全日病ニュース

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訪問診療の報酬体系さらに改編。患者の重症度を報酬に反映

訪問診療の報酬体系さらに改編。患者の重症度を報酬に反映

居住場所の区分を変え、患者数に応じて点数を細分化

 中医協総会における2016年度改定の審議は個別項目の論点がより具体的となり、改定のポイントが目に見えるようになってきた。以下に11月11日、11月18日、11月20日、11月25日における議論の要旨を紹介する。

11月11日の中医協総会 在宅医療(4)

◎患者の状態に応じた評価に関する論点
・在宅時医学総合管理料等では重症度に関わらず評価されているが、「別表7・8」等に含まれている疾病・処置等を参考に、長期にわたって医学管理の必要性が高い患者には疾患・状態等に応じた評価を行なうことにしてはどうか。
・また、在宅時医学総合管理料等では患者の状態に関わらず1ヵ月に2回の訪問が要件となっているために医学的に必要な回数を超えて診療が行なわれている場合があるため、1ヵ月1回の訪問による医学管理を評価することにしてはどうか。
◎患者の居住場所に応じた評価のあり方に関する論点
・高齢者向け集合住宅と居宅等では在宅医療に係る状況が大きく異なるが、特定施設等以外の集合住宅と比べて特定施設等に対する訪問診療に要するコストが低いとはいえないことから、居宅等と高齢者向け集合住宅とで評価を分けることにしてはどうか。
・同一日同一建物の診療人数毎に1人当たりの診療・移動時間には差があることから、同一建物における診療報酬上の評価を細分化してはどうか。
・同一建物における診療報酬上の評価は同一日に診療を行なった場合にのみ適用されるため、個別に患者を訪問する効率性の低い診療が行なわれていることから、集合住宅内の診療患者数に応じた評価にしてはどうか。その際、一般のアパートや団地等で複数患者を診療した場合等には一定の配慮をしてはどうか。
◎小児在宅医療に関する論点
・機能強化型の在宅療養支援診療所等の実績要件として、在宅看取り実績だけでなく、超重症児等に対する医学管理の実績を追加してはどうか。
◎機能強化型訪問看護ステーションに関する論点
・機能強化型訪問看護管理療養費算定要件の年間看取り件数に在宅がん医療総合診療料を算定していた利用者を含めてはどうか。
・機能強化型訪問看護ステーションの実績要件として、看取り件数だけでなく、超重症児等の小児を24時間体制で受け入れている実績も追加してはどうか。
◎退院直後の在宅療養支援の強化に関する論点
・退院直後の一定期間に入院医療機関が行なう訪問指導を評価してはどうか。
・訪問看護提供体制確保のために、病院・診療所からの訪問看護をより評価してはどうか。
◎在宅医療における保険医療材料等に関する論点 (略)
◎複数の実施主体による訪問看護を組み合わせた利用に関する論点
・病院・診療所と訪問看護ステーションの2ヵ所からの訪問看護は、複数の訪問看護ステーションからの場合と同様に末期の悪性腫瘍や神経難病等の利用者に限ってはどうか。
・複数の訪問看護ステーションから訪問を受けている利用者に同一日に2ヵ所目のステーションが緊急訪問しても診療報酬が算定できないという現行取り扱いを見直してはどうか。
◎在宅薬剤管理に関する論点 (略)
【主な議論】
 同一建物にかかわる評価の細分化や同一日同一建物の評価を患者数に応じたものにするなど事務局の新たな在宅報酬再編案に対して、診療側中川委員(日医副会長)は、「前改定での見直しは在宅医療のモラルハザードをなおすことに意義があった。そういう意味で我々も受け入れた」と述べた。
 その上で、「集合住宅内の診療患者数に応じた評価」という点を取り上げ、「例えば、1人~○点、5人~○点、10人~○点というようにすると、在宅専門のネットワークをもつ医療機関は何人診てもいいということになり、モラルハザードが生じないか」と疑問を呈し、「現場への影響は大きい。ぜひ慎重に検討いただきたい」と論じた。
 「長期にわたって医学管理の必要性が高い患者には疾患・状態等に応じた評価を行なう」という考え方に対して、診療側猪口委員(全日病副会長)は、「提案の趣旨は分かるが、一方で、発熱など短期の状態急変などにもそれなりに手がかかるというのが在宅をしている者の実感だ。短期な患者に対する訪問診療にも十分な評価をお願いしたい」と要望。
 さらに、在医総管と特医総管の月2回以上訪問という要件を月1回にするという提案に対して、「2回を1回にしたからといって単純に半額にするという考え方はとらないでほしい」とも注文。
 居住場所による段階的評価に関しても、「在宅医療は患者の重症度つまり手のかかり具合と移動時間の2面から整理されるべきだ。そう考えると居住場所によって評価を分けるという整理の仕方はいらなくなる」との認識を示した。
 また、病院からの訪問看護の評価を引き上げる案に対しては、「訪問看護を行なう看護師が非常に少なくなってきているが、訪問リハも同様だ。病院・診療所からの訪問看護と訪問リハの評価をともに引き上げてほしい」と、新たな論点を提起した。
 松原委員(日医副会長)も、月1回の訪問を評価するという提案に「ぜひこれをやってほしい」と賛成しつつ、「単に半分の評価という結果にならないようお願いしたい」とした。
 病院からの訪問看護の評価に関連して、福井専門委員(日看協常任理事)は「医療機関と訪問看護ステーションの看護師が共同して訪問することを評価してほしい」と新たな提案を行なった。
 一方、支払側は、幸野委員(健保連理事)が、「訪問看護に関する今回の提案は、在宅医療で要支援や自立した患者も診ているという現状の改善が目的だ。したがって、自立した人や通院できる人は訪問看護の対象から外すことを検討すべきではないか」と問題提起した。
 その上で、「退院直後に入院医療機関が行なう訪問指導」については「期間を限るよう」求めた。
 同じく支払側の平川委員(連合総合政策局長)は、「居住場所による評価のところに“一般のアパート等に配慮する”とある。小規模な集合住宅への不適切な訪問を容認することにならないようにしてほしい」と注文した。

11月18日の中医協総会 外来医療(3)

◎主治医機能の評価について
(1)地域包括診療料、地域包括診療加算に関する論点
・高血圧症、糖尿病、高脂血症以外の疾患を有する認知症患者に、介護に関連する療養の指導を含めた継続的・全人的な医療を行なうとともに薬剤投与の適正化など適切な服薬管理を行なう場合に、主治医機能として評価してはどうか。
(2)小児における主治医機能の評価に関する論点
・小児医療について、当該医療機関で慢性疾患の継続的管理、急性疾患や時間外への対応、必要に応じた専門医療機関への紹介等を行なう他、健康管理を総合的に実施し、継続的かつ全人的な診療を行う主治医機能を評価してはどうか。その際、現行の小児科外来診療料の評価方法を基調としつつ、3歳以降も一定年齢まで引き続いて評価してはどうか。
◎紹介状なしの大病院受診時に係る選定療養に関する論点
○定額負担を求める大病院の範囲
・特定機能病院に加えて500床以上の地域医療支援病院としてはどうか。
・500床以上について、一般病床以外をどう取り扱うか。一般病床であっても、児童福祉法に基づく指定発達支援医療機関や医療型障害児入所施設などの取り扱いをどうすべきか。
○定額負担を求めない患者・ケース
・現行制度でも負担を求めない「緊急その他やむを得ない事情がある場合」(救急の患者・公費負担医療の対象患者・無料低額診療事業の対象患者・HIV感染者)は定額負担を求めないことにしてはどうか。緊急に該当するかどうかの判断は、現行制度と同様、医療機関に委ね、緊急以外の事情に該当する場合は例外なく対象外としてはどうか。
・その他、定額負担を求めない患者・ケースとしてどのようなものが考えられるか。
○定額負担の金額(初・再診)
初診時(例)― 3,000円程度、5,000円程度、10,000円程度
再診時(例)― 1,000円程度、初診時特別料金最低額の約4分の1、同じく約2分の1
・徴収する最低額を国が設定してはどうか。その上で、定額負担の額をどう考えるか。
・医科歯科併設の医療機関で医科・歯科で異なる金額とすることについて、その額を含めどう考えるか。
(5面に続く)

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年11月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/151115.pdf

    2015年11月15日 ... 診療側)委員に選任され、11月4日の中医協総会から審議に参加した。長瀬委員(日精
    ... 全日病としては、西澤会長に続く2人目の、日病協推薦による中医協委員となった。
    診療側では .... て急性期に対応する報酬体系を創設. し、他の急性 ... 今後、さらに急性
    期の患者を扱う病. 院の機能 ... 包括支払い(重症度評価等). (急性期 ...

  • [2] 点数除く改定案で合意。消費税対応は次回決着。2月半ばに答申|第 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140201/news01.html

    2014年2月1日 ... 中医協は1月29日の総会で改定項目の骨子を整理した事務局(厚労省保険局医療課)
    案について、消費税引き上げ分の対応方法を除いて合意に達し、点数や具体数を除く、
    2014年度診療報酬体系の全容を固めた。 ... 急性期病院に激変をもたらしかねない今
    改定の内容は、まず、7対1病棟に関しては、特定除外制度の廃止、「重症度、医療・
    看護必要度(A項目)」の強化、DRG/PPS化され ... 一方、72時間要件を満たせない
    場合の緩和措置が13対1、15対1さらには療養病棟(25対1)にも適用される。

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年11月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/151101.pdf

    2015年12月27日 ... 新たな施設類型”に重症度の高い患者 ... さらに踏み込んだ議論が展開され、医 ..... 慮
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