全日病ニュース

全日病ニュース

災害に弱い大都市に警鐘

災害に弱い大都市に警鐘

【特別講演5】南海トラフ地震に備える

 「必ずくる震災でも病院が機能するために」と題する特別講演で、名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫教授は「南海トラフ地震が切迫している」と警鐘を鳴らした。過去と同規模の地震が起きれば、東京など大都市は大混乱に陥り、被害は計り知れない。電気が止まり、物流が止まり、人も燃料も来ない。その時、病院は機能するか。あらゆる力を結集し、南海トラフ地震に備えるべきだと福和教授は訴えた。
 地震、大雨、台風など多くの自然災害が日本各地を襲っている。最近では、比較的小型の台風15号が、首都圏の災害に対する脆弱さを露呈させた。これまでの災害を経て、災害支援活動は着実に改善が図られている。しかし、予測される南海トラフ地震の規模だと、特に大都市において、病院が機能を継続することは現状の備えでは難しい。
 南海トラフ地震は過去100 ~ 150年の周期で発生し、常に日本の歴史の転換期を作ってきたと福和教授は言う。次に起きる南海トラフ地震の被害は30万人以上の死者、60万人以上の負傷者、240万棟もの建物の全壊・焼失。経済損失は1,410兆円に上るとの予想もある。
 災害時に最も必要とされる病院の事業継続には、電気・ガス・通信・上下水道のライフラインが不可欠だが、南海トラフ地震で被害が大きな地域だと、これらが止まる。交通も寸断され、信号なども機能せず、物流が止まり、医薬品や医療材料が届かなくなる。
 発生が夜であれば、職員が病院に来ることができない。自家発電や備蓄の整備も進むが、限りがある。災害拠点病院は、建物は立派だが、脆弱な地盤の上にある病院も少なくないと福和教授は指摘。大都市のあり方そのものを見直す必要があると訴えた。
 前回の地震から75年目を迎え、今後30年間の発生確率は70 ~ 80%と言われる。いつ起きてもおかしくないと気を引き締める必要があると述べた。

 

全日病ニュース2019年10月15日号 HTML版