また、7対1あるいは10対1から地域包括ケア病棟への移行など、病床の再編に伴う入院1人1日当たり単価の減少も原因と考えられる。
●16年度の改定では、①「重症度、医療・看護必要度」等7対1要件の見直し、②地域包括ケア病棟要件の見直し、③慢性期病床の見直し等が行なわれると考えられる。地域医療提供体制の崩壊につながらないよう、診療報酬改定では十分なプラス改定が必要である。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 平成20年度 病院経営調査報告(概要)

    http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/keieichousa/081031_2.pdf

    病院収支は、医業収支では平成19年度の104.2%から102.3%、総収支では. 103
    .9%から102.0%と、いずれも△1.9ポイントと経営悪化を認めた。 3.特に、指定
    都市では医業・総収支率ともに△4.1%と悪化が著しかった。 また、東京は、医業収支
     ...

  • [2] 医業収支率、総収支率とも前年より悪化

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150101/news01.html

    2015年1月1日 ... 医業収支率総収支率とも前年より悪化|第839回/2015年1月1日・15日号 HTML
    版。21世紀の医療を考える「全日 ... 指定都市. その他. 総数. 0%未満. 0%以上 .....
    医業収支平均比率、病院数(平成20年5月時点),一般病棟入院基本料・ ...

  • [3] 平成16年度 病院経営調査

    http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/keieichousa/2004_11.pdf

    全体の医業収支率は ー02.8 (平成 ー5年 ー06-ー)、 総収支率は ー02.5 (平成 ー5年.
    ー05」9) と悪化していた。 牛寺に東京では丶 医業収支率 (98」7)、 総収支率 (99.4) と
    経営状態が悪い。 .... 病床種別病床数では療養病床の3 2- 4%、 精神病床の2, 4%が
    介護保険指定を受け ... 指定都市 ー 。 3ー 6 ー 。 2- 8 ー 。 4' 2 ー 。 2. 9. その他 ー 。
    7~ 0 ー 。 3~ 3 ー 。 6- 8 ー 。 2. 9. 表8では医業収支でも総収支でも平成ー 5年にく ら
    べ ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。