全日病ニュース

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入院医療の評価体系を抜本的に見直す 医療提供の実績に関する評価指標を導入

【全日病 2018年度診療報酬改定説明会(3月13日)】

入院医療の評価体系を抜本的に見直す
医療提供の実績に関する評価指標を導入

2018年度診療報酬改定の概要(医科) 厚労省保険局医療課 課長補佐 中谷祐貴子(発言要旨)

 今回の診療報酬改定では、入院医療の評価体系を抜本的に見直した。今までは、病床の種類プラス看護職員の配置を基本としてきたが、今回着目したのは、医療ニーズと医療資源投入の関係である。診療報酬を考えるときに、医療ニーズの高い人にきちんと医療資源を投入することが大切である。医療ニーズが高いのに、資源が投入されなければ粗診粗療のおそれがある。一方、医療ニーズが低いのに、投入される資源が多いと非効率である。医療ニーズと資源投入量を合わせる形で報酬がつくことを考えた。
   資源投入を考えるに当たっては、人員配置だけでなく、実際に病棟で重症の患者をどれくらいの割合で診ているか、どれくらいのアウトカムを出しているかを組み合わせて評価する体系に変えた。
 基本的な医療を評価する部分は看護職員配置であり、急性期医療は10対1、急性期~長期療養は15対1、長期療養は20対1を基本部分とし、2階の部分はきめ細かく、医療の実績を評価する指標を組み合わせて階段をつくった。これからは資源投入も難しくなる。ニーズやアウトカムに関する指標により、どれだけのパフォーマンスを出しているかという評価指標を入れたことが今回の改定の主眼である。
 また今回は、既存の指標を使って体系を組んだが、次回以降は指標が変わる可能性がある。どういう指標で医療の実績を評価するかが今後の課題となる。
●急性期一般入院基本料
 7対1と10対1の一般病棟入院料については、「急性期一般入院基本料」にまとめた。「急性期一般入院基本料」は、入院料1~7の全体を指すときに使い、個別の入院料は、「急性期一般入院料1」という名称になり、「基本」の2文字がなくなる。
 医療ニーズにあわせて必要な資源を投入するべきだが、これまでは医療ニーズが低いときにすぐに10対1に移れないことが問題だった。7対1と10対1の間に点数差があって、病棟の区分が違うと看護職員の傾斜配置ができず、弾力的な運用ができなかった。このために7対1と10対1の差を取り払って、1つの入院料とした上で2階建ての構造にした。それぞれ届出は必要だが、「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)以外の基準は概ね共通となっている。
 7対1入院基本料は、9月30日までの間は、急性期一般入院料1とみなせることとした。必要度の基準は変わったが、それ以外の要件は基本的に同じである。
 7対1と10対1の間にギャップがあったので、その間に急性期一般入院料2と3を新たにつくった。
 入院料3と4の間は他よりは少し差がある。急性期一般入院料の1~7のうち、入院料の2と3については、入院料1の実績が必要という条件がある。入院料2と3については、指標が的確かどうかを検証する必要があるため、調査に参加することとデータ提出に協力することが要件になっている。
 入院料1と4、5、6、7は、以前の入院基本料と基本的に要件は同じであり、入院料2と3は、新しく出来たので、新規に届出が必要である。
●重症度、医療・看護必要度Ⅱを新設
 表は、要件の一覧である。実績部分の評価として、「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」を新たにつくった。
 評価項目は、基本的に従来と同じだが、DPC提出データのEF統合ファイルを使って判定する。A・B・Cの項目のうち、AとCについて、EF統合ファイルで判定する。
 入院料1の基準値をみると、必要度Ⅰが30%以上、必要度Ⅱが25%以上で、必要度Ⅱについては5%程度低い値が基準値になる。
 EF統合ファイルですべての評価項目を拾うことはできないので、EF統合ファイルを使う場合には該当患者割合が低目に出る傾向がある。技術的な問題であるが、評価しようとしているものは、基本的に同じであることを検証し、必要度Ⅱとして導入した。
 医療機関が急性期一般入院基本料を届け出る場合は、必要度ⅠかⅡのどちらにするかを届け出ることになる。
 急性期一般入院料2および3は、200床以上に関しては必要度Ⅱを選択することが必須要件となっている。また、追加の施設基準がある。
 届出前の3カ月において、急性期一般入院料2については急性期一般入院料1の算定実績、入院料3については入院料1または2の算定実績が必要である。
 この要件については経過措置があり、2018年3月31日に一般病棟7対1入院基本料と病棟群単位の届出をしている病棟については、2020年3月31日までの間は継続して3カ月以上の入院料1または2の算定実績に係る要件を満たしているものとする。また、200床未満の病院については、2020年3月31日までの間は、必要度Ⅰを用いて差支えない。
 必要度Ⅱは、データが適切であることを要件とした。事前に調査したところ、必要度Ⅱのデータの中に、もともとのⅠのデータと乖離があるものがいくつかあった。このため、一定の基準を設ける必要があると考え、「Ⅱを用いる場合は、届出前3カ月において、必要度の基準を満たす患者の割合について、ⅠとⅡの各入院料等の基準を満たした上で、Ⅱの基準を満たす患者の割合からⅠの基準を満たす患者の割合を差し引いた値が0.04を超えないこと」を要件とした。
 例えば、必要度Ⅱで、急性期一般入院料1を届出る場合、届出前3カ月の該当患者割合で、必要度ⅠとⅡの基準値を満たす必要がある。その上で、Ⅱの該当患者割合からⅠの該当患者割合を差し引いた値が0.04(4%)を超えないことが求められる。
 仮にⅠの値が30%、Ⅱの値が35%だったとすると、それぞれ該当患者割合の基準はクリアするが、35-30=5%であり、4%を超えているので、要件を満たせないことになる。
 EF統合ファイルを使って必要度Ⅱを計算するとⅠの値よりは低い値が出る傾向があり、高い値が出るのは、判定に用いるデータに不備がある可能性があるということを意味する。
 必要度ⅠとⅡの切り替えをするのは、4月または10月に限られる。ただし、入院料の変更に伴う必要度の変更はいつでもよい。
 なお、総合入院体制加算等の加算において、必要度の要件が定められているものについても必要度Ⅱを使えるように基準値を設定した。
 急性期一般入院料2と3については、必要度Ⅰは選択できない(200床未満は選択可能)が、必要度Ⅱを届け出る際に、必要度ⅠとⅡの基準を満たすことが求められる。この場合の必要度Ⅰの基準値は、通知に定められていて、入院料2は29%、入院料3は28%である。
 在宅復帰率については、名称を「在宅復帰・病床機能連携率」に変更するとともに、分子の部分を見直し、介護医療院を居住系介護施設に含めることとした。介護療養は入っていないので、介護医療院に移れば在宅復帰率のカウント対象となる。
 また、療養病棟等は、在宅復帰機能強化加算を算定している施設に限定していたが、加算の有無による違いはなくなった。
 この見直しにより、在宅復帰率はベースアップになるが、基準値自体は8割のままとした。次の改定で、評価指標の見直しを検討することになっている。
 13対1、15対1の一般病棟入院基本料は、地域一般入院基本料になるが、基本的に今の形をそのまま引き継いでいる。
●地域包括ケア病棟入院料
 地域包括ケア病棟入院料では、特に「在宅で療養を行っている患者等の受入れ」の機能を重視した。
 自宅等からの緊急入院の受入れや在宅医療の提供、看取りに対する指針の策定を要件とし、インセンティブをつけた。
 在宅の患者を受け入れる機能を評価する報酬体系とするとともに、この部分の評価の対象は、200床未満に限っており、200床未満の病院に限定して新たな入院料1と3ができた。
 在宅復帰率では、介護サービスを担っている有床診療所を分子に参入することになった。救急・在宅等支援病床初期加算は、急性期病棟から受け入れた患者と、在宅から受け入れた患者の2つに分けて、在宅からの患者の評価を充実している。また、看取りに関する指針に係る要件が追加された。
●回復期リハビリテーション病棟入院料
 回復期リハビリテーション病棟は、7万床を超え、量的には満たされていると認識していて、アウトカムを出せるところをより評価することとした。FIM得点を踏まえたリハビリの実績指標で評価することになっている。
 入院料1においては、管理栄養士がリハビリテーション実施計画書の作成に参画することにした。管理栄養士の病棟配置は努力義務であるが、栄養状態の評価を求めている。また、管理栄養士が入院栄養食事指導料を行った場合は、出来高算定できる。
●療養病棟入院料
 長期療養では、20対1をベースとし、医療区分2・3の患者の割合で実績を評価することとした。20対1を満たさない施設は、新たに経過措置1を設けている。さらにそれも満たせない場合は、経過施設2を設けている。
 72時間の夜勤の要件が療養病棟入院基本料2のみ対象になっていたが、療養病棟入院基本料1(20対1)の基準に一本化するので72時間の要件はなくなる。経過措置についても72時間の要件はなくなる。
 今まで一つの病院で、療養病棟入院基本料1と療養病棟入院基本料2の両方を持つことができたが、新体系では20対1に一本化したので、これはできなくなった。同一の病院は、療養病棟入院料1か2のどちらかになる。ただし、療養1と経過措置、あるいは療養2と経過措置という形の組み合わせはできる。
 療養病棟に関しては、基本的に届出が必要になるので留意してほしい。

 

全日病ニュース2018年4月1日号 HTML版

 

 

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    緩和された。さらに、 ... それから、7対1と10対1の急性期看護補助体制加算は、夜間の
    25対1を30対1に緩和した上で、50対1や100対1を含めて点数が増えた。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年12月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/171215.pdf

    2018年1月11日 ... 面要件の緩和、12月6日は再び急性. 期入院医療をテーマとして議論した。 また、11月
    22日の薬価専門部会では、. 薬価制度の抜本改革案が示された。 基準値は現行どおり
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  • [3] 都会で在宅医療を担う病院

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140501/news11.html

    2014年5月1日 ... 本稿では自施設の実績をもとに、在宅医療における診療報酬改定の影響を検討する。
    当法人の中核である等潤病院は164床のケアミックス病院で、病床の内訳は一般122
    床(亜急性8床)、回復期リハ42床である。DPC対象病院で入院基本料は10対1、平成
    25年度実績で医療機関係数は1.1950、一般病床平均在院日数14.0日、全病床稼働率
    89.5%、救急搬送件数2,214台(二次救急)である。 東京都足立区は大学病院などの
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