全日病ニュース

全日病ニュース

加藤厚労相に2018年度診療報酬改定を答申

加藤厚労相に2018年度診療報酬改定を答申

【中医協・総会】入院医療の評価体系を大幅に見直し、人員体制要件を緩和

 中医協総会(田辺国昭会長)は2月7日、2018年度診療報酬改定の内容を了承し、加藤勝信厚生労働大臣に答申した。今回の改定は、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を見据え、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築を目指すとともに、働き方改革への対応も図った。特に入院基本料では、評価体系を全面的に組み換える大幅な改定となった。答申後の会見で中医協委員の猪口雄二・全日病会長は「急性期入院料の大幅な組み換えや、超高齢化社会の進展、若年層の減少を視点に置いた改定となった」と述べた。
入院基本料を再編
 入院医療については、一般病棟入院基本料、地域包括ケア病棟入院料等、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料の評価体系が変わることになった。様々な経過措置があり、当面の変化は小さいが、将来的に大きな変化となる可能性がある。
 現行の7対1、10対1入院基本料は、急性期一般入院基本料となる。現行の7対1と10対1の中間の評価を設けることで、7段階の入院料となる。最も高い急性期一般入院料1は1,591点で現行7対1と同じ評価となる。急性期一般入院料7は1,332点で現行10対1と同じ。10対1に看護必要度加算1~3を加えた点数もそのままだ。
 一方、新たにできた中間的な評価の急性期一般入院料2は1,561点、同3は1,491点である。特に、「2」は現行7対1の1,591点に近い。これまで7対1と10対1の点数差が大きいことが、7対1からの転換を躊躇させる要因の一つとされており、それを縮小することで転換を促す考えだ。
 看護配置は「1」が7対1、その他は10対1で、10対1が基本になる。
 7対1相当の急性期一般入院料の要件である「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は「25%以上」から「30%以上」に上がり、厳しくなった。認知症・せん妄の患者を該当しやすくするなど、項目・定義の見直しにより、基準自体が緩和された面もあるが、支払側が厳格化を主張し、診療側と意見が対立。公益委員の裁定によって決着がついたが、両者の言い分を踏まえ、「30%」という水準になった。
 DPCデータの診療実績データを「重症度、医療・看護必要度」の代わりに用いることができることも注目される。
 病院は、従来の方法とDPCデータによる判定方法を選択できるが、7対1からしか移れない急性期一般入院料の2と3は、診療実績データのみの患者判定となる。なお、200床未満の病院には、どちらの判定方法も用いることができる経過措置が設けられた。
地域包括ケアで中小病院を評価
 地域包括ケア病棟入院料は200床未満の病院だけが算定できる入院料が設けられた(入院料1、3)。現行の2,558点に対し、2,738点である。13対1の看護配置などを基本に、現行の入院料1と2の間の在宅復帰率や室面積の評価に、実績評価部分が加わる。実績評価部分は「自宅等から入棟した患者割合が1割以上」、「自宅等からの緊急患者の受入れが3月で3人以上」、「在宅医療等の提供」「看取りに対する指針」がある。地域包括ケアを担う中小病院を評価する内容となっている。
 回復期リハビリテーション病棟入院料は看護職員やPT・OT の配置を基本に、一定の体制と実績、「実績指数」(1日当たりのFIM得点の増加を示す指数)の評価が加わる。入院料1(2,085点)の場合、実績部分は「日常生活機能評価10点以上の重症者の割合3割以上」「重症者における退院時の日常生活機能評価で3割以上が4点以上改善」であり、実績指数は37点以上となっている。点数は2,085点で、現行の入院料1の2,065点を上回る。
療養病棟は20対1に統一
 療養病棟入院基本料は現行の20対1に統合する形となる。療養病棟入院料1の医療区分2・3の該当患者割合は「8割以上」、療養病棟入院料2は「5割以上」となった。その上で、各患者の医療区分・ADLの状況で点数に差がつく。点数は基本的に、現行と同じだ。また、20対1または医療区分2・3の「5割以上」を満たせない25対1と、25対1を満たせない30対1は経過措置として残る。前者は1割、後者は2割の減算となる。
 25対1の経過措置は「まずは2年間」としたが、介護医療院と同様に6年間となりそうだ。30対1の経過措置は明確に「2年間」としている。
 診療実績データの提出は多くの病棟に広がった。現行では「7対1、10対1(一部)、地域包括ケア病棟入院料」が対象だが、「急性期一般入院料1~7、特定機能病院入院基本料(一般病棟10対1)、専門病院入院基本料(10対1)、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院料」になる。急性期ではない病棟が含まれるため、データ項目を見直す。
医療介護の連携を強化
 「退院支援加算」は「入退院支援加算」に名称を変更し、入院前を含め、切れ目のない支援を行うことを明確化する。
 さらに、同加算に対する加算である地域連携診療計画加算を算定できる医療機関を拡大するとともに、生活困窮者など支援の対象となる患者要件を追加する。入院前からの支援では、「入院時支援加算」(200点)を新設する。
 廃止が予定されていた要介護・要支援被保険者への維持期・生活期の疾患別リハビリテーション料は、1年間に限り延長された。一方で、介護保険への移行策を用意した。医療保険と介護保険の双方で使用可能な計画書の共通様式を設け、それを使って、介護保険のリハビリテーション事業所に情報提供した場合の「リハビリテーション計画提供料1」(275点)を新設する。
 働き方改革を念頭に、人材を有効に活用するための改定を多く盛り込んだのも今回の特徴だ。100床未満の病院には、一時的に夜間の救急外来で看護体制が満たせなくなった場合なら入院基本料の5%の減算で済む措置を設ける(年6日)。医師の常勤配置の緩和では、「小児科・産婦人科・精神科・リハビリテーション科・麻酔科等」で「週3日以上かつ週24時間以上」の勤務の非常勤職員を組み合わせた常勤換算を認める。専従要件の緩和では、緩和ケア診療加算などチームで診療する場合の専従者を減らすほか、患者数が一定数以下なら全員専任を認める。
 そのほか、かかりつけ医機能を評価する初診での加算(80点)やオンライン診療料(70点)の新設、病床数500床以上を要件とする診療報酬を「400床」にするなど様々な見直しがある。

全日病ニュース2018年2月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 次期改定に向けてこれまでの「議論の整理」まとめる|第910回/2018 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180201/news03.html

    2018年2月1日 ...中医協総会】7対1、10対1は急性期一般入院料に. 中医協総会(田辺国昭会長)は1
    月12日、次期診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理」をまとめた。社会保障
    審議会医療保険部会・医療部会が策定した基本方針(12月11日)に沿って、項目 ...
    中医協総会は1月10日に、入院医療や外来医療の残された課題を議論した。入院医療
    では「重症度、医療・看護必要度」や現行の7対1、10対1入院基本料の評価体系見直し
    、外来ではかかりつけ医機能に対する初診の評価が論点になった。 一般病棟 ...

  • [2] 7対1「看護必要度」の患者割合は25%、200床未満は23%|第864回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160215/news01.html

    2016年2月15日 ... 最優先事項となった一般病棟7対1入院基本料算定病棟の削減に向けて、一般病棟用「
    重症度、医療・看護必要度」該当患者の割合は25%(現行15%)とされた。在宅復帰率
    は分子に在宅復帰機能強化加算を算定する有床診 ... 見直しにともなう該当患者割合
    要件は、7対1入院基本料に関しては25%(現行15%)に、10対1入院基本料の急性期
    看護補助体制加算と看護職員夜間配置加算の要件としては6%(5%)に、それぞれ
    引き上げられた。 いずれも16年9月30日までの経過措置が認められたが、 ...

  • [3] 中医協が千葉県千葉市で地方公聴会を開催|第910回/2018年2月1 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180201/news02.html

    2018年2月1日 ... 中医協が千葉県千葉市で地方公聴会を開催. 【2018年度診療報酬改定】病院の立場
    から7対1削減に懸念を表明. 中医協(田辺国昭会長)は1月19日、次期診療報酬改定
    の地方公聴会を千葉県千葉市で開催した。中医協がまとめたこれまでの議論の整理(
    現時点の骨子)を踏まえ、改定に対する意見を聴取した。 病院の立場からは、入院基本
    料算定の要件である「重症度、医療・看護必要度」の見直しで、現行の該当患者割合の「
    25%以上」を引き上げるべきではないとの意見が出た。一連の見直し ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。