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ホーム全日病ニュース(2021年)第984回/2021年4月15日号医療トレーサビリティの実証実験に全日病会員の高橋病院が参加

医療トレーサビリティの実証実験に全日病会員の高橋病院が参加

医療トレーサビリティの実証実験に全日病会員の高橋病院が参加

災害時を想定、スマホアプリで医薬品を仕分け、効率化の効果を検証

 医療トレーサビリティ推進協議会(落合慈之理事長) が進める医薬品のトレーサビリティに関する実証実験の成果発表が3月25日にオンラインで行われた。災害発生時を想定して、メーカーから医療機関まで医薬品の動きを追跡し、トレーサビリティを検証した。実証実験には、同協議会理事で、全日病常任理事である高橋肇先生が理事長の高橋病院(北海道函館市)が参加し、スマホアプリを使って医薬品の仕分け作業を行い、効果を確認した。

医療トレーサビリティの実現目指す
 医療現場では、多様な患者を対象として多職種がシフト制で働いているため、円滑な情報伝達が不可欠だ。また、医療現場で使われる薬や材料は多種多様で数も膨大である。
 安心・安全な医療を提供するには、医療現場で使用される医薬品、医療機器、医療材料について、製造から流通、使用、廃棄までのライフサイクルを通じて、トレーサビリティが確保されることが大切だ。こうした考え方から医療トレーサビリティ推進協議会は、トレーサビリティに必要となる様々なデータの標準化およびそれらの利用・普及を可能にする共通のプラットフォームの構築に取り組んでいる。
 現状を見ると、流通段階の識別コードと医療現場で使われるコード体系が異なり、情報が円滑につながらないことが課題となっている。病院内でも部門ごとにシステムを構築し、異なるマスターを採用していることが多く、病院内の情報連携にも課題がある。
 とくに災害時にはサプライチェーン上流と避難所・医療救護所の間のデータ連携が行えなくなり、必要な物資を届けることが難しくなる。医療救護所では人手で医薬品の在庫管理を行わなければならない。
 こうした課題を解決することを目的に医療トレーサビリティ推進協議会が構築を進める「Seeプラットフォーム」は、医薬品の流通・使用状況を川上から川下まで一気通貫で把握し、医療の効率化と安全確保を実現しようとするもの。国際的な商品識別コード(GlobalTrade Item Number, GTIN)を軸にして、メーカーからディーラー、医療現場の情報をつなぐ取り組みで、医薬品・医療資材の流通・使用に関わる事業者が誰でも自由に参加できるオープンなプラットフォームであることが特徴だ。

災害時を想定したデータ連携を検証
 今回、災害時を想定した実証実験を行い、医薬品管理業務をデジタル化することで避難所・医療救護所とサプライチェーン上流のデータを連結し、在庫最適化を図ることを試みた。
 東京にある医薬品メーカーの工場から函館の高橋病院まで、実際に車両運送を行い、途中の位置・温度情報を追跡し、医療救護所での医薬品の仕分け作業を再現した。
 実証実験は2月2日と19日に行い、高橋病院では、医療救護所に到着した医薬品の仕分けを想定した作業を行った。24種類・80箱の医薬品をスマホアプリを使って仕訳けした。スマホアプリで医薬品のGTINを読み取ると、薬効分類ごとに自動的に整理される。
 実験の結果、医薬品仕分けの未経験者でも作業時間が58%短縮し、作業効率を大幅に改善できることが分かった。医薬品名の読み間違えを防ぎ、仕分けの精度も向上したという。
 同協議会は、実証実験を踏まえ、災害時の迅速な対応のためには平時からの情報連携の重要であることが確認できたと評価し、次年度は、対象を医療機関まで拡大して、業界横断でトレーサビリティの検証を進める考えだ。

 

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