全日病ニュース

業務フロー図を活用して効率化を図る

【病院のあり方委員会】病院のあり方委員会委員長　徳田禎久

　少子高齢化の進展による若年労働者の減少の影響は、医療介護分野でも地域差はあるものの影響が出始めてきており、特に介護系人材・医療機関における補助業務担当者の不足は都市部においても大きな問題となってきている。
　今般の働き方改革は、この問題解決をさらに厳しいものとするものであり、会員病院においても喫緊の大きな課題として取り組むべき事柄であるが、労働者確保が困難な中で不足を補うには、無駄な作業の削除、個々の業務の効率化、連携やタスクシフトなどによる一人の作業量増加を図るしか方法はない。当協会では数年前から「病院のあり方に関する報告書」を通じて、業務フロー図の利用を提唱してきており、当協会主催の研修の中でもその実践の必要性を啓発してきた。
　本シンポジウムでは、業務フローモデル集を提示した著者と研究者から「業務の効率化」に関する基本的事項を示していただくと共に、既に自院運営に関して業務改善を実行している管理者を交えて、実践に向けた要点についての議論を行った。
　当委員会特別委員である東邦大学の長谷川友紀教授からは、本テーマに係る総論として現状の課題の整理と2040年に向けた医療のパラダイムシフトについての示唆が示された。飯田修平委員からは「生産性」、「効率化」の考え方の整理と、業務フロー図を用いた自院での効率化の事例を紹介したうえで、どのような視点で何を目的・目標とするかを規定し、効率化の対象となる業務を明確にすることを要点として挙げた。
　美原記念病院の大𥔎充子事務部長補佐からは、多職種連携による退院支援業務について、業務フロー図を用いた実際の改善事例の、また、織田病院の織田良正総合診療科部長からは、タスクシフト及びタスクシェアの取組について、ICTを用いた動態管理やMedical Bace Campの試みについての紹介があった。
　パネルディスカッションでは、国の議論における「生産性」や「効率化」は抽象的であり、今回の発表事例のような、目的や対象を明確にした具体性を持った取組が肝要である旨意見が挙がった。また、こうした取組を院内でどのように展開していくかについて、病院として何を行っていくかという強い方向性を示すことと、同時に現場で常に改善を進める環境を醸成する必要性について指摘があった。
　今回発表いただいた病院のみならず、各病院では問題解決に向けてすでに様々な実践的取組が行われている。当委員会としては今後、そうした取組について具体的な事例を取りまとめ、事例集のようなかたちで共有することで、会員病院への問題解決への糸口になればと考えている。