全日病ニュース

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地域包括ケアの構築に向け、退院支援加算を創設 在宅医療をきめ細かく評価、認知症の評価も充実

地域包括ケアの構築に向け、退院支援加算を創設
在宅医療をきめ細かく評価、認知症の評価も充実

●病棟群単位による届出

 7対1入院基本料と10対1入院基本料を病院全体ではなく、病棟群ごとに届出することができるようになる。病棟が4以上ある医療機関については、少なくとも2病棟以上の届出を行うことが原則となっている。
 図1(4面)に示したように、7病棟・350床の医療機関では、4病棟以上なので、10対1に少なくとも2病棟を移す必要がある。この届出ができるのは、2016年4月1日から2017年3月31日までで、1回限りの届出になる。
 もう一つ要件があり、2017年4月1日以降、7対1の病床数は全体の60%以下にしなければならない。
 図の例では、2016年4月以降に2病棟・100床を10対1に転換し、7対1は5病棟・250床となっているが、このままでは7対1が60%以上となってしまうので、2017年4月までに7対1を60%以下にするため、7対1は1病棟減らして4病棟・200床とし、10対1を3病棟・150床にして、要件を満たすことになる。
 病棟群ごとの届出を行う場合に、それぞれの施設基準を満たす必要がある。注意を要するのは平均在院日数だ。基本的に病棟群ごとに計算することになるが、病棟群の間で転棟した場合、平均在院日数の計算においては新入棟・新退棟患者として計算しない。自宅等退院患者割合は、7対1のみが対象となるが、一般病棟全体で7対1の基準を満たす必要がある。
 7対1入院基本料の在宅復帰率は、評価の対象となる退院先として在宅復帰機能強化加算の届出を行った有床診療所が追加され、基準は75%から80%に引上げられている。地域包括ケア病棟入院料の在宅復帰率は基準の引上げは行わないが、評価の対象に有床診療所を加えている。

●療養病棟入院基本料2

 療養病棟入院基本料2の見直しを行う。療養病棟入院基本料1は、医療区分2または3の患者が8割以上であることが要件となっていたが、療養病棟入院基本料2には特段の要件がなかった。一方、療養病棟入院基本料2の病棟では医療区分2・3の重症患者が減っていて、介護療養病棟では増えているという状況があり、機能分化の観点から療養病棟入院基本料2の病棟に重症患者を受け入れていただくべきと考え、今回、医療区分2と3の患者が5割以上を施設基準の要件に追加した。ただし、医療区分2・3の患者の割合、または看護職員の配置基準(25対1)のみを満たさない病棟については、看護師の配置が30対1以上という最低ラインを満たした上で、所定点数の95%で算定することがきるよう例外規定を設けた。
 あわせて医療区分の項目についても見直しを行っている。医療区分3については、酸素療法を実施している状態が対象になっているが、①常時流量3ℓ/分以上を必要とする状態②心不全の状態③肺炎等の急性増悪により点滴治療を実施している状態(30日間)の患者を医療区分3の対象とすることとした。
 また、医療区分2の血糖検査については、糖尿病に対するインスリン製剤またはソマトメジンC製剤の注射を1日1回以上行っている患者を対象として明確化した。うつ病については精神保健指定医が診て投薬している場合を対象とした。

●医師事務作業補助体制加算

 医師事務作業補助体制加算では、加算の評価を充実するとともに、各基準の要件を緩和している。20対1の要件を見直したほか、50対1、75対1、100対1加算の対象として、療養病棟入院基本料および精神病棟入院基本料を追加した。

●看護職員の月平均夜勤時間

 看護職員の月平均夜勤時間72時間について、現状は夜勤時間が「16時間以下」の場合に夜勤時間の計算に含めないこととしているが、7対1および10対1については、「16時間未満」に変更した。また、7対1および10対1以外の入院基本料については、月当たりの夜勤時間が「8時間未満」の者を対象に含めないこととした。
 このほか夜勤時間超過の減算について、100分の20から100分の15としたほか、これまでの特別入院基本料にかわり「夜勤時間特別入院基本料」を新設し、減算を100分の70に緩和している。
 また、夜間の看護体制の評価に関して、①勤務終了時刻と勤務開始時刻の間が11時間以上②勤務開始時刻が直近の勤務時刻の概ね24時間以降③夜勤の連続回数が2回以下であることなど、看護職員の夜間の勤務体制に関して要件を満たしている場合に別途加算を算定できるように新たに評価を行った(看護職員夜間配置加算など)。

●退院支援加算

 退院支援加算を新設した。施設基準は若干複雑である。
①病院全体で退院支援を行う部門を設置すること。
②退院支援部門に十分な経験を持つ専従の看護師または専従の社会福祉士が1名以上配置されていること。看護師と社会福祉士のどちらかを専従とし、もう一方を専任とすることが必要。
③退院支援および地域連携に専従する看護師または社会福祉士が算定対象となっている各病棟に専任で配置されていること。業務としては、退院支援業務を専従で行うが、病棟については、2つの病棟まで専任で兼務できる。この場合、20床未満の病棟については、2つの病棟に含めなくてよい。病棟に専任の看護師または社会福祉士は退院支援部門の専従の職員を兼務することはできないが、専任の職員を兼ねることはできる。
④連携する保険医療機関または在宅介護サービス事業所、地域密着型サービス事業所、居宅介護支援事業者もしくは施設介護サービス事業者の数が20以上であり、年3回以上の頻度で面会し、情報共有を行っていること。
⑤病床当たり一定程度の数で、介護支援連携指導料を算定していること。

●在宅医療における重症度・居住場所に応じた評価

 在宅の中で主だった管理料は、特定施設入居時等医学総合管理料(特医総管)と在宅時医学総合管理料(在総管)である。看護師の配置のある施設が特医総管、それ以外の施設が在総管の対象となっているが、今回、対象施設の見直しを行い、施設入居時医学総合管理料(施設総管)として、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症グループホームが対象施設に加わった。
 経過措置があり、来年の3月まで1年間は在医総管が算定できるが、来年4月以降、有料老人ホームに入居している高齢者は施設総管を算定することになる。また、末期の悪性腫瘍の患者あるいは難病の患者、人工呼吸器を使用している患者は重症度が高いことから、それ以外の患者と評価を分けることとした。
 従来は、同じ日に診療したか、別の日に診療したかで4,600点と1,100点の2種類の点数があったが、今回、図2のように、重症な患者かどうかで評価を分けた。その上で、単一の建物に「1人」、「2~9人」、「10人以上」の3種類の評価を行うこととした。
 それに加えて月1回訪問している場合の管理料をつくった。従来は、月2回訪問していないと管理料が算定できなかったが、月1回でも医学的管理ができる場合もある。月1回の管理料をつくり、医師の裁量にまかせて訪問回数を調整できるようにした。
 従来、同一建物居住者の場合とそれ以外で評価が分かれていた。同一建物居住者は、「複数の患者に対して保険医療機関の保険医が同一日に訪問診療を行う場合」と定義し、同じ日に診た場合は同一建物居住者となり、個別に診た場合は同一建物居住者以外になる整理だった。管理料を算定するためにわざわざ個別に施設を訪問するということがあり、非効率で医師の負担も大きかった。このため管理料に関しては、その月に在総管または施設総管を算定する患者の人数に応じて評価することとした。
 訪問診療料は、同じ日に診たかどうかで従来どおりの考え方であるが、在総管、施設総管については、その建物の中で算定した患者が何人いるかで算定する。

●在宅医療を専門に行う診療所

 在宅医療を専門に行う診療所を認めることとした。
 従来、フリーアクセスの観点から外来診療を行うことが前提となっていたが、在宅医療の需要が増えていることから、在宅医療を専門に行う診療所を認めることとし、次の5つの要件を設けている。
①在宅患者の占める割合が95%以上
② 年間5か所以上の医療機関から紹介を受けている
③看取りの実績が年間20以上である
④施設と在宅の両方を診る
⑤要介護3以上、あるいは重症の患者が5割以上地域の中で役割を担い、重度患者の対応や看取りの実績を求めることとしている。

●データ提出を要件とする病棟の拡大

 2014年度の改定で、7対1入院基本料にデータ提出加算の届出が要件になったが、今回、10対1入院基本料(一般病床200床以上の病院に限る)についても一定の経過措置を設けて届出を要件化する。加えて、提出するデータの内容も変更し、重症度、医療・看護必要度(Hファイル)の提出を求め、評価も増点した。

●回復期リハビリテーション病棟の見直し

 対象施設には2つの要件があり、①報告の前月までの6か月間に退棟した患者数が10名以上、かつ②リハビリテーションの1日平均提供単位数が6単位以上であることである。
 その上で、効果の実証の評価基準を設けた。1入院当たりのFIMの改善がどのくらいになるかを標準化して指標としたもので、計算から除外する患者を細かく定めている。

●認知症ケア加算

 認知症対策の一環として認知症ケア加算が新設された。加算1と加算2があり、加算1は、認知症のケアチームをつくり、その中で常勤の医師および認知症専門の常勤の看護師を含めることとし、認知症ケアチームが中心となって各病棟と連携しながら、認知症ケアの向上に努める場合に加算を算定する。
 加算2は、認知症専門看護師の配置は不要で、9時間以上の研修を受けた看護師を複数名配置するほか、身体的拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書を作成し、活用することが施設基準となっている。

 

全日病ニュース2016年4月1日号 HTML版

 

 

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    保険局医療 .... 有床診療所は別紙. 4) .... 被災地の医療機関において、平均在院日数
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  • [2] 東日本大震災に伴う保険診療の特例措置の期間延長等について

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160331_1.pdf

    2016年3月28日 ... 有床診療所は別紙. 4). 15 平均在院日数. 被災に伴い、退院後の後方病床等の不足
    により、やむを得ず平均在院日数が超過する場合であって、平. 均在院日数について、2
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  • [3] 平成28 年度診療報酬改定関連通知の一部訂正及び官報掲載事項の一 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160401_1.pdf

    2016年3月31日 ... 院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)及び専門 .... また、有床診療
    の在宅復帰機能強化加算の届出は入院基本料の届出とは別に行うことと ..... 1 入院
    基本料等の施設基準に係る平均在院日数の算定は、次の式による。

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