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新専門医制度の採用・登録状況について報告受ける

新専門医制度の採用・登録状況について報告受ける

【厚労省・医師養成あり方等検討会】大都市への偏在めぐり、正確なデータが求められる

 日本専門医機構は1月29日の「今後の医師養成のあり方と地域医療に関する検討会」(遠藤久夫座長)に、来年度から始まる新専門医制度の専攻医の採用・登録状況を報告した。2次登録を終えた採用者数の合計は8,342人。松原謙二副理事長は、「大都市への医師偏在は拡大していない」と強調した。
 ただ、大都市集中を否定する明確なデータが示されておらず、機構は専攻医の従事場所などを今後把握していく姿勢を示した。
 同検討会は医師偏在の拡大への懸念から新専門医制度の開始が1年延期されたことなどを受けて、設置された。
 厚生労働省は検討会を通して、新専門医制度の問題を把握し、必要があれば、具体策を講じる役割を負っている。
 松原副理事長の報告によると、機構は昨年10月10日に1次登録を開始し、11月15日の締切りまでに7,989人が登録した。12月15日までに7,791人の採用を決めたが、その後18人が辞退した。
 12月16日から2次登録が始まり、1月15日の締切りまでに569人が新たに登録された。その結果、2次登録までの合計は8,342人となった。
 機構は大都市部への専攻医の集中を抑制する観点から、5都府県(福岡、大阪、愛知、神奈川、東京)の採用者数が過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えないよう上限を設定した。現時点における5都府県の領域別の採用者数と2次登録者数の合計は、「いずれも過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えておらず、都市部への集中は抑制されている」と松原副理事長は説明した。
 内科・外科などの領域別の専攻医数についても、概ね過去5年の専攻医採用実績と一致しているという。
 しかし採用・登録状況に関しては、「東京に専攻医が集中している」、「内科の専攻医数が大きく減った」など各方面から様々な指摘が出ている。委員からも、それらを懸念する意見が相次いだ。松原副理事長は、機構は都道府県の専攻医を基幹病院の採用人数で計算しており、従事場所で計算している厚労省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」と比較すると誤差が生じることなどを説明した。
 ただ、委員からは、医学部に地域枠などの定員増があり、人数が増えている状況で、偏在が拡大しているようにみえることは問題との意見があった。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、初期臨床研修制度では、大都市偏在が緩和されているのに、専門医の研修ではむしろ拡大していることを問題視した。同日、奈良県知事の荒井正吾委員の提出資料で、2016年度の5都府県以外の初期臨床研修医は全体の60.3%であるが、専攻医では53.9%(2020年度見込み)とのデータが示されている。
 機構が都道府県の専攻医を基幹病院の採用数で把握しているために、派遣先の実際の従事場所での把握ができないことに対しては、機構として、今後状況を把握する意向を示した。現時点での5都府県の上限設定やその調整の詳細なデータも提出するとした。基幹病院が近隣県に専攻医を派遣することで医師偏在を緩和することに対し委員からは、「人事権を握られる」、「大学医局の復活になる」との懸念が出た。

全日病ニュース2018年2月15日号 HTML版

 

 

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