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居住費用負担の適用拡大や受診時定額負担導入に「慎重検討」を求める

居住費用負担の適用拡大や受診時定額負担導入に「慎重検討」を求める

【経済・財政一体改革推進委員会社会保障WG】
厚労省が財務省要求に回答。「診療報酬の特例」にも難色

 経済財政諮問会議に付設された「経済・財政一体改革推進委員会」の社会保障WGの11月16日の会合で、厚労省は、社会保障分野の工程表策定作業に向けた改革課題に対応する施策の概要や検討・実施時期等を明らかにするとともに、改革課題に関して財務省が要求する具体的方策に対する同省の見解を示した。
 その中で、①入院時の居住費用(光熱水費相当)負担を医療区分2・3患者へ、さらには難病等患者を除く全病床へと拡大すべき、②かかりつけ医以外を外来受診した患者に定額負担を導入すべき、③2025年の必要病床数に関して20年時点の中間目標を設定すべき、④「診療報酬の特例」の活用に向けてGLを策定すべき、⑤民間医療機関に対する転換命令等都道府県権限の一層の強化を図るべき、などとする財務省の要求に対して、以下のような厚労省の見方を明らかにした。
 ①については、医療区分2・3患者への拡大には「医療の必要性が高いことから慎重な検討が必要」とし、一般病床等への拡大にも「入院は治療する場で住まいとしての機能はない」などの留意点を示した上で、「慎重な検討が必要」とした。
 ②に関しても、「過度の受診抑制を招くおそれ」や「将来にわたり7割を維持するとしている2002年健保法等改正法附則第2条との整合性」などの留意点を示し、慎重に臨むべきとの意向をのぞかせた。
 ③には、「算定基準のない中間目標によって行なうより、2025年の必要病床数に対する都道府県ごとの進捗率によって行なうことが適当」と反論。
 ④に関しても、「同じ医療サービスの自己負担が地域で異なることになり、患者がより安い地域の医療機関を受診するインセンティブが働くこと等の課題について整理が必要」と疑問視。
 ⑤については、「昨年6月の医療介護総合確保推進法で、都道府県が民間医療機関に行使する権限を新たに設けたところ。追加的な措置は、これら権限の行使状況を勘案した上で検討」とし、検討を先送りすべしとの考えを表明した。
 経済・財政一体改革推進委員会は「骨太方針2015」で定められた「経済・財政再生計画」について、主要な課題に前倒しで取り組む集中改革期間(16~18年度)を中心に、その進捗管理・点検・評価を担っており、現在、年末をめどとする工程表策定作業を進めている。
 同委員会の下で、社会保障WG は「経済・財政再生計画」に掲げられた改革課題の中の社会保障分野を担当しており、10月29日の会合で、工程表に明記する課題の改革方向性と実施時期に関する財務省の意見を聞き、同席した厚労省に検討と回答を求めた。
 11月16日の会合で、厚労省は、「経済・財政再生計画」にあげられた課題に関連した施策の概要とその検討・実施時期等を報告するとともに、10月29日に示された財務省の意見に対する見解を明らかにしたもの。
 社会保障WGはこの日をもって工程表策定に関する下作業を止め、改革課題に関する関係省の意見やWGの見解を整理した報告を経済・財政一体改革推進委員会にあげ、以降の検討作業を同委員会に委ねる。
 一方、厚労省は社保審医療保険部会を中心に、工程表策定に向けた課題への対応方針をめぐる検討と議論を進めており、大きな論点となる入院時居住費用負担の拡大や定額負担についても年内に検討結果をまとめ、経済・財政一体改革推進委員会に報告したいとしている。(工程表策定にかかわる財務省意見と厚労省の見解は6面、医療保険部会における議論は8面にそれぞれ概要を掲載)。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

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