全日病ニュース

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急性期から慢性期まで医療機能ごとの患者像に応じて評価、C項目の詳細示される

全日病・2016年度診療報酬改定説明会(3月14日)

急性期から慢性期まで医療機能ごとの患者像に応じて評価、C項目の詳細示される

2016年度診療報酬改定の概要(医科) 厚生労働省保険局医療課 課長補佐 田村圭(発言要旨)

2016年度診療報酬改定の概要

 2016年度診療報酬改定の改定率は、本体がプラス0.49%、薬価改定がマイナス1.22%、材料価格改定がマイナス0.11%となっている。基本的な考え方については、例年どおりだが、社会保障審議会医療保険部会・医療部会が昨年12月に基本方針を策定し、それに沿って個別項目をまとめている。
 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の見直しでは、急性期の密度の高い医療が必要な患者が評価されるよう見直しを行った。具体的には、①手術②救命等に係る内科的治療(経皮的血管内治療、経皮的心筋焼灼術、侵襲的な消化器治療など)③救急搬送④認知症・せん妄の症状─ などの評価を拡充している。
 これとあわせて、7対1入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の割合を15%以上から25%以上に見直した。この点に関して、許可病床数が200床未満の医療機関で、病棟群単位による届出を行わない医療機関は、2018年3月31日までに限り、23%以上とした。
 在宅復帰率の見直しも行っている。従来は自宅等に退院する者の割合が75%以上としていたが、有床診療所への退院を評価するとともに、80%以上に引上げている。10対1入院基本料を算定する病棟に対しても、重症患者を受け入れているところを積極的に評価した。具体的には、看護必要度加算について、現状の2段階を3段階とし、評価を充実させている。
 病棟群単位による届出については、7対1から10対1に変更する場合に限って、複数の入院基本料を病棟群ごとに届け出ることを可能とする。これは特に看護職員の雇用の問題があり、7対1から急に10対1に移行するのは、難しいだろうということを配慮し、病棟群単位で2年間届出を行うことを認めることにした。
 在宅復帰を促すため、前回改定から在宅復帰率を施設基準に加えるなどの対応を行っている。今回改定では、「在宅復帰をするべきである」ということだけでなく、在宅復帰に当たってどういった診療を行うのか、あるいはより積極的な退院支援に関しては、それに応じて評価していくべきとの観点から、評価の充実を図った。評価する取り組みとしては、「病棟への退院支援職員の配置」「連携する施設の職員との定期的な面会」「介護支援専門員との連携」「多職種による早期のカンファレンス」をあげている。
 具体的な改定項目では、従来の「退院調整加算」が「退院支援加算2」になる。新設の「退院支援加算1」が従来と変わった点としては、要件として、「退院支援業務等に専従する職員を病棟に配置(2病棟に1名以上)」、「連携する医療機関等(20か所以上)の職員と定期的な面会を実施(3回/年以上)」、「介護支援専門員との連携実績」がある。こういった取り組みを積極的に評価する。従来の点数と比べると、一般病棟入院基本料等の場合が190点から600点に、療養病棟入院基本料等の場合が635点から1,200点に引上げられる。
 外来については、かかりつけ医の普及に向けた評価が主なものとなっている。前回改定で地域包括診療料・加算を設けた。これに付随するものとして、認知症に対する主治医機能を評価するのが今回の大きな項目となっている。ほかにも小児に対するかかりつけ機能を充実させている。また、従来の地域包括診療料・加算の要件を緩和している。あわせて、紹介状なし大病院受診時の定額負担を導入する。
 新設する認知症地域包括診療料・加算の基本的なコンセプトは、従来の地域包括診療料・加算(4つの疾患のうち2つ以上該当する患者が対象)と同じだが、認知症と認知症以外の疾患を一つ持っている患者が対象になる。もう一つ異なるのは、認知症では多剤の服薬管理がなかなかできないだろうということで、「内服薬5種類以下うち向精神薬3種類以下」の制限を設けた。従来の地域包括診療料・加算は、主治医がきちんと服薬管理をしていることを前提とし、7剤以上の減算規定の対象外とした。しかし、認知症の患者では、それだけの多剤を管理するのは難しいと判断した。
 従来の地域包括診療料・加算は要件を緩和し、地域包括診療料について、2次救急指定病院等の施設基準の緩和、地域包括診療料・加算については、常勤医師の施設基準を3人から2人に緩和している。
 こういった点数を積極的に取りにいってほしい。
 紹介状なし大病院受診時の定額負担の対象は、特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院となった。現状の選定療養を義務化する。初診は5,000円、再診は2,500円で、原則として徴収することで、病診の機能分化を進めてほしい。
 在宅医療は前回改定よりも大きな見直しを行い、在宅医療専門の医療機関に関する評価を新設した。
 在宅医療全体を補完する観点から、在宅医療を専門に行う医療機関を一定の要件で認める。
 これまで評価されていなかった休日の往診を、評価することにした。「患者の状態・居住場所等に応じた評価」は前回に続き、大きな見直しになっている。
 リハビリテーションでは、早期からのリハビリテーションを評価し、初期加算・早期加算について、発症後なるべく早期に実施してもらうことが重要であるため、起算日や算定日数を見直す。
 回復期リハビリテーション病棟は、リハビリテーションを集中的に提供する病棟として創設されている。このため一定のアウトカムを求めることとし、現状は1日患者1人当たり疾患別リハビリテーション料を9単位まで取れるのを、アウトカムの評価が一定の水準に満たない場合に6単位を超える上積み部分に関して包括とする。3か月ごとに実績を測り、2回連続で満たせなかった場合に包括となる。ただし、途中で満たせるようになった患者は改めて9単位まで算定できるよう届け出ることになっている。
 認知症対策では、昨年オレンジプランが見直されたことにあわせて診療報酬も充実させる。早期診断・早期対応のための体制を整備するため、診療所型認知症疾患医療センターを評価する。従来は病院が中心だったが、より身近な医療機関として、診療所型を評価する。入院関連では、認知症ケアチーム等による病棟の対応力とケアの質向上を図るため、認知症ケア加算を新設する。手のかかる患者を適切にケアし、チーム医療に取り組んでもらうことで、充実したケアにつながっていくと考えている。
 精神医療については、馴染みのある病院とそうではない病院に分かれてしまうかもしれない。だが一般の総合病院でも、「身体合併症を有する精神疾患患者への医療」の評価ということで、精神科病院からの患者をきちんと受け入れることや、総合病院の精神病棟に手厚い医師配置を行うことを評価する。
 一般の総合病院でも、精神病患者を診てもらえるよう評価を充実させている。
 今回の改定では、小児医療に対する対応をきめ細かく行っている。大きなところでは、小児かかりつけ医による幼児期までの継続的な評価を充実させている。また、重症小児の受入体制・連携体制の強化を行っている。入院・外来・在宅のそれぞれの観点から、入院医療では、重症新生児等を受け入れている小児入院医療機関やNICU等における重症児の入院日数の延長を評価する。在宅医療では、機能強化型在宅療養支援診療所・病院や機能強化型訪問看護ステーションの実績要件に重症児の診療を追加する。
 外来では、小児慢性特定疾病に関する医学管理を評価することにしている。
 救急医療の評価の充実では、救急医療管理加算について、前回改定で加算1と加算2に分けて、加算2を400点に減点したことで、現場に大きな影響が生じたと指摘された。今回改定では、加算2の中でも、特に重症の状態・疾患であると考えられる「緊急カテーテル治療・検査またはt-PA療法」を加算1の対象に含めることにした。その上で、加算1の点数を800点から900点に引上げ、加算2の点数を400点から300点に引下げた。それに加えて、夜間休日救急搬送医学管理料は、算定要件に「深夜」の受け入れのほかに「夜間」を加えた上で、点数を200点から600点に引上げた。
 このように充実した評価にすることで、2次救急を担う病院には積極的な患者の受け入れをお願いしたい。

個別改定項目

●重症度、医療・看護必要度
 「重症度、医療・看護必要度」は、項目の見直しを行った。まず、A項目の専門的治療・処置で、無菌治療室の治療が加わった。また、救急搬送後の入院が加わった。救急車で搬送された場合に、当日と翌日の2日間が対象となる。注意が必要なのは、医療機関が所有する救急車ではなく、自治体の救急車で搬送された場合に対象となる点で、医療機関から医療機関に搬送した場合は含まない。
 B項目では、「診療・療養上の指示が通ずる」「危険行為」の2項目が加わったが、認知症やせん妄の患者に対するケアを評価するねらいである。
 C項目は、開頭・開胸の手術、あるいは救命等に係る内科的治療ということで、新たな項目を追加している。
 こうした項目の追加にあわせて該当基準を見直した。従来は、「A項目2点以上かつB項目3点以上」が基準だったが、早期離床・早期リハが推奨されていることから、B項目を満たさなくても「A項目3点以上」であれば急性期の患者像として評価することとした。また、「C項目1点以上」でも該当することとした。
 C項目では、手術ごとに該当する日数が異なり、開頭・開胸手術であれば手術当日を含めて7日間、開腹手術では5日間、胸腔鏡・腹腔鏡では3日間、全身麻酔・脊椎麻酔の手術では2日間となっている。
 救命等に係る内科的治療は2日間である。
 手術等の医学的状況ついては定義が定められており、例えば開頭手術であれば、「開頭により頭蓋内に達する手術」であり、穿頭および内視鏡下で行われた手術は含まない。骨の手術は、手や足の指の手術は除いて関節置換術などが対象となる。
 内科的治療は、①経皮的血管内治療として、一般的なカテーテル治療、脳血管のカテーテル治療、t-PA療法などがあげられている。②経皮的心筋焼灼術は、アブレーションやペースメーカー移植術が対象。③侵襲的な消化管治療には、内視鏡による胆管、膵管に係る治療、あるいはラジオ波焼灼術などがある。「重症度、医療・看護必要度」の項目の見直しに伴って該当患者割合の見直しを行い、7対1入院基本料は15%から25%に引上げとなる。地域包括ケア病棟入院料は10%の基準は変わらないが、C項目が対象に加わった。回復期リハビリテーション病棟は、従来の10%から5%に緩和された。10対1病棟の看護必要度加算は、基準を引上げた上で増点している。

 

全日病ニュース2016年4月1日号 HTML版

 

 

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    せん妄」に関する ... 慢性期入院料について. 療養病棟から在宅復帰 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年9月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/150901.pdf

    2015年9月1日 ... 入院医療等の調査・評価分科会 「重症度、医療・看護必要度」、慢性期入院、退院支援
    等で改定方向を提起 ... 療・看護必要度」に関して、急性期医 ..... や“誤解”をなくすため
    に、回復期機能に亜急性期医療の側面があることを指摘するとと.

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