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ホーム全日病ニュース(2019年)第944回/2019年7月15日号「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」で通知...

「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」で通知

「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」で通知

【資料】

 厚生労働省は7月1日、「医師の働き方改革に関する検討会報告書」を踏まえ、「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」 に関する通知を発出した。なお、両通知の趣旨を説明する留意事項通知(基監発0701第1号)も同日付で出ている。

医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日・基発0701第8号)
 医師、看護師等(以下「医師等」という)の宿日直勤務については、一般の宿日直の場合と同様に、それが通常の労働の継続延長である場合には宿日直として許可すべきでないことは、昭和22年9月13日付け発基第17号通達に示されているところであるが、医師等の宿日直についてはその特性に鑑み、許可基準の細目を次のとおり定める。
 なお、医療法(昭和23年法律第205号)第16条には「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と規定されているが、その宿直中の勤務の実態が次に該当すると認められるものについてのみ労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「規則」という)第23条の許可を与えるようにされたい。
 本通達で、昭和24年3月22日付け基発第352号「医師、看護婦等の宿直勤務について」は廃止するため、了知の上、取扱いに遺漏なきを期されたい。

1 医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、規則第23条の許可(以下「宿日直の許可」という)を与えるよう取り扱うこと。
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえず、その間の勤務は、宿日直の許可の対象とはならないこと。
(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限る。例えば、次に掲げる業務等をいい、下記2に掲げる通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。
・医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
・医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日
・夜間(例えば非輪番日であるなど)に、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等への指示、確認を行うこと
・看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)に、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
・看護職員が病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
(3)上記(1)、(2)以外に、一般の宿日直の許可の条件を満たしている。
2 上記1によって宿日直の許可が与えられた場合において、宿日直中に、通常の勤務時間と同態様の業務に従事すること(医師が突発的な事故による応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等に対応すること、又は看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うこと等)が稀にあったときは、一般的にみて、常態としてほとんど労働することがない勤務であり、かつ宿直の場合は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り、宿日直の許可を取り消す必要はないこと。また、当該通常の勤務時間と同態様の業務に従事する時間について労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という)第33条又は第36条第1項による時間外労働の手続がとられ、法第37条の割増賃金が支払われるよう取り扱うこと。
 したがって、宿日直に対応する医師等の数は、宿日直の際に担当する患者数との関係又は当該病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて、上記のように通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものは、宿日直の許可を与えることはできない。
3 宿日直の許可は、一つの病院、診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることができる。例えば、医師以外のみ、医師について深夜の時間帯のみといった許可のほか、上記1(2)の例示に関して、外来患者の対応業務が許可基準に該当しないが、病棟宿日直業務については許可基準に該当するような場合は、病棟宿日直業務のみに限定して許可を与えることも可能であること。
4 小規模の病院、診療所等においては、医師等が、そこに住み込んでいる場合があるが、この場合にはこれを宿日直として取り扱う必要はないこと。
 ただし、この場合であっても、上記2に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務に従事するときは、法第33条又は第36条第1項による時間外労働の手続が必要で、法第37条の割増賃金を支払わなければならない。

医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について(令和元年7月1日・基発0701第9号)
 医療機関等に勤務する医師が、診療等その本来業務の傍ら、医師の自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究等(以下「研鑽」)については、労働時間に該当しない場合と労働時間に該当する場合があり得るため、医師の的確な労働時間管理の確保等の観点から、今般、医師の研鑽に係る労働時間該当性に係る判断の基本的な考え方並びに医師の研鑽に係る労働時間該当性の明確化のための手続及び環境整備を、下記のとおり示すので、その運用に遺憾なきを期されたい。

1 所定労働時間内の研鑽の取扱い
 所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)で研鑽を行う場合は、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となる。
2 所定労働時間外の研鑽の取扱い
 所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない。
 他方、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われる場合は、これが所定労働時間外に行われるものでも、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものである。
 所定労働時間外において医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・黙示の指示によらずに自発的に行われるものも少なくないと考えられる。このため、その労働時間該当性の判断が、当該研鑽の実態に応じて適切に行われるよう、また、医療機関等における医師の労働時間管理の実務に資する観点から、以下のとおり、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方を示すこととする。
(1)一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬の勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習等が考えられる。
イ 研鑽の労働時間該当性
 業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間は、在院して行う場合でも、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは該当する。
(2)博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、学会や外部の勉強会への参加・発表準備、院内勉強会への参加・発表準備、本来業務とは区別された臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆、大学院の受験勉強、専門医の取得や更新に係る症例報告作成・講習会受講等が考えられる。
イ  研鑽の労働時間該当性
 上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽の時間は労働時間に該当する。
 上司や先輩である医師から奨励されている等の事情でも、自由な意思に基づく研鑽と考えられる例として、次のようなものが考えられる。
・勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である
・学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない
・研究が本来業務でない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動しているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的である
(3)手技を向上させる手術の見学
ア 研鑽の具体的内容
 例えば、手術・処置等の見学の機会の確保や症例経験を蓄積するために、所定労働時間外に、見学(見学の延長上で診療(診療の補助を含む。下記イにおいて同じ)を行う場合を含む)を行うこと等が考えられる。
イ 研鑽の労働時間該当性
 上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思で所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学や待機時間については、在院して行う場合も、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
 ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。
3 事業場での研鑽の労働時間該当性を明確化する手続及び環境の整備
 研鑽の労働時間該当性の基本的な考え方は、上記1及び2のとおりだが、各事業場における研鑽の労働時間該当性を明確化するために求められる手続及びその適切な運用を確保するための環境の整備として、次に掲げる事項が有効と考えられ、研鑽を行う医師が属する医療機関等に対し、次に掲げる事項に取り組むよう周知すること。
(1)医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続
 医師の研鑽については、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化する手続を講ずること。例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合は、医師自らがその旨を上司に申し出て、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間の当該申出のあった研鑽に関し、
・本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しない
・当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと
・上司が当該研鑽を指示しておらず、かつ当該研鑽を開始する時点で本来業務及び不可欠な準備・後処理は終了し、本人は業務から離れてよいこと
 について確認することが考えられる。
(2)医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための環境の整備
 上記(1)手続について、その適切な運用を確保するため、次の措置を講ずることが望ましいものであること。
ア 労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとして、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことを明確化しておくこと。
イ 医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。
ウ 上記イで書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際して、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人にもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。
 また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。
エ 上記(1)の手続をとった場合、医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第109条で労働関係に関する重要書類を3年間保存するとされていることも参考に定めること。

 

全日病ニュース2019年7月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医師、看護師等の宿日直許可基準について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190702_1.pdf

    2019年7月1日 ... 医師、看護師等(以下「医師等」という。)の宿日直勤務については、一般. の宿日直
    場合と同様に、それが通常の労働の継続延長である場合には宿日. 直として許可すべ
    きものでないことは、昭和22年9月13日付け発基第17号通. 達に示され ...

  • [2] 医師の宿日直は実態に合わせて基準を見直す|第926回/2018年10月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181001/news11.html

    2018年10月1日 ... 宿日直では実態に合った基準の見直しが求められたほか、自己研鑽では労働とそう
    でないものの切り分けが課題となっている。 ... このうち、①であれば、現状でも病院の
    管理者が労働基準監督署長の許可を得ることで、割増賃金を支払う義務のある時間外
    労働ではなくなる。 ... 医師は宿日直を含め、連続勤務が多く、宿日直がいわゆる「寝
    当直」であっても、疲労感は蓄積されるとの観点から、重要な論点になる方向 ...

  • [3] 医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す|第925回/2018年9月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180915/news02.html

    2018年9月15日 ... 医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す|第925回/2018年9月15日号 HTML
    版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、 ... 引続き、医師に適用する時間外
    労働の上限規制や勤務環境改善策の検討を行い、来年1月までに骨子をまとめることを
    了承した。 ... 現行の労働基準法では、「監視または断続的労働」に従事する者で、使用
    者が労働基準監督署長の許可を受ければ、時間外労働規制の適用外 ...

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