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ホーム全日病ニュース(2020年)第968回/2020年8月1日号第二次補正の病床確保や感染防止対策事業の詳細をみる

第二次補正の病床確保や感染防止対策事業の詳細をみる

第二次補正の病床確保や感染防止対策事業の詳細をみる

【厚労省・事務連絡】新型コロナ緊急包括支援交付金で医療機関を支援

 新型コロナウイルス感染症の事態長期化や次なる流行の波に対応するため、政府は第二次補正予算(6月12日成立)で、新型コロナ緊急包括支援交付金の増額・対象拡大を行った。新規の事業のほか、第一次補正予算による既存事業を含め全額国庫負担にしたことにより、1兆6,279億円を計上した。
 新規事業には、◇重点医療機関の病床確保等(4,728億円)◇患者と接する医療従事者等への慰労金の支給(2,922億円)◇新型コロナ疑い患者受入れのための救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策(1,518億円)◇医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援(2,589億円)があり、財源規模は1兆1,788億円に上る。ただ、病院の関心が高い一方で、交付金の内容にわかりにくい部分がある。
 そこで、慰労金を除く3事業について、6月16日の一連の事務連絡と7月3日の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業に関するQ&A(第4版)に従って、詳細をみていく。

空きベッドに空床確保料を給付
(重点医療機関の病床確保等)

 同事業は、新型コロナ患者専用の病院や病棟を設定する「重点医療機関」や、新型コロナ疑い患者専用の個室病床を設定する「協力医療機関」に対し、新型コロナ感染症患者・疑い患者の受入れ体制を確保するため、空床確保料を給付するものだ。一般の医療機関に対する空床確保料も設定されている。重点医療機関・協力医療機関は都道府県が指定する。
 補助対象の病床は、空床・休止病床。補正成立前に、実質的に専用病棟や専用個室病床を確保していると都道府県が認めれば、遡及して適用される。また、院内感染により、実質的に専用病棟となっている医療機関で、都道府県が認めた場合は、遡及して認めた期間は重点医療機関とみなされる。
 空床確保料は1日当たり、重点医療機関・協力医療機関でICU(集中治療室)が30.1万円、HCU(ハイケアユニット)が21.1万円、その他5.2万円、療養病床である休止病床は1.6万円。一般の医療機関はICU が9.7万円、重症者・中等症者病床4.1万円、その他1.6万円となっている(右表を参照)。
 なお、これらの金額は、診療報酬の特例的な措置による入院料の増額に対応している。つまり、新型コロナ患者の受入れ体制を確保している病院に対して、実際に新型コロナ患者が入院している場合は診療報酬により、空き病床の場合は交付金により、同水準の費用が支払われる形となっている。
 重点医療機関の設定は以下のとおりである。都道府県が指定し、常時指定する病院と、感染の流行状況に応じて柔軟に指定・解除する病院を設けられる。指定の方針は都道府県の協議会に諮った上で決定。都道府県はG-MIS(新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム)などで、運用状況を確認し、厚生労働省に報告する。
 施設要件は、病棟単位で新型コロナ患者・疑い患者の受入れ体制を確保し、すべての病床で酸素投与や呼吸モニタリングを可能としていること。療養病床は認めず、療養病床の設備を活用する場合は、一般病床に種別を変更しなければならない。受入れ患者は、①すでにPCR検査または抗原検査で陽性と確定している患者②疑似症の届出がなされている感染の恐れを医師が認めた入院医療が必要な患者となっている。
 また、この事業以外で病床確保料を受けている場合には、その分は減額となる。
 協力医療機関の設定は以下のとおりである。指定要件は重点医療機関と同様。施設要件は、新型コロナ疑い患者専用の個室を確保し、すべての病床で酸素投与や呼吸モニタリングを可能としていること。病床単位であるため、◇個室であり、他の患者と独立した動線を確保◇検体採取が行えるなどの要件も設けた。療養病床は、重点医療機関と同じく認められない。
 受入れ患者は、疑似症の届出がなされている感染の恐れを医師が認めた入院医療が必要な患者。また、この事業以外で病床確保料を受けている場合には、その額は減額となる。
 事業についてのQ&Aでは、次のような回答があった。
 空床確保や軽症者等の療養体制確保で、都道府県と関係者が調整するための経費(謝金、会議費、旅費等)も補助対象となる。感染症病床も対象となる。精神科病院の空床確保料は一般医療機関と同じとなる。「準備病床」も、都道府県の要請で「即応病床」への転換を始めれば、準備のための期間も病床確保の補助対象となる。重点医療機関と協力医療機関の両方の指定を受けることはできない。

新型コロナ疑い患者の診療に対応
(救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策)

 同事業は、新型コロナ感染症が疑われる患者が、感染症指定病院以外の病院を受診した場合でも、診療を可能とするため、救急・周産期・小児医療の体制確保を図るものだ。疑い患者を診療する救急医療・周産期医療・小児医療のいずれかを担う病院の院内感染を防止するための設備整備などを補助するとともに、支援金を給付する。また、都道府県が新型コロナの患者の入院を割り当てた病院に対しては、加算(1,000万円)を行う。
 対象病院は、救命救急センター、二次救急医療機関、周産期母子医療センター、小児中核病院、小児地域医療センター、小児地域支援病院などであり、都道府県に登録する。設備整備の補助対象としては、簡易陰圧装置、簡易ベッド、簡易診察室、HEPA フィルター付き空気清浄機、HEPA フィルター付きパーティション、個人防護具、消毒経費などをあげた。
 一方、支援金は、「感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用」としている。金額は99床以下で2,000万円、100床以上で3,000万円、100床ごとに1,000万円を追加する。
 事業についてのQ&Aでは、次のような回答があった。
 支援金の補助対象としては、清掃委託、洗濯委託、検査委託、寝具リース、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入などの経費が例示された。経費の対象期間は2020年4月1日から2021年3月31日まで。精神科救急医療機関も対象医療機関に含まれる。1つの医療機関が救急・周産期・小児を担っていても、支援金は3倍にならない。
 また、100床ごとの1,000万円の追加で病床数に上限はない。病床数は、救急・周産期・小児に限らず、医療機関全体の許可病床数が対象になる。

新型コロナ患者とそれ以外を分離
(医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援)

 同事業は、新型コロナの感染拡大と収束が反復する中で、医療機関や薬局が地域における役割分担の下で、医療を継続するため、感染拡大防止などの支援を行うもの。対象は、一般の医療機関、薬局、訪問看護ステーション、助産所など。新型コロナ患者とその他の患者が混在しない動線確保など、院内での感染拡大を防ぐための取組みを行う医療機関・薬局などの感染拡大防止対策などの費用を補助する。
 医療機関の具体的な感染防止策としては、以下が例示されている。◇共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒等の環境整備◇待合室の混在を生じさせないよう、予約診療の拡大や整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知◇発熱等の症状を有する新型コロナ患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫など◇電話等情報通信機器を用いた診療提供体制の確保◇感染防止のため個人防護具の確保◇医療従事者の院内感染防止策(研修、健康管理等)。
 補助額は、病院が「200万円+5万円×病床数」、有床診療所(医科・歯科)が200万円、無床診療所(医科・歯科)が100万円、薬局・訪問看護ステーション・助産所が70万円を上限に実費を給付する。
 また、「救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策」の事業と重複して補助を受けることはできない。
 事業についてのQ&Aでは、「救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策」と類似の質問と回答が多く、それ以外では、次のような回答があった。
 新型コロナ患者の受入れは要件となっておらず、対応を行っていなくても対象となる。病院の補助額に病床数の上限はない。申請先は、都道府県の国民健康保険組合連合会となっている。
 なお、新型コロナ緊急包括支援交付金の都道府県から国への交付申請の期限は、7月17日となっている。

 

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    救命救急病棟ICU、HCUで実施するような重症者に対する診療.

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