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相次ぐ災害踏まえ、EMIS 改善の方針で一致

相次ぐ災害踏まえ、EMIS 改善の方針で一致

【厚労省・救急災害体制在り方検討会】操作性向上や入力項目の追加図る

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は9月27日、各地で相次いだ災害を踏まえ、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を改善する方針で一致した。操作性向上や入力項目の追加、登録基準の設定などにより、災害時の入力率向上などを図る。ドクターヘリの運用上の課題も議論した。
 当初は救急医療を議題とする予定だった。しかし、相次ぐ災害で、EMIS に対する課題が浮かび上がり、委員から早期の議論を求める要望があり、急きょ、議題が変更になった。EMIS は、災害時に被災した医療機関が必要とする支援情報を迅速に収集し、災害医療拠点病院など医療機関、医療団体、消防、保健所、市町村などが情報を共有し、緊密な連携を図ることを目的としている。
 ところが、7月豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震において、情報が十分に把握されず、「電話やDMAT、保健所職員などが直接現地に赴き、確認するなどの全数調査を余儀なくされた」という。
 厚労省はEMIS の問題点を、①システムの操作性が悪い②入力を促すプッシュ型システムとなっていないことから、病院の入力が少ない③断水時の給水支援、停電時の自家発電の燃料補給、非常用電源がない場合の電源車派遣に必要な入力情報が不足している─と整理した。また、停電時にインターネットが使えなくなる問題も指摘した。その上で、これらの課題に対応するための方向性を示し、概ね了承を得た。
 操作性の改善では、EMIS のバージョンアップを図り、円滑な動作を実現する。ユーザーに優しいインタフェースにして、多くの医療関係者が入力しやすい仕様とする。
 イノベーションを取り入れ、EMISアプリを開発して、タブレットやスマーフォンによる閲覧・入力も可能とする方向だ。また、通信途絶状況での対応も検討する。人力を用いず、自動的に入力される項目をできるだけ増やしていく意向も示された。入力率を上げるため、プッシュ型システムとし、訓練モードも設定する。
 また、北海道胆振東部地震では、長期の停電が予測されたため、透析診療所など病院以外の情報収集も必要になったので、インセンティブを設けた上で、特定の診療所の登録を義務化する。
 入力項目の追加では、平時から入力する基礎情報として、貯水槽や自家発電機の有無、容量、燃料種別などをあげた。被災時に入力する項目としては、水や燃料の残量や枯渇するまでの期間などを示した。
 ドクターヘリについては、現状で指摘されている課題を踏まえ、公立豊岡病院但馬救命救急センターの小林誠人センター長、東海大学医学部救命救急医学の猪口貞樹教授、全日本航空事業連合会ドクターヘリ分科会の辻康二委員長からヒアリングを行った。
 一方、厚労省は今後の課題として、◇都道府県間の連携運用の強化◇ドクターヘリ特有の問題や運用方法の妥当性の検証◇安全性の観点から双発性エンジンの機体◇夜間運航の整備をあげた。委員からは様々な意見が出たが、引き続き議論の整理が必要となった。

 

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