全日病ニュース
民間病院の存在が効率的な医療提供体制に不可欠
民間病院の存在が効率的な医療提供体制に不可欠
【太田学会長講演】官民の公平な競争条件を求める
わが国の医療提供体制は、変革の真っ只中である。政府は、9月20日に全世代型社会保障検討会議を立ち上げた。この会議の議論は今後の医療提供体制に大きな影響を及ぼすはずだ。2020年代の制度改革により、今後の医療提供体制が決まるだろう。
しかし、現在進められている改革は、真に効率的で良質な医療を提供する方向に動いているだろうか。多くの地域で、効率的に医療を提供している民間病院があるにもかかわらず、公立病院が地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟を整備する事例がある。医師の働き方改革でも、医師を集めることができて、人件費が増えても潰れることのない病院が生き残る方向にないだろうか。
公立病院には、毎年8,000億円の繰入れが行われており、公立病院と民間病院はイコールフッティング(公平な競争条件)になっていない。その中で、今後の医療提供体制を左右する改革が進められている。今こそ真剣に官民の問題を考えなければならない。
効率的な医療提供体制を構築するためには、適切で適正な診療報酬が必要である。しかし、急性期医療に対する診療報酬の評価は不十分だ。2017年の医療経済実態調査では一般病院の収支はマイナス4.2%であり、産業として成り立っていない。医療機関の経営状況と関係なく、厳しい診療報酬改定が続いているのは、国民に急性期医療の窮状が伝わっていないからだ。公立病院に対する他会計繰入金が適切な診療報酬を設定する阻害要因になっている。官民格差の最大の弊害である。
平等な競争条件が整っていない中で、医療提供体制の大幅な見直しが進んでいる。しかし、効率的な医療提供体制に移行していくためには、効率的に医療を提供する主体が生き残り、持続して医療を提供できる診療報酬が不可欠である。多くの地域で民間病院が地域の医療を支えてきた歴史がある。より効率的な医療を提供できる主体が存在しているからこそ、公立病院の非効率性がわかる。
今後の改革は、民間病院にとって厳しいものになると危惧している。しかし効率的な医療を提供してきたといういうプライドがあるなら、各地で闘っていかなければならない。調整会議で公立病院のダウンサイジングを主張するのは簡単ではないだろう。自院に有利になるという次元の話ではなく、効率的な地域医療をつくるために必要である。地域の医療を守るのは自分たちであるという矜持を保ち、日本の医療の未来のために頑張っていただきたい。
全日病ニュース2019年10月15日号 HTML版
[1] 第5章 医療提供体制:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版 ...
https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/05.html
これには19 に及ぶ多くの法が含まれているが、医療提供体制に大きく関与するのは「
地域医療構想」であり、特に「病床機能報告 .... 地域に根ざした民間中小病院として
生き残るために我々医療提供者が「地域包括ケアシステム」の中でなすべきことは、「
急性期 ... 病床数の計算には、4区分の境界として、入院基本料やリハビリテーション料
等を除いた、主として医療行為の出来高換算値が示されているが、診療報酬を根拠に
病床区分を ...[2] 第3章 医療提供体制のあり方
https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/200410-02.pdf
された DPC による診療報酬一部包括化などは、医療機関の機能分化を促進するのに.
寄与した。 .... 地域密着型医療施設である民間病院の使命である。 ⑤医療機関、介護・
.... 一般病床については、「医療提供体制の改革のビジョン(案)」(厚生労働省医政局、.[3] 四病協のうごき:お知らせ - 全日本病院協会
https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/
全日病(公益社団法人全日本病院協会)による「四病協」(四病院団体協議会:日本病院
会、日本精神科病院協会、日本医療法人 ... ていることから、各病院団体間の共同活動
を求める機運が高まり、日本民間病院連絡協議会を発展的に解消し、新たに日本病院
会を ... 2015.09.05平成28年度 診療報酬改定に向けた救急医療に対する要望
について(H27.9.2) PDFリンク ... 2013.10.07日医・四病院団体協議会合同記者会見「
医療提供体制のあり方―日本医師会・四病院団体協議会合同提言―」(H25.8.18)
PDFリンク ...
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