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ホーム全日病ニュース(2019年)第952回/2019年11月15日号総合医育成プログラムの特徴とメリットを語る

総合医育成プログラムの特徴とメリットを語る

総合医育成プログラムの特徴とメリットを語る

【プライマリ・ケア検討委員会】プライマリ・ケア検討委員会委員長 牧角寛郎

 日本専門医機構において19番目の新領域として創設された総合診療専門医は、日本の人口構成の劇的な変化に伴う地域のニーズに合致するものであり、高齢化による多疾病罹患、認知症、フレイルの増加、また過疎地域においては、小児医療、産婦人科医療等への住民のアクセス困難等、地域包括ケアにおける課題解決の鍵となる。
 しかし、育成の始まった同専門医が活躍するまでには時間を要するところであり、受け入れの体制も十分とはいいがたい。そうした中、全日本病院協会では2018年度より新たに「全日本病院協会総合医育成プログラム」を開始し、総合的・俯瞰的に病院機能の改善を図ることができ、かつ組織の運営に積極的に関与できる人材としての医師の育成を進めている。
 今学会では、総合診療医として活躍する医師と、当協会プログラムを受講している医師計4名を演者に「総合医」とは如何なるものか、また、地域においてどのような役割が求められるのかについて、講演と討論を行った。
 筑波大学の前野哲博教授からは、「総合医育成プログラム」のスクーリングについて説明があった。プログラムは「プライマリ・ケアの現場で一歩踏み出せること」をコンセプトとし、「適切に当直対応をして翌日専門医につなぐ」、「典型的なケースをガイドラインに即して治療する」能力の習得を目標としてイメージしている。また、本プログラムが総合医を育てるためのスクーリングに特に力を入れている点を強調し、受講者からの好評を得ているとのアンケート結果を示した。
 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)東京城東病院の南郷栄秀総合診療科長は、現在総合診療医として勤務している立場から講演を行った。総合診療を「カメレオン」に例え、患者数ベースで8割の疾患に対応できることを示した上で、診療科横断的に活躍できる総合診療医は統合したケアを提供可能であり、またそのケアの提供を通じて、地域のハブとしての機能を果たせることを示唆した。
 社会医療法人赤枝会赤枝病院の須田雅人院長と社会医療法人春回会長崎北病院の陰山寛内科部長は、「全日本病院協会総合医育成プログラム」受講者の立場でそれぞれ発表を行った。
 須田院長は、本プログラムを通じて最新の総合的医療知識のアップデートが可能な点を挙げ、訪問診療を含めた地域医療推進のニーズや地域包括ケアの担う上での有用性をプログラムの特徴として語った。陰山内科部長は実際のスクーリングの様子について詳細に説明し、病院での実際の総合的な診療場面での「自信につながった」こと、「新たな一歩を踏み出そう」という気持ちを得たこと等、受講を通じての自身の変化を紹介した。
 その後、パネルディスカッションが行われ、前野教授は「診療実践」、「ノンテクニカルスキル」という明日から使える知識を取得できることを本プログラムの特徴として改めて強調した。また参加者からは、受講のメリットについての質問があり、日本プライマリ・ケア連合学会の認定する「プライマリ・ケア認定医」の試験が免除となることや、実践的なスキルの取得が挙げられることを説明した。最後に、本研修の受講を組織として評価し、病院として総合医を育てていく仕組みづくりの必要性が述べられ、場を締めた。

 

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