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ホーム全日病ニュース(2021年)第983回/2021年4月1日号2020年度改定の経過措置をさらに半年間延長

2020年度改定の経過措置をさらに半年間延長

2020年度改定の経過措置をさらに半年間延長

【中医協・総会・入院医療等分科会】入院料等の基準の調査結果示す

 中医協総会(小塩隆士会長)は3月10日、新型コロナの医療機関への影響を踏まえ、実施を今年3月末まで半年間延長していた2020年度診療報酬改定の「重症度、医療・看護必要度」の基準値など入院料等の見直しの経過措置について、9月末まで、さらに半年間延長することを了承した。
 具体的な対応は3点。①「重症度、医療・看護必要度」や回復期リハビリテーション病棟の実績指数、地域包括ケア病棟入院料の診療実績の基準を満たしているものとする取扱いは2021年9月30日まで延長②地域医療体制確保加算の救急搬送受入れ実績など施設基準等で年間実績を使用している項目は、2021年9月30日まで、2019年の実績値での判定を認める③DPC制度は、2021年度の機能評価係数Ⅱは据置き、激変緩和係数は撤廃する(右下表を参照)。
 なお、②の施設基準等の年間実績の対応で、コロナ病床を割り当てられている医療機関は、2022年3月末までの延長が認められる。
 今回、再延長を判断するにあたり、入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也座長)において医療機関の状況の調査結果が報告されたが、医療機関の新型コロナ患者の受入れがどの程度、診療報酬上の実績に影響を与えたかということについて、詳しく分析できていない。このため、医療機関には、実態把握のためのデータ提出を再延長期間に求めることにした。
 医療機関には実績の記録とともに、基準を満たしていない場合は、その項目や実績値、新型コロナ対応の有無、基準を満たさなくなった理由などの届出を求める。再延長の期限が切れる10月以降の判断が適切に行えるよう、医療機関の実情を把握できるようにする。

2020年度改定調査の速報値を報告
 同日の入院医療等の調査・評価分科会に、2020年度診療報酬改定の2020年度調査の結果の速報値が報告された。
 「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等、地域包括ケア病棟入院料等や回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等、療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しなどが、2020年度調査の項目となっている。これらは2020年度改定の影響をより適切に把握するため、2021年度調査と2回に分けて実施することになっていた。
 ただ、これらの見直しは経過措置が延長されているため、実施されておらず、2020年度改定の影響を把握する調査結果にはなっていない。
 調査票の回収結果をみると、全体的に回収率が向上した。急性期一般入院基本料等の区分では、2018年度調査の39.3%から49.6%に上がった。地域包括ケア病棟入院料・回復期リハビリテーション病棟入院料等は35.9%から43.4%、療養病棟入院基本料は28.0%から35.8%に上がった。調査票の工夫や、病院団体による協力依頼のアナウンスなどの効果があったと推測される。
 調査結果について、コロナ対応があった医療機関となかった医療機関の違いに着目して分析した。調査では、以下の①~④のいずれかに該当すれば、「コロナ対応」の医療機関になる。コロナの影響の詳細な把握は現状では難しいが、医療機関にコロナが広範な影響を与えていることは明らかであるといえる。なお、厚生労働省は、6月にもう少し詳しいデータを提出すると回答している。
 4つの該当項目は、①新型コロナ感染症患者等を受け入れた医療機関等②新型コロナ対応の医療機関に職員を派遣した医療機関③学校等の臨時休業に伴い、職員の勤務が困難となった医療機関等④新型コロナ感染症に感染、または濃厚接触者となり出勤ができない職員が在籍する保険医療機関等─と幅広く、1つでも該当すればコロナ対応を行った医療機関となる。
 急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」について、新型コロナの感染が拡大した2020年4~6月の状況をみると、基準値を下回る医療機関が2019年度より多くなった。その期間で、コロナ対応を行った医療機関では、コロナ対応を行わなかった医療機関より基準値を下回る医療機関が多い。ただ、その違いは明確ではない。2020年4~6月で、基準値を下回る急性期一般入院料1の医療機関の状況をみると、コロナ対応を行った医療機関で基準値のばらつきが大きく、コロナ対応を行わなかった医療機関で比較的小さいという結果だった。
 急性期一般入院料1の重点医療機関の割合は45.8%(平均受入可能病床数は21.9床)、協力医療機関は25.3%(同4.5床)となっている。
 地域包括ケア病棟入院料・管理料1では、2020年11月時点で、地域包括ケアの実績要件を満たしてない医療機関は、コロナ対応を行った医療機関のほうが、コロナ対応を行っていない医療機関よりも多かった。回復期リハビリテーション病棟入院料1では、2020年7月時点で、2019年度ではリハビリテーション実績指数の基準を下回っていなかったが、2020年度では下回る医療機関があった。
 地域包括ケア病棟入院料・管理料において、重点医療機関の割合は入院料1・管理料1で2.8%(平均受入可能病床数は9.0床)、入院料2・管理料2で24.0%(同14.9床)、協力医療機関は入院料1・管理料1で27.1%(同2.7床)、入院料2・管理料2で29.2%(同4.0床)。回復期リハビリテーション病棟入院料1・2では、重点医療機関の割合は5.6%(同19.2床)、協力医療機関の割合は16.2%(同3.2床)。療養病棟入院基本料では、重点医療機関の割合は入院料1で2.2%(同8.3床)、入院料2で6.7%(同6.7床)、協力医療機関の割合は入院料1で7.4%(同3.3床)、入院料2で4.4%(同2.6床)となっている。
 ただし、これらは地域包括ケア病棟・管理料や回復期リハビリテーション病棟入院料の病棟等の割合・数ではなく、病院全体の割合・数である。
 これらの調査結果を踏まえ、全日病会長の猪口雄二委員は、新型コロナが医療機関全体に甚大な影響を与えていることを指摘した上で、「コロナ対応を行った医療機関では、一般病棟だけでなく、地域ケアや回復期リハでも基準や実績が下がる傾向がみてとれる」と指摘。また、「この調査の後に、第三波が来た。現在も新型コロナの影響が続いている」と述べ、経過措置の判断において、それに配慮した対応が必要との姿勢を示した。
 全日病常任理事の津留英智委員も、第三波の状況に対する懸念を表明。「コロナ対応を行っていなかった医療機関でも、その後、クラスターが発生して、コロナ対応を行わざるを得なくなった医療機関がある。また、病院団体の経営状況調査で、特に経営状況が悪化した集団があり、クラスターの発生によるものと想像される」と述べ、新型コロナの影響が大きい医療機関を把握できる詳細なデータを求めた。
 入院医療等の調査・評価分科会の終了後に開催された総会では、同様の調査結果が報告され、経過措置の延長の是非を議論した。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、「医療機関のこの1年は未知との遭遇とそれとの戦いの連続だった。まだ平時には戻れておらず、経過措置の据え置きはやむなしだ」と述べた。健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「今回の調査結果をみると、コロナ対応の有無で、あまり差が出ていない。データに基づき、次の延長の判断を行うため、基準を満たせなくなった理由などをしっかりと把握すべきだ」と強調した。

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年11月15日号)

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    2020年11月15日 ... る検討会」(山本隆一座長)が11月2日、. オンラインで開催された。新型コロナ
    . の感染拡大に伴う電話・オンライン診. 療の特例的な取扱いを、 ... ワーキング
    グループ(尾形裕也座長). が11月5日に ... ために整備した感染症病床があり、
    運. よくそれを活用 ... 中医協総会(小塩隆士会長)が10月. 28日に ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年12月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/201201.pdf

    2020年12月1日 ... リハビリ、健康運動、老健看護、病棟. 看護、病院事務、 ... 例年1月初旬に開催
    している四病院団体協議会の賀詞交歓会は、昨今の新型コロナ. ウイルス感染症 ...
    関する検討会(遠藤久夫座長)が11月. 19日に ... 中医協総会(小塩隆士会長)が
    11月. 11日に ... 見直し等に関する検討会(尾形裕也座. 長)に、 ...

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