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ホーム全日病ニュース(2019年)第954回/2019年12月15日号2022年度以降の医学部入学定員見直しに向け議論開始

2022年度以降の医学部入学定員見直しに向け議論開始

2022年度以降の医学部入学定員見直しに向け議論開始

【厚労省・医師需給分科会】2020年度の地域枠学生は特定の道県で減少

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会(片峰茂座長)は11月27日、2022年度降の医学部入学定員を決めるため、来年春の報告書策定に向けた議論を開始した。医師の現在地の最新データを基にした医師需給推計も改めて実施する。医師の必要数が満たされる時点を見極め、医師偏在対策を実施しつつ、将来的には医師の養成数を減らすことを念頭に議論を行う。
 医師需給分科会の開催は今年3月以来、8カ月ぶり。片峰座長は、医師需給に関連する状況の変化として、医師の働き方改革で2024年度から適用される医師の時間外労働規制の基準が決まったことをあげた。
 また、日本専門医機構による専門医研修募集の際の上限設定(シーリング)で、医師需給推計の手法が使われたことに対し、「寝耳に水だった」と述べた。専門医研修のシーリングに需給推計の手法を用いた理由について厚労省は、「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県にシーリングをかけていたが、新たな医師偏在指標だと、神奈川県と愛知県は医師多数地域ではないことがわかり、見直しが必要になった」と説明した。需給推計の手法については、日本専門医機構の協議会でも現在、妥当性が議論されている。
 全日病副会長の神野正博委員は、「一定の仮定を置いた上での推計であるので、精査を続けより精緻なものにしていく必要がある」と述べた。片峰座長は、妥当性に対し多くの指摘があることに対し、「計算方法をオープンにすべき」と求めたが、厚労省は「すべて明らかにするのは難しい」と回答した。
 神野委員は、地域枠を要件とした臨時定員数が特定の道県で大きく減ったことに注目し、厚労省に説明を求めた。臨時定員数の変化は2019年度と2020年度を比べたもの。現在の臨時募集定員枠は2019年度までと変わらないが、都道府県の要請数により全体の人数が決まる。2020年度の医学部入学定員は9,330人で2019年度の9,420人から90人減った。最大の理由は、地域枠の運用を厳格化したためと考えられる。
 地域枠は2020年度から一般とは別枠で募集し、医師不足の地域で一定期間勤務することを医学部入学前に約束することを徹底させた。2020年度の地域枠の臨時定員数をみると、北海道で20人から8人、宮城県で28人から7人、山形県が15人からゼロ、和歌山県が20人から12人、熊本県が10人から5人など、特定の道県で減少が目立つ。
 厚労省は、個別の道県の状況には立ち入らないとしつつ、「地域枠が厳格に運用された結果だが、一部に関係者間のコミュニケーション不足もあったようだ」と回答した。神野委員は、医学部段階の医師偏在対策で、地域枠が重要な役割を担い、臨時定員だけでなく、恒久定員にも地域枠を導入することを含めた検討が行われることから、一部の道県における地域枠の運用に懸念を示した。

海外医学部卒業の医師を推計で加味
 海外医学部を卒業した医師の取扱いも議論した。海外医学部卒業後に、日本で医師免許を取得し、日本で診療に従事する医師が増加していることを踏まえ、医師需給推計を行う上で、その分を加味して推計することを了承した。今後の動向の予測は難しいものの、日本人、外国人を問わず、日本で診療に従事する海外医学部を卒業した医師が増えていく可能性は高く、対応の必要があるとの認識を一致させた。
 2018年度のデータによると、海外医学部卒業生の医師国家試験合格者数は95人で、全体の1.1%に相当する。このうち、日本人が42人でハンガリーの大学が半数を占める。ハンガリー政府による日本人学生向けの奨学金制度が2014年度から始まったこともあり、近年、ハンガリーの医学部への入学が増えているという。一方、外国人では中国人が28人、韓国人が21人で多い。

 

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