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医療部会・医療保険部会で基本方針概ね固まる

医療部会・医療保険部会で基本方針概ね固まる

【2016年度改定基本方針】
多剤・重複投薬の表記で日医と保険者が対立。連合が保険外併用療養に懸念表明

 2016年度診療報酬改定の基本方針について、社保審の医療部会(11月19日)と医療保険部会(11月20日)は、厚労省が示した文案をもとに、議論を展開した。両部会とも厚労省案の大筋に特段の異論はなく、意見は主に追記事項と書き振りをどうするかに終始した。
 その中で、医療部会では、西澤委員(全日病会長)が、原案の参考資料で前回改定(2014年度)の改定率が「0.10%」と表記されていることを取り上げ、「これは消費税増税分への対応を含めたもの。それを除いた実質は-1.26%ではないか」と指摘。中川委員(日医副会長)も厚労省の認識に異論を唱え、書直しを求めた。
 事務局は両委員の指摘を受け入れ、名目(+0.10%)と実質(-1.26%)を併記するかたちで修正することを約した。
 両部会に、厚労省が提示した改定基本方針の原案は前回示した骨子案(11月1日号参照)に委員からの意見を一定盛り込んだ上で成文化したもので、次の構成からなる。
1. 基本認識
(1)超高齢社会における医療政策の基本方向
(2)地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築
(3)経済成長や財政健全化との調和
2. 改定の基本的視点と具体的方向性
(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
【重点課題】
(2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点
(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
3. 将来を見据えた課題  原案のうち、重点課題とされた2-(1)の「具体的方向性の例」には、
ア. 医療機能に応じた入院の評価
イ. チーム医療の推進、勤務環境の改善、業効率化取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保
ウ. 地域包括ケアシステム推進のため取組強化
エ. 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
オ. 医療保険制度改革法も踏まえた外来の機能分化という項目が掲げられ、項目ごとに「具体的方向性の例」が列挙されている。
 このうちのイについて、菊池委員(日看協副会長)は「具体例に看護師の夜勤制限を加えてほしい」と求めたが、部会長の永井氏(自治医科大学学長)を初めとする医療系の委員から「医療従事者の負担軽減に含まれている」との指摘が相次ぎ、加筆は否定された。
 医療保険部会の委員でもある菊池氏は同部会でも同様の発言を行なったが、保険局の城医療介護連携推進課長は「医療部会では医療従事者の負担軽減に含まれているということでご了解を得た」と説明、同部会も事務局の説明を受け入れた。
 基本認識の3に「保険外併用療養等について広く議論が求められる」という表現があるが、医療部会における「この保険外併用療養とはなにを指すのか」との質問に、保険局の宮嵜医療課長は「患者申出療養や外来の選定療養」等をあげた上で、「選定療養に関しては政府の方針で学会等から意見を聞くシステムを設けて(継続的に)見直す方向である」旨を説明。
 「保険外併用療養等の検討に時間軸の表記がない。2018年をめどとすべきでは」との質問には、「3にあげられている検討事項は2018年に限られない。
 もう少し長いスパンで解釈されるべき」として表現を見直す意向を示した。
 これに関連して、平川委員(連合)は「保険外併用療養は医療部会で特段議論されていない。それが改定基本方針に出てくるのはいかがなものか」として、削除を求めた。医療保険部会でも連合の新谷委員が「3にあげられているセルフメディケーションや保険外併用療養ということに懸念を感じる。その前段に、“患者の権利を踏まえつつ”という表現を書き加えてほしい」と要求、支払側ながら保険範囲にかかわる議論に神経をとがらせていることをうかがわせた。
 一方、医療部会で、2-(4)に「行き過ぎた長期処方の是正」を書き込むよう求めた中川委員(日医副会長)に対して、宮嵜医療課長は「個別のテーマは中医協の審議に委ねたい」と否定。これに、同委員が「ならば、同箇所に例記されている“多剤・重複投薬を減らすための取組”は削るべきでは」と応酬。しばし、“多剤・重複投薬”をめぐる議論が交わされた。
 その結果、永井部会長から「この議論は各論に入り込んでいる」との指摘を受けた城課長は「そういうご意見であれば削除するのにやぶさかではない」と応じた。
 このやりとりは医療保険部会でも再現されたが、ここでは、保険者や連合など多数の委員から「多剤・重複投薬の削除に絶対認められない」という意見が相次いだが、参考人として出席した日慢協の中川副会長も保険者等と同様の見解を表明するなど医療部会とは趣の異なる議論となった。この結果、厚労省は多剤・重複投薬の書き振りに工夫が求められることになった。
 こうした応酬はあったものの、両部会とも総じて細部にわたる議論が主となるなど、改定基本方針の大筋は概ね固まったといえよう。厚労省は次回12月初旬に最終案を提示し、とりまとめを見込んでいる。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

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