全日病ニュース

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医療・介護連携の核となる人材めぐり議論

医療・介護連携の核となる人材めぐり議論

医療介護総合確保促進会議

 厚労省の医療介護総合確保促進会議(田中滋座長)は3月9日、医療・介護の連携を促進するための総合確保方針改定の議論を本格化させた。厚労省は改定に際しての論点を提示。論点のうち、「医療・介護連携の核となる人材」をめぐり、活発な議論が交わされた。
 総合確保方針は、「地域において効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護を総合的に確保するため」のもの(地域医療介護総合確保促進法)。都道府県の医療計画と市町村の介護保険事業計画が2018年度に同時改定となるため、両者の整合性を図る観点から、それにあわせ総合確保方針も改定する。
 現行の総合確保方針の基本的な方向性は、①効率的で質の高い医療提供体制の確保と地域包括ケアシステムの構築②地域の創意工夫が生かせる仕組み③質の高い医療・介護人材の確保と多職種連携の推進④限りある資源の効率的かつ効果的な活用⑤情報通信技術(ICT)の活用。これらは次期改定でも堅持される方向だ。
 厚労省は現行の総合確保方針や前回の議論をふまえ、3つの論点を提示した。具体的には、①各計画との一体的かつ整合的な方針の策定②在宅医療、在宅医療と介護の連携の推進③医療・介護連携の核となる人材─ を示した。同日の議論では、「医療・介護連携の核となる人材」に関して、多くの意見が出された。
 病院関係者の委員から、「今から新しい職種をつくるのは大変だ。その点、介護支援専門員は介護保険制度発足以来、調整役を担ってきた。医療に弱いところは、地域医師会で研修を受ければ、コミュニケーションも図れる」として介護支援専門員に期待する意見があった。
 また、学識者の委員は、介護支援専門員の資格を持つ看護師が地域の連携拠点で中核的な役割を担っている事例を紹介し、地域医師会の協力が不可欠であると強調した。
 別の病院関係者の委員は、病院内で多職種連携が進む一方で、「入院から在宅に移ると連携はうまくいかなくなる」と指摘。訪問看護師がより活発に働けるよう、訪問看護ステーションの拡大を求めた。
 これらの意見をふまえつつ、全日病会長の西澤寛俊委員は、「おおもとの働く人自体が少ない。それが一番の問題で、どう増やすかを考える必要がある。人材不足の中、補い合いながら働いている現場感覚が大事だ」と述べた。
 人材確保をめぐってはそのほか、社会福祉士の活用や行政職の専門性向上を求める意見が出た。

新三本の矢で基金規模が大幅に拡充

 厚労省は同日の促進会議に、地域医療総合確保基金の2015 年度補正予算と2016 年度予算案を報告した。安倍首相が掲げる新三本の矢の一つである「安心につながる社会保障」(介護離職ゼロ)の実現に向け、2015 年度補正予算で1,561 億円(国1,040 億円)を計上したため、基金規模が大幅に拡充されている。
 2016年度予算案においては、医療分904億円(国602億円)、介護分724億円(国483億円)で、2015年度予算と同規模となっている。これは社会保障・税一体改革により、消費税増収分で安定財源を確保し、地域医療構想の達成や医療・介護従事者の確保などを目指し、それを基金事業に充てるとされたためだ。
 2015年度補正予算の中身では、国費1,040億円のうち、921億円を「在宅・施設サービスの整備の加速化」に投入する。残りの119億円は介護人材の確保に使われる。これについて委員が、「医療分の基金事業に使うことは検討されなかったのか」と質問。厚労省は、「新三本の矢に直結するものが対象になった」と説明した。
総合確保基金の交付状況が確定
 厚労省は同日の促進会議で、2015年度地域医療介護総合確保基金の交付状況を説明した。医療分の2回目の交付が1月6日に決定したため、2015年度の交付事業がほぼ確定した。公民の割合は2016年1月現在で、医療分は民間機関が68.1%で410.3億円、公的機関が25.4%で152.9億円、交付先未定が6.5%で39.2億円となっている。
 ここでいう公的機関とは、都道府県・市町村、公的医療機関・国などが開設する医療機関など。設置主体が「公」で、事業主体が「民」の場合は「公」に計上する。ただし、交付先が民間機関であっても民間医療機関が対象になるとは限らず、数字の見方には注意が必要だ。交付先未定とは、交付先を公募等で決定する事業で、公民の配分が未定の事業のことだ。
 医療分を事業別にみると、「地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設または設備の整備に関する事業」が50.3 %(302.9億円)、「居宅等における医療の提供に関する事業」が7.2%(43.1億円)、医療従事者の確保・養成に関する事業」が42.6%(256.4億円)となる。
 事業別の公的機関と民間機関の交付額の配分は、「居宅等における医療の提供に関する事業」で、民間機関が81.1%(35.0億円)と高い割合となっている。
 都道府県別では、東京都が49.0億円で最も多い。次いで、大阪府の37.5億円、神奈川県の26.3億円、福岡県の24.0億円。逆に、最も少ないのは大分県、宮崎県の5.7億円。次いで、秋田県、山梨県、佐賀県の5.8億円となっている。
 介護分は民間機関が71.1%で343.0億円、公的機関が2.9%で14.0億円、交付先未定が26.0%で125.8億円である。
 基金の交付先について老健施設の関係者から、「医療分と介護分のどちらに入れるか判断が難しいとの理由で落とすことのないように」との要望があった。
 また、学識者の委員から「大幅に人口が減る地域の医療・介護サービスの維持に、診療報酬・介護報酬で対応するのは難しい。全国で一定のサービスを維持するため、基金財源を使うべき」との意見があった。

 

全日病ニュース2016年4月1日号 HTML版

 

 

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